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2016年J1セカンドステージ第2節 名古屋グランパス対川崎フロンターレ レビュー「致命傷にならない負け方がチームを成長させる」

   

2016年Jリーグセカンドステージ第2節、川崎フロンターレ対名古屋グランパスは3-0で川崎フロンターレが勝ちました。

狙い通りの戦い

この試合のポイントとして、プレビュー記事で「後半45分の戦い方」を挙げました。後半に得点が多い川崎フロンターレと、後半に失点が多い名古屋グランパス。後半に両チームがどんなプレーをするのか。そこに注目していました。結果的には、予想通り名古屋グランパスが時間が経つにつれて、チームとして統制の取れた動きが出来なくなり、川崎フロンターレが後半に2得点を挙げることが出来ました。

川崎フロンターレが試合をコントロールするためのポイントとして、ゴールキックへの対応を挙げました。予想通り、シモビッチを狙って蹴ってくるゴールキックには、エドゥアルド・ネットが対応。井川と谷口は競り合ってこぼれたボールを拾う役割を担いました。これが予想以上に上手くいきました。エドゥアルド・ネットは時にシモビッチに競り勝ち、全く仕事をさせません。シモビッチが競り勝っても、川崎フロンターレのDFはエドゥアルド・ネットの後ろに残っているので、たとえ背後にパスが出ても、対応できる状態で待ち構えることが出来ましたので、名古屋グランパスにチャンスを作らせませんでした。

相手チームが川崎フロンターレの弱点として狙っている、エウシーニョが守るエリアへの攻撃に対しても、時間が経つにつれて、エウシーニョのポジションを井川がコントロールし、スペースを与えないことで対応してみせました。こうして、名古屋グランパスが攻撃するための糸口を、一つ一つ塞いでいきました。

凄みを増している大島僚太

川崎フロンターレが試合をコントロールするためのポイントとして、もう1つ挙げたのが、大島僚太のプレーです。素晴らしいプレーを披露してくれました。名古屋グランパスは、暑さも考慮して、川崎フロンターレが縦方向にパスを出してきた時に、ボールを奪おうとしていました。その狙いを序盤で察知した大島は、名古屋グランパスが狙っているゾーンの前でボールを受け、名古屋グランパスの選手に近づいてからパス、あるいはパスをした後、名古屋グランパスの選手の背中でボールを受ける動きを繰り返し、相手の守備を崩してみせました。そして、縦方向へのパスの強さ、取られない位置に出すパスの正確性、パスの種類の選択にミスがありませんでした。

大島がパスを出す先には、大久保、大塚、中村といった選手が、名古屋グランパスの選手に間でパスを受ける動きを繰り返します。特に中村は、センターバック、サイドバック、サイドハーフ、ボランチのどこにも捕まらない位置に動き続けます。誰かが食いつくと、ワンタッチでパス。同じサイドの車屋をフリーにしてみせます。イ・スンヒと小川は何度も中村の狙いに引っかかり、車屋をフリーにしてしまいました。矢野も中村に食いついているので、車屋がワンタッチでスピードにのったドリブルを仕掛けると、対応できませんでした。中村、大塚、大久保といった選手に強くアプローチしようとすると、小林が背後のスペースを狙ってきます。名古屋グランパスとしては、なんとか止めようとする意識はあるのですが、川崎フロンターレのプレースピードに時間が経つにつれて、対応出来なくなってきました。そして、アフターファウルが増えていきます。

大島は、今までは、大久保、小林、中村といった選手たちに「使われる」選手でした。彼らの要求通りにプレーする。彼らの要求に応えようとプレーする。そんな時期が長く続いていました。ところが、日本代表に選ばれてから、明らかに大島の意識が変わったようにみえます。積極的に前にボールを運び、身振り手振り、そしてパス1つ1つにメッセージを込めて、チームを、ゲームをコントロールする。そんなプレーが随所に出てくるようになりました。大島のプレーが変わってきたことも、風間監督が中村を左サイドで起用している要因なのではないかと思います。

今の大島のプレーを観ているのは、本当に楽しいです。オリンピック代表でも自信をもってチームを仕切って欲しいと思いますし、日本代表でも十分仕切れる力がついてきていると思います。今後も期待したいと思います。

勝って兜の緒を締める

3-0で勝ちましたが、もっと得点差をつける事は出来たと思います。名古屋グランパスの守備は、守備を始めるポジションはきちんと整っていましたが、川崎フロンターレがボールを動かすと、ポジションに戻れない選手が、次第に増えてきました。あと、ボールの動きに気をとられて、ポジションの修正が追いつかなかったり、必要以上にボールを見てしまう選手が、時間とともに増えてきました。

