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書評「ヒットの崩壊」(柴那典)

   

誰もが知ってる「国民的なヒット曲」がないと耳にすることが増えました。人が楽しむコンテンツが増え、昔はミュージシャンを目指していたような人は、今は起業してビジネスをしている気がします。CDが200万枚も売れていた時代は、遥か彼方に過ぎ去りました。今はダウンロード販売もなかなか売れないと言われています。

しかし、音楽を取り巻くニュースは暗いニュースばかりではありません。フジロック、ロックインジャパン、サマーソニックといった「夏フェス」を楽しむ人は増え、ベテランのミュージシャンが日本武道館でライブを行うといった事例も耳にするようになりました。Perfume、Babymetal、ONE OK ROCKといった海外で人気のあるミュージシャンも増えてきました。

本書「ヒットの崩壊」は、「国民的なヒット曲」がなくなった今、小室哲哉、いきものがかりの水野良樹といったミュージシャンのインタビューを交えながら、音楽を取り巻く状況について紹介している1冊です。

CDを売らずにグラミー賞をとった「Chance The Rapper」

僕が本書を手に取ったのは、Chance The Rapperというヒップホップアーティストに関する記事を目にしたのがきっかけでした。Chance The Rapperは、2012年4月に「10Day」というミックステープを発表して話題になり、2013年に発表した「Acid Rap」でさらに高い評価を得ました。Chance The Rapperが面白いのは、この2つのミックステープを、無料で配信したことです。数々のメジャーレーベルの誘いを断り、あくまで有料販売しない方針を貫きました。

そして、2016年5月に「Coloring Book」をリリース。CDもダウンロード販売もなく、Apple Music限定で配信リリースされた(Soundcloudでは無料で聴ける)このアルバムは、BIllboard Chartで初登場8位にランクインした。ついに、「CDを売らないでチャートにランクインする」アーティストが出てきたのだ。そして、2017年のグラミー賞で、最優秀新人賞、最優秀ラップ・アルバム賞、最優秀ラップ・パフォーマンス賞を獲得し、「CDを売らないでグラミー賞を獲得したアーティスト」になりました。

Chance The Rapperは、最初からCDで売りたくなくなかったのではないと思います。CDでは売れない、でも自分が作った作品を人に知ってもらいたい。そう思って、配信サービスを利用した。ヒットしたら、手のひらを返すように人が群がって来たから腹が立って、意地でもCDリリースしないということにした。そんな感じだと思います。あまり戦略とかないと思います。昔、テレビに出なかったミュージシャンも、単にテレビから誘いがなかったから出なかったという人もたくさんいたそうです。

僕がChance The Rapperが面白いと思ったのは、人に認められること、そしてお金という対価を誰からどのようにもらうのか、そのポイントが音楽の世界で変わってきている事をよく現しているアーティストだと思ったからです。人に認められるのに