nishi19 breaking news

スポーツでもっと楽しい未来を作る

本当に美味しいものって何?書評「馳星周の喰人魂」(馳星周)

      2014/07/29

昔、馳星周さんはNumberによくサッカーのエッセイを書いていました。ただ、馳さんのエッセイには、サッカーのエッセイなんだけれど、サッカーと同じくらい食べ物に関する話が登場します。「美味しい食べ物とサッカーがあれば、どこにでも行く。」そんな事を、当時馳さんはよく書いていた気がします。

美味しいものには目がない馳さんが書いた、食べ物に関するエッセイを1冊の本にまとめたのが、本書「馳星周の喰人魂」です。本書は、小説とサッカーの取材で訪れた日本各地やアジア、ヨーロッパ、北アメリカなど、先々で著者が出会った絶品料理(たまにハズレも)や食材の数々、至高の料理人たちを紹介しているのですが、本書のポイントはそこではありません。

高級食からマクロビオティックへの変化

馳さんの代表作は、映画にもなった「不夜城」です。金城武が主演したことでも話題になったのこの作品は、酒、金、女、ギャンブル、暴力、といった渦巻く欲望に振り回される人間の姿を、丹念に描いた作品です。(馳さんは、大の競輪ファンでもあります。)そんな「不夜城」の作品を描いていた頃の馳さんは、高級なレストランやヨーロッパのレストランで出てくる美味しい食事を絶賛するエッセイばかり書いていました。

しかし、本書の終わりに書かれている馳さんのエッセイは、少し趣が違います。きっかけは、軽井沢への移住です。愛犬の病気をきっかけに軽井沢に移住した馳さんは、登山を始め、近所の農家が分けてくれる野菜で漬物を作るようになり、そして、再び愛犬の病気をきっかけに、食事をマクロビオテックに変えました。

馳さん流のマクロビオテックは、白米を玄米に変え、野菜の割合を増やし、肉や魚を食べる割合を減らしてくというもの。その結果、73kgあった体重が、半年で66kgに減少し、23%あった体脂肪率が、18%に減少したのだという。この変化に最も驚いているのは、馳さん本人だということが、文章からも伝わってきます。

旨いものを散々食いまくった挙句に、
マクロビオティックだ?健康食だ?
ふざけるなと罵られそうだが、
まあ、わたしはもともとそういう人間なのである。

本当に美味しいものとは何か

世界中の美食を追い求めた馳さんがたどり着いたのは、自分で作る味噌汁、玄米ご飯、そして、自家製のぬか漬けでした。佐々木俊尚さんの著書「簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。」でも語られていたテーマとも似ているのですが、結局、採れたての素材を使って自分で作った料理は、お金をかけて食べる美食にも、勝るとも劣らないくらい美味しい、といういうことなのかもしれません。

でも、本書で紹介されている美食の数々も、食べてみたいと思ってしまうのが、僕の弱いところです。
「ご飯松茸」に書かれていた採れたての松茸、品評会でチャンピオンになった仙台牛のハラミ、目から鱗のフライドビーフ・・・。読んでいて、思わずヨダレが出そうになります。
美味しいものは、人の心を動かす力がありますね。

関連記事

日本人の強みを発揮することが、世界で活躍するための武器になる。書評「なぜ、日本人シェフは世界で勝負できたのか」(本田直之)
健やかな食生活とは。書評「久司道夫のマクロビオティック 入門編」
21世紀の新たなライフスタイルを提唱した1冊。書評「簡単、なのに美味い! 家めしこそ、最高のごちそうである。」(佐々木俊尚)

関連商品

 -