2017年J2昇格プレーオフ準決勝 名古屋グランパス対ジェフユナイテッド千葉 プレビュー「相手の事は関係ないチーム同士の対戦」

2017年J2昇格プレーオフ準決勝、名古屋グランパスの対戦相手はジェフユナイテッド千葉です。

「フィールドの中央でサッカーをしない」ジェフユナイテッド千葉

ジェフユナイテッド千葉というチームは、他のチームと違う特徴があります。それは、「フィールドの中央でサッカーをしない」という事です。攻撃時はDF同士でパスをつなぐ事もありますが、中央のMFにパスを出し、中央から攻撃を仕掛けるような攻撃はほとんど仕掛けません。攻撃を開始する合図は、相手のサイドのDF、もしくはサイドのDFの背後を狙って蹴るロングパスです。

J2には180cm以上で、ヘディングが強いサイドのDFはほとんどいません。ジェフユナイテッド千葉は相手チームのサイドのDFがヘディングが強くない事を把握した上で、サイドのDFめがけてロングパスを出し、パスの受け手である為田や町田は、身体をぶつけるようにして競り合います。2人共身長が大きな選手ではありませんが、競り合いを怖がらないため、相手チームも自分たちのボールにすることが出来ず、結果的にジェフユナイテッド千葉がボールを保持する機会が多いのです。たとえ、ボールを保持出来なくても、素早くボールを持っている選手に距離をつめ、相手に意図したプレーをさせず、ボールを奪い返す。この繰り返しによって、ジェフユナイテッド千葉は1試合平均のパス数が490.5本しかないのに、1試合平均のボール支配率59.7%を記録しています。

ジェフユナイテッド千葉は中央からほとんど攻撃を仕掛けません。攻撃は徹底してサイドからです。1試合平均のクロス本数が21.6本でリーグ1位、1試合平均のコーナーキック本数が7.2本でリーグ1位という数字は、サイドからの攻撃が多いことを示しています。名古屋グランパスとの試合しか観ていなかったので、名古屋グランパス相手だからロングパスを使った攻撃を仕掛けてきたのかと思ったら、第42節の横浜FC戦でも変わりませんでした。つまり、どのチームに対しても、同じように戦うチームなのです。中央のMFは相手の攻撃を止める事と、競り合ってこぼれたボールをひろう事が求められています。縦方向にパスを出したり、ボールを相手陣内に運ぶような役割は求められていません。中央エリアでボールを保持することはなく、徹底的にサイドでボールを保持するのは、ボールを奪われた時にゴールから遠いので、失点のリスクを減らせるのではないかと考えているからだと思います。

ジェフユナイテッド千葉の守備は、「ハイライン&ハイプレス」と呼ばれる、DFの位置を出来る限り相手ゴールに近づけ、相手がボールを持ったら素早く距離を詰め、身体をぶつけてボールを奪う守備が特徴です。鍛え上げた身体の強さと素早い動きで、身体をぶつけ合うと、大抵ジェフユナイテッド千葉の方にボールがこぼれます。この守備を外せなくて、名古屋グランパスは第41節に0-3で敗れてしまいました。

名古屋グランパスは、相手陣内にボールを運ぶ時、中央の小林と田口、サイドの宮原と和泉を起点にしてボールを運びます。ところが、第41節に対戦した時は、和泉が相対する町田との1対1にことごとく敗れ、和泉のところからボールを運べなかったため、なかなか相手を押し込む事が出来ませんでした。

ジェフユナイテッド千葉は、相手によって、時間帯によって、戦い方を変えてくるチームではありません。極端な事を言うと、3-0で勝っていても、0-3で負けていても、同じように戦うチームです。やってくる事は分かっているのですが、身体をぶつけ、走り続け、タックルや競り合いをいとわないのは、相手チームにとって厄介だし、シーズン終盤の7連勝は、相手チームとのコンディションの差も大きかったと思います。

