2017年J2第26節 名古屋グランパス対愛媛FC プレビュー「チーム作りに魔法のレシピはない。王道を歩むのは時間がかかる」

2017年J2第26節、名古屋グランパスの対戦相手は愛媛FCです。

プロ意識の高さが感じられた天皇杯

この試合に臨むにあたって、振り返っておきたいのは天皇杯3回戦のパフォーマンスです。25分という短い時間の試合でしたが、名古屋グランパスの選手は戦う姿勢を前面に出してプレーしてくれました。開始直後は相手の攻撃を受けてしまいましたが、失点後はテンション高く、普段の試合の終盤のようなプレーを披露し、相手を押し込み、最終的にはワシントンのゴールで勝利することが出来ました。

僕が嬉しかったのは、宮原、杉森、渋谷といった若い選手が、佐藤や小林と同じようにテンション高く試合に臨んでいた事です。25分という短い時間、相手はJFL、観客はまばら。集中して、テンション高く試合に臨むには簡単ではありません。しかし、このような特殊な条件で行われる試合でこそ、選手が普段サッカーにどう向き合っているのか、チームに対してどんな気持ちで戦っているのかがプレーに現れます。(それゆえ、試合後に移籍が発表された田鍋にとっては難しい試合だったのだと思います。)

本当のプロフェッショナルとは、こうした試合ほど全力でプレーし、真価をみせてくれます。佐藤や小林は当然やってくれると思ってましたが、宮原、杉森、渋谷といった若い選手、田口のような中堅選手が、サッカーに対する気持ちをプレーで表現してくれたのは、チームの今後にとってプラスになると思います。特に渋谷はミスをしたにもかかわらず、落ち着いてプレーを続けていました。ゴールキーパーの失点後の態度は、チームのプレーに影響します。渋谷の態度は素晴らしかったです。

ボールを早く運ぶための秋山

前節は1-0で勝ち、天皇杯も勝ちました。しかし、この試合に勝たなければ意味がありません。対戦相手の愛媛FCは順位こそ16位ですが、シュート成功率は10.9%でリーグ1位。攻撃回数は124.1回でリーグ21位の少なさですが、少ないチャンスを確実にゴールへと結びつけてくれるチームです。前回対戦時に名古屋グランパスは、中央からの1本のパスでDFの背後をとられ失点しています。簡単な相手ではありません。

今節はワシントンが累積警告で出場停止。しかも今節と次節の2試合の出場停止です。前節はワシントンを中央に配置し、イムと和泉を左右に配置し、DFが素早く相手陣内にボールを運び、相手を押し込む事が狙いでした。名古屋グランパスは小林をDFで起用したりと、相手陣内にスムーズにボールを運ぶことに苦労していたので、和泉をDFに起用してでも、この課題を改善したかったのだと思います。この課題については、ロアッソ熊本戦ではある程度改善されていました。

しかし、この試合は和泉も負傷で出場が危ぶまれています。和泉が解決してくれた、相手陣内にボールを運ぶスピードを上げるという課題に対して、和泉以外の選手で解決しなければなりません。そこで名前が挙がっているのが、秋山なのだと思います。左利きでボールを運ぶ技術に長けた選手を起用し、相手陣内にボールを運んでもらいたいと考えているのだと思います。本来なら、内田が負傷から帰ってきたので、内田を起用すればよいのではないかと考える人もいるかもしれませんが、内田はボールを運ぶプレーが得意な選手ではないので、課題解決に最適な人物ではありません。秋山の起用が検討されたのは、そんな理由があるのだと思います。

勝つ確率を高めるためのチーム作り

名古屋グランパスは守備にも問題を抱えていますが、今の名古屋グランパスが抱えている守備の問題は、攻撃の問題を解決することで改善される課題がほとんどです。具体的には、素早く相手陣内にボールを運ぶこと、ボールを運んだら相手を自陣深くに押し込んで攻撃を仕掛け続けること、相手が優位な攻撃を出来るだけ受けないように攻撃時のミスを減らす事で、守備機会を減らす。これを突き詰める事が大切です。

なぜ、攻撃の時間を増やす事が必要か。それは、サッカーではボールを持っているチームに次のアクションを仕掛ける権利があるからです。攻撃の時間が増えれば、守備の時間が減ります。タイトルが取れるチームで、ボール支配率が50%を下回るようなチームはめったにありません。ボールを保持し、相手の守備を崩し、時に仕掛けられる相手の攻撃をしっかり受け止める。こういう戦い方が「王道」です。名古屋グランパスは、「王道」で勝とうとしているだけです。

選手のバックグラウンドがばらばらで、中心として活躍してほしかった選手が期待通り活躍してくれていないといった問題は出ていますが、チームは一歩ずつ勝てるチームを目指して前進しています。今までは、楢崎、闘莉王といった選手が体現していた「勝つために必要な事」を、他の選手も実現出来るように進めているので、どうしても時間がかかります。特定の選手やパターンに依存しているわけではないので、どうしても調整に時間がかかります。ただ、それでも名古屋グランパスの選手の能力は高く、チーム作りは順調に進んでいます。

若手選手の成長とリーダーの台頭

あとは、培ってきた土台を基に、どこで爆発的にチーム力が上がるかだと思います。僕はチーム力が上がるきっかけとして考えられる要因は、2点あると思います。1点目は、若手選手の成長です。まず前半戦で宮原が頭角を現しました。「絶対にボールを奪われない」という自信をプレーで表現し、欠かせない選手に成長しました。あとは、杉森、青木、渋谷といった選手の誰が続くかです。

2点目は、チームを引っ張るリーダーです。僕は何度も言いますが、田口に期待しています。キャプテンマークは巻いていませんが、今の名古屋グランパスは田口のチームです。田口が勝敗を背負い、自分のプレーが勝敗を左右するという意識がどこまでプレーで表現出来るか。今後の名古屋グランパスの順位は、田口のプレーにかかっていると思います。赤鯱新報を読んでいると、まだ田口は責任を引き受けきれているようには感じないけど、プレーでは「チームを勝たせる」という気持ちを表現してくれるようになってきました。あとは、言葉でも表現出来る選手になれば、より高いレベルの選手になれると思います。

一足飛びにチームがよくなるなんて、そんな魔法のようなレシピはありません。上手くいっているように見えるチームは、上手く欠点を隠しているだけかもしれませんし、これまでの積み重ねだったり、シーズン前からきちんと準備してきた事が積み重なって、上手くいっているのだと思います。シーズン最後によい状態になるために、目の前の試合をどう戦うのか。難しい状況には変わりませんが、少しずつ前に進むためのきっかけは掴みつつあると思います。楽しみです。

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