ヘッドコーチが代わるとチームが変わる-監督以上に重要な役割について考える-

サッカーで、ヘッドコーチとはどんな役割のコーチなのでしょうか。

Jリーグ各チームのスタッフを紹介するページを見ていると、必ず「ヘッドコーチ」という肩書のコーチがいます。どうやら、海外では「アシスタントマネージャー」という役職になるようですが、そもそも、普通のコーチと、ヘッドコーチはどう違うのでしょうか。

サッカーチームの中間管理職

会社に例えると、監督がマネージャーで、ヘッドコーチがアシスタントマネージャーであるならば、監督とコーチをつなぐのが主な役割だと思います。コーチにも、フィジカルコーチ、トレーニングをサポートするコーチ、GKコーチと、様々なコーチがいます。こうした、様々な専門性と役割をもったコーチの意見を代表し、監督に考えを伝えたり、監督の考えをコーチや選手に伝える役割が、ヘッドコーチの主な役割だと思います。まさに、究極の中間管理職です。

外国人監督と選手の間をつなぐ

トルシエ監督が日本代表の監督を務めていた時、山本昌邦さんがヘッドコーチを務めていました。山本さんは、トルシエと選手の間をつなぐ上で、重要な役割を果たしました。外国人監督を起用した場合、通訳を通したコミュニケーションだけでは、上手く意図が伝わらないことがあります。こんな時、ヘッドコーチが監督の意図を咀嚼し、選手に伝えられるかどうかが、チーム作りの成否を左右します。

「通訳日記」によると、関塚隆さんが日本代表を離れた後から、微妙にチーム作りの歯車が狂いだしたように感じられます。関塚さんは、鹿島アントラーズ時代にヘッドコーチを務め、外国人監督と選手との間に立って、コミュニケーションを取ることに長けていたのだと思います。もし、関塚さんがチームに残っていたら、ブラジルワールドカップの日本代表は違った道を進んだのかもしれません。

名選手がヘッドコーチを務めるケース

選手とのコミュニケーションを円滑にするために、名選手を起用するケースもあります。ブラジルワールドカップのオランダ代表は、ヘッドコーチにパトリック・クライファートを起用しました。クライファートは、アヤックス、バルセロナで活躍した名ストライカーで、オランダ代表に数多く在籍するアフリカ系の選手にとっては、ヒーローのような存在です。クライファートを起用することによって、選手とスタッフとの距離を縮め、チーム作りをスムーズにしようとするファン・ハールの狙いがみてとれます。

名選手をヘッドコーチに起用するのは、戦略・戦術に強みをもつ監督がよく使う手段です。戦略・戦術に強みをもつ監督は、とかく頭でっがちになりがちで、選手とのコミュニケーションが上手くいかない事があります。こうした時、選手時代に実績を残したコーチに間に立ってもらうことで、コミュニケーションの溝を埋めようとするのです。柏レイソルでネルシーニョ監督の下でヘッドコーチを務めた井原正巳さんも、そんな役割を担っていたのではないかと想像します。

監督が名選手で、カリスマ性を持っている場合、戦略・戦術やトレーニング・メソッドに長けたヘッドコーチを起用することもあります。フランク・ライカールトがFCバルセロナの監督を務めていた時、テン・カーテという戦術に詳しいヘッドコーチがいました。カリスマ性のライカールト、戦術のテン・カーテという2人がコンビを組んでいた時、FCバルセロナは非常に魅力的なサッカーを披露していました。テン・カーテがヘッドコーチを辞任した後、FCバルセロナが弱体化したのは、偶然ではないと思います。

ヘッドコーチと監督でトレーニングの役割を分担する

1人の監督で、トレーニングを指揮するのは不可能です。攻撃と守備に分けて練習するとき、監督とヘッドコーチで役割を分担し、トレーニングを指揮することがあります。ストイコビッチが名古屋グランパスの監督を務めていた時、攻撃のトレーニングはストイコビッチ、守備のトレーニングはジュロヴスキーというヘッドコーチがトレーニングを指揮していました。これは、ベンゲルも同じ手法をとっていて、アーセナルでは攻撃はベンゲル、守備はプリモッツコーチが指揮することがあるそうです。

グアルディオラがFCバルセロナの監督を務めていた時は、戦略・戦術に長けたティト・ビラノバというヘッドコーチが、グアルディオラをサポートしていました。FCバルセロナの圧倒的な強さは、この2人のコンビなしではありえませんでした。

こうした役割分担には、お互いの強みを補完しあうことで、チーム作りをスムーズに進めようという狙いがみられます。

ヘッドコーチにトレーニングは任せたファーガソン

ヘッドコーチがトレーニングを指揮し、監督は一歩引いた立場で、チーム全体のマネジメントに注力するチームもあります。アレックス・ファーガソンが監督を務めていた頃のマンチェスター・ユナイテッドでは、ヘッドコーチがトレーニングを指揮し、監督がトレーニングメニューを考えたりすることは、ほとんどなかったと言われています。

Jリーグにプロのヘッドコーチはいるのか

ヘッドコーチと言っても、チームによって、コーチの強みによって、役割は様々です。決して、監督が辞任した時に代わりを務めるだけの人物では、務まらない仕事です。Jリーグのチームを見ていると、プロのヘッドコーチが少ないような気がします。ちなみに、2014年シーズンのJリーグを制したガンバ大阪には、片野坂さんというヘッドコーチがいました。片野坂さんは、2013年までサンフレッチェ広島のヘッドコーチとして活躍していました。片野坂さん自身は、Jリーグを3連覇したことになりますし、サンフレッチェ広島の今シーズンの成績は、片野坂さんの不在も影響したのかもしれません。

監督だけでは、よいチームは作れません。ヘッドコーチが代わると、チームも変わります。サッカーチームの「中間管理職」であるヘッドコーチを、どんな人物が務めているか。今後は、監督に注目するだけでなく、ヘッドコーチにも注目してみてください。

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