2017年J2昇格プレーオフ決勝 名古屋グランパス対アビスパ福岡 プレビュー「トーナメントとリーグ戦は戦い方が違う」

2017年J2昇格プレーオフ決勝、名古屋グランパスの対戦相手はアビスパ福岡です。

チャンスは作れるけど、シュートが入らないアビスパ福岡

まずは、アビスパ福岡のデータを分析してみたいと思います。Football-LABのデータによると、シュート数を攻撃回数で割った「チャンス構築率」は13.1%でリーグ1位。攻撃回数は127.0回とリーグ17位。1試合平均のシュート数が16.7回でリーグ2位です。

実は「攻撃回数が少なく、チャンス構築率が高い」というデータの傾向と共通しているのは、森保さんが監督を務めていた頃のサンフレッチェ広島です。当時のサンフレッチェ広島は、相手がボールを保持したら、自陣に下がり、相手が攻撃を仕掛けてくるのを待つ。そして、攻撃時はボールを保持し、素早く相手陣内に攻め込むというよりは、じっくりパスをつなぎながら相手が空けた場所をついて攻撃を仕掛けていくチームでした。相手からボールを奪い返す回数が少なく、ゆったりとしたテンポで攻撃を仕掛けるので、攻撃回数が少ないかわりに、ミスなく攻撃するので、シュートを打つ本数が多いということが、データに現れていました。

サンフレッチェ広島が優勝した2015年シーズンでは、攻撃回数は112.0回でリーグ18位でしたが、チャンス構築率は14.0%でリーグ1位。1試合平均のパス本数は527.0回でリーグ5位、ボール支配率は50.0%というデータが記録されています。パス本数が500本程度で、ボール支配率が50.0%程度というのを、攻撃回数が少なくてもチャンス構築率が高いチームを判断する基準としていました。アビスパ福岡の1試合平均のパス本数は392.5回でリーグ12位、1試合平均のボール支配率は、49.4%でリーグ9位。ボール支配率は基準に達していますが、パス本数がサンフレッチェ広島より100本程少なくなっています。パス本数が100本程少ないのは、アビスパ福岡の方がミスが多いからだと思います。

攻撃回数が少ないチームと対戦すると、ボールを奪われるとなかなか返ってきません。無闇に奪いにいくと、体力を消耗したり、空いたスペースを活用されてしまうので、ボールを奪われないようにプレーし、ボールを奪われたら素早く守る場所に戻る事が大切です。

アビスパ福岡の問題は、チャンス構築率が高いにもかかわらず、シュート成功率が低い事です。シュート成功率は7.7%でリーグ21位。つまり、「チャンスは作っているけど、シュートが入らない」チームなのです。シュート成功率が10%を超えているのが、5得点以上挙げた選手では、ウエリントンのみ。5得点以上挙げている選手が7人いて、シュート成功率がすべて10%を超えている名古屋グランパスとは対照的です。

アビスパ福岡は1試合平均の30mラインの侵入回数は、42.5%でリーグ6位ですが、攻撃回数が少ないチームなので、比率を考えると、相手陣内にボールを運ぶプレーが得意なチームだと思います。1試合平均のコーナーキックの回数が、5.8回でリーグ2位、1試合平均のクロスの本数が17.4本でリーグ3位というデータからも、サイドからの攻撃が多いということも伺えます。

守備は上手いが、得点を奪わないといけないアビスパ福岡

守備のデータを分析すると、シュートを打たれた数を攻撃を受けた数で割った「被チャンス構築率」は9.0%でリーグ4位。攻撃を受ける回数は121.5回でリーグ2位と少なく、被シュート数が11.0回でリーグ2位。攻撃回数を減らすことで、相手の攻撃を減らす回数を減らす。被シュート数が少ないということは、相手に自陣にボールを運ばれる回数も少ないのではないかと想像します。そして、シュートの被成功率は7.8%でリーグ4位。シュート被成功率が被チャンス成功率と比較すると減っているのは、相手に成功率が高いシュートチャンスを作られていないということが分かります。

ただ、アビスパ福岡は名古屋グランパスに勝たないとJ1には上がれません。ここがアビスパ福岡にとってはネックです。攻撃回数が少ないが、シュートをたくさん打たないと得点出来ないチームにとって、1得点以上挙げて勝つのは簡単ではありません。しかも、名古屋グランパスはボールを保持するのが上手いチームなので、普段以上に攻撃回数が少なくなる可能性があります。したがって、試合序盤は失点を防ぐことを前提にすすめながら、試合終盤になってから得点を奪うための手を打ってくると予想されます。アビスパ福岡として理想的なのは、終了間際に1得点奪って、1-0で勝つことです。

ウエリントンと宮原のマッチアップにどう対応するのか

では、名古屋グランパスはどうすればよいのか。プレーオフ準決勝のジェフユナイテッド千葉戦では、3-4-3で戦い、相手のサイドからの攻撃を抑えることに成功しました。この試合もフォーメーションは変えないと思います。3-4-3というフォーメーションを採用した時、ポイントになるのは宮原にウエリントンがぶつけられた時にどうするかです。宮原は、小林、ガブリエル・シャビエルと並ぶ、名古屋グランパスのベストプレーヤーだと思いますが、ウエリントンとの身長差や体格差を考えると、ヘディングの競り合いでウエリントンに勝つのは簡単ではありません。僕がアビスパ福岡の監督なら、徹底的に宮原の前にウエリントンを配置し、ロングパスで狙ってくると思います。ジェフユナイテッド千葉のラリベイは、そこまでサイドでプレーしない選手でしたが、ウエリントンは違います。

宮原が競り合った後にどうするかを準備できているかが、この試合の勝敗を左右するポイントになると思います。右サイドの駒野がクロスを上げたら、ウエリントンが待っています。ウエリントンと競り合うのは、宮原です。駒野からのクロスを上げさせないなど、ウエリントンと宮原の競り合いを少なくするような工夫をしておく必要があります。駒野に相対する和泉の守備もポイントになりそうです。

トーナメントは「相手が嫌なことをしたチーム」が勝つ

昨日の「SAJ2017」でも統計家の西内啓さんと話したのですが、西内さんは「トーナメントでは相手の弱点を消したチームのほうが勝つ」と改めておっしゃってました。名古屋グランパスは、リーグ戦では「ボールを保持して、成功率の高いシュートチャンスを作り出して得点する。」というサッカーをしていました。リーグ戦は1つの戦い方を貫いたほうが、勝つ確率が高くなります。

2017年プロ野球クライマックスシリーズで、セ・リーグは広島カープがDeNAベイスターズに敗れました。広島カープがシーズン中の戦い方を貫く一方、DeNAベイスターズは広島カープに対して、相手が嫌がる事を仕掛け続けました。1つの戦い方を貫く戦い方は、リーグ戦では有効だが、トーナメントでは圧倒的な実力差がなければ通用しないということを教えてました。

しかし、トーナメントは違います。相手が嫌がることをして、相手の強みを消し、相手の弱点をつく戦い方も大切です。風間監督は「勝つ確率が高い」戦い方を追求する監督です。リーグ戦とトーナメントの戦い方を変えているように見えるのは、勝つ確率が高い戦い方を追求しているだけにすぎません。

ポイントは先制点だと思います。名古屋グランパスが先生すれば、アビスパ福岡は2点が必要になります。アビスパ福岡が2点をとるのは、名古屋グランパスがミスをしない限り難しいと思います。終盤に得点を取りたいアビスパ福岡と、なるべく早く得点を奪いたい名古屋グランパスの対決。どんな試合になるのか、楽しみです。