書評「行動経済学まんが ヘンテコノミクス」(佐藤 雅彦,菅 俊一,高橋 秀明)

最近「行動経済学」という言葉を目にするようになりました。「行動経済学」とは、今までの経済学は「人間は必ず合理的な経済行動をするもの」という前提で構築されてきましたが、実際は、それでは説明できない、非合理なふるまいを多くしていることが分かってきました。

「人間は通常報酬があるとやる気を起こすが、時として報酬によって逆にやる気をなくしたりする」「お昼ごはんを食べる時は、100円の違いを気にするけど、マンションを買う時は無視してしまう」「3段階の選択肢を提示されると一番上や下という極端な選択を回避して出来るだけ無難な選択、真ん中の選択肢を選んでしまう」など、そんな、従来の経済学では説明しきれない人間の経済行動を、人間の心理という視点から解明しようとする経済学のことです。

そんな、「行動経済学」がどんな学問なのか学ぶのに、とても面白い書籍が出ました。それは、「行動経済学まんが ヘンテコノミクス」。原作は、「ピタゴラスイッチ」や「だんご3兄弟」や「NEC バザールでござーる」といった作品で知られる、佐藤雅彦と、「観察の練習」という本の著者である菅俊一さん。

日頃から「人はなぜこんな行動をとってしまうのか」「人は何を面白いと感じるのか」といった、人の心理や感情を理解して、作品作りに活かしていこうとしている方々が作った漫画、それが、「行動経済学まんが ヘンテコノミクス」です。

難しいことをいかに分かりやすく伝えるか

佐藤さんや菅さんは、常日頃から「難しいことをいかに分かりやすく伝えるか」という事に取り組んでいると、僕は感じています。

佐藤さんは竹中平蔵さんとの共著で「経済ってそういうことだったのか会議」という本を出版されています。その本の中で、竹中さんは、経済(エコノミクス)の語源について「エコノミクスって、ギリシャ語の”オイコノミコス”[oikonomikos]から来ているんです。オイコノミコスとはどういう意味かといいますと、共同体のあり方、という意味なんです。」と語っています。つまり、経済学は共同体のあり方を考える学問なのです。

そして、共同体のあり方を、人間の心理から考えるとどうなるのかを考えた学問が「行動経済学」なのですから、漫画という表現を使って分かりやすく伝えるという2人の考えは、とても納得がいきます。

8歳の長女が読んだ

実は、本書はもっと早い段階で書評を書くつもりでした。「観察の練習」を買ってからすぐに買って読み始めたので、すぐに書評を書けるだろう。そう思っていましたが、思わぬ横槍が入りました。それは、我が家の長女です。我が家には漫画本が1冊も置いてないのですが、僕が漫画を買ってきたのを珍しいと思ったのか、興味をもって「読みたい」と言ってきたのです。

もちろん、「いいよ」と答え、すぐに飽きるだろうと思って渡したのですが、渡されてから熱心に読み始め、僕に返そうとしてくれません。家に返ってからも読みたいとのことなので、僕にとって読書タイムである、通勤時間に読むことも許されません。ようやく読み終わったのが、先週のこと。「どうだった?」と聞いたら、「とても面白かった!」と答えました。

8歳の子供に行動経済学が理解出来たかは分かりませんが、人間の心理がどのような考えで成り立っているのか。たぶん、長女なりに普段の生活と照らし合わせて考える部分があったのかもしれません。8歳の子供でも楽しめる本ですから、興味を持った人は、ぜひ読んでみることをおすすめします。

人の心を想う大切さ

人間という生き物は、必ずしも合理的に生きる生き物ではありません。恵まれた環境から自らドロップ・アウトする人、恋愛に熱中するあまり周りが見えなくなってしまう人、ギャンブルにはまってしまう人など、経済活動で考えたら、不合理な行動で、人間が作り出す社会は成り立っています。

最近目にする本や映画は、人の不合理な部分を描き出す作品をあまり作らなくなったような気がします。本書は、人の心の動きだけでなく、心を想う大切さについても伝えてくれる書籍です。

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Posted by nishi19