中央から攻撃し、サイドでサッカーをさせない

では、名古屋グランパスはどうすればよいのか。僕が考えた対策は2点あります。

1点目は「中央から攻撃する」です。ジェフユナイテッド千葉はサイドにボールがある状態で試合を進めたいので、中央のエリアにボールがあることを嫌がります。また、MFとDFの間にはボールを受けられるスペースが空いています。相手DFが守る背後が空いているように見えるので、どうしてもそこを狙いたくなってしまいますが、狙うべきは中央のMFが守り、相手がハイラインで潰そうとしているエリアです。サイドに出来るだけボールがある状態で試合を進めようとしているチームだということは、中央に弱点をかかえているという事です。第41節の対戦では、田口とガブリエル・シャビエルが相手の守備に捕まってしまったので、中央から攻撃を仕掛ける事が出来ませんでしたが、小林は捕まりませんでした。今の名古屋グランパスを攻守両面で司るのは、小林です。小林が捕まらずに動き、他の2人に対する守備を外す手助けが出来るかがポイントです。

2点目は「フォーメーションを変える」です。ジェフユナイテッド千葉は、サイドからしかどうせ攻撃してこないので、守備の時に中央に選手を置いておく必要がありません。また、ジェフユナイテッド千葉は4-4-2で守るので、名古屋グランパスが4-4-2で攻撃を仕掛けようとすると、相手の守備と噛み合ってしまいます。僕ならフォーメーションを変えて、3-4-3にしてしまいます。DFを3人にすることで、ジェフユナイテッド千葉のFW2人に対して数的優位を作る事が出来ますし、守備時に5人で守ってしまえば、サイドへのロングパスの競り合いに、櫛引やワシントンといった選手が対応することも可能です。実際、第41節の後半にはフォーメーションを変更し、ある程度の成果を挙げました。僕は変えてもよい気がします。

最後に気になるのは、FWの人選です。シモビッチなのか、玉田なのか、押谷なのかによって、名古屋グランパスがこの試合をどのように考えているのかが分かります。玉田を起用するのであれば、中央から攻撃を仕掛けようと考えているのだと思いますし、シモビッチを起用する時は、シモビッチを狙ったロングパスを活用した攻撃を仕掛けるはずですし、押谷が起用される時は、DF背後を狙う動きや、守備時に相手のロングパスの起点を抑える事を狙っているはずです。

僕なら押谷を先発で起用して、試合展開によって、シモビッチや玉田を入れるのですが、風間監督はどう考えているのでしょうか。

本当に「相手の事は関係ない」?

風間監督は、「相手の事は関係ない」とよく語る監督ですが、実は相手チームをよく研究している監督です。相手チームの特徴を踏まえて、コンセプトは変えずに、いかに勝つか。勝つために注力すべきポイントを試合ごとに変え、時にはフォーメーションも変え、チームが勝つ確率が高い方法を選択出来る監督です。露骨に相手のキープレーヤーにマンマークをつけたり、松本山雅FCのように、相手の弱点を集中的に狙うような事はしませんが、相手チームの研究を全くしない監督ではありません。そうでなければ、プロの監督は出来ません。選手に意識させないようにしつつ、巧みにマネジメントしているのです。

風間監督は、「やることは変わらない」「相手の事は関係ない」といいつつ、今週の練習は全て非公開にしました。本当に相手の事が関係ないと思っていたら、全て練習は公開されてもおかしくありません。集中して練習に臨みたいから、という理由だけではないと思います。何か仕掛けてくる気がします。

2016年の天皇杯決勝での鹿島アントラーズ戦で、風間監督は登里を西にマンマークさせ、鹿島アントラーズの攻撃を封じてみせました。小林と中村の軽率なプレーによって、先制点を奪われなければ、思い通りの試合展開だったはずです。だからこそ、僕は久々に「勝つために手段を選ばない」風間監督が見れるんじゃないかと、期待しています。

どんな試合展開になるのか。そして、風間監督は何か仕掛けるのか。楽しみにしたいと思います。