ボールの動きに気を取られる選手の背中は取りやすいので、もっと相手の背後を狙うような攻撃を仕掛けても良かったと思います。また、ラストパスがボールを止めやすい場所にコントロール出来ていなかったり、必要以上にバウンドしてしまうようなパスを出す場面もありました。そして、ボールを止めるとき、次の動作に正確に移れるように止める事が出来ず、ボールをバウンドさせてしまうような場面も、何度かみられました。点差ほど、よいプレーが出来ていたとは思えません。

試合後、風間監督は中村の怪我の事もあって、怒っているような態度でコメントをしていました。当然、試合を壊すようなプレーをした、名古屋グランパスのプレーに対する怒りもあったと思います。ただそれ以外に、勝っているとはいえ、内容がよくない勝利を素直に喜べない。そんな気持ちもあったのではないかと思います。

元読売ジャイアンツの監督の藤田元司さんが、監督を務めていた時に「調子がいいですね」と言われると、こう答えたそうです。

「調子がいいと見える時ほど、監督はいちばん頭が痛いんだよ。だいたい、いいときには悪い芽が全部育っているからね。それがのちのち、どっと芽を出すんだよ。逆に調子の悪いときは、全然気にしないんだよ。何が悪いか見えるから。」
「ほぼ日刊イトイ新聞「これでも教育の話?」より

一見、3-0の勝利は良いことのように思えます。しかし、調子がいい時ほど、基本的なミスがあっても見逃されがちです。勝ってるからよい、と言った具合に、なあなあになりがちです。相手の状態が良くなかった時の快勝ほど、チームの調子を狂わせる要因になるものはありません。だからこそ、風間監督は試合後のコメントで少し怒ったような表情をしていたのだと思います。

監督はよい監督ほどタヌキ爺

この試合のレビューからは少し外れますが、サッカーの監督なんて、よい監督であればあるほど、思っていることと発言が一致していると思わない方がいいです。手も足も出ないほど負けても、そんな素振りは一切みせない。むしろ、課題が見つかったと喜ぶような態度をとって、時に強がってみせる。快勝しても、浮かれすぎず、歯を見せて喜ぶのではなく、気を引き締める。そんな態度でいることが求められます。名古屋グランパスの小倉監督はちょっとナイーブ過ぎます。やろうとしている事はそれほど悪い方向に向かっているとは思いませんので、もっと堂々として良いと思います。

今振り返って考えると、風間監督は「致命傷にならないように負ける」のが、本当に上手い監督だと思います。手も足も出ず、自信を木端微塵に打ち砕かれないように負けることも、長いリーグ戦を戦う上で大切です。そのためには、相手のチームと自分のチームの実力差と、相手チームの強み、弱みと、自分のチームの強み、弱みを正確に把握出来ていなければなりません。

風間監督は就任当初「ミーティングはしない」「ビデオも見せない」と語っていました。まずは前提となる考え方を、選手・スタッフに浸透させるための措置でしたので、今ではミーティングもやるし、ビデオも見せています。しかし、就任当初は選手に意識させないようにするために、相当風間監督自身は、相手チームの研究をしたはずです。研究をした上で、ベースを作っているような練習をさせながら、次の試合に役立つトレーニングを織り交ぜるという、凄く高度な事を就任当初はやっていたのではないかと思うのです。だから、就任当初は完成度が低くても、大負けせず、チームが崩壊することもなかったのではないかと思います。これを風間監督が分かってやっていたのだとしたら、脱帽です。

敵をトコトン研究し、嫌がる所をつくために自分たちの形を合わせていくスタイル。たしかにやり口は俺と似ているかもしんねえけどよ、そういう嫌な奴っぷりでは、俺は負ける気しねえんだよ」(達海猛)
「ジャイアントキリング」第19巻 #183

これでチームは11戦負けなしです。しかし、2試合後には大島と原川がオリンピック代表に参加するためチームを離れます。中村も怪我で離脱するため、選手を入れ替えて戦わなくてはなりません。好調のチームが選手が入れ替わっても力を維持できるのか、そしてどんな戦いを披露できるのか。風間監督はすでに先を見据えて、三好の出場時間を増やしたり、橋本、狩野といった選手を途中交代で起用したり、武岡の出場時間を徐々に増やしていったりと、先を見据えた策を打っています。風間監督が打つ施策から、チームがどんな変化が生まれるのか。引き続き注目したいと思います。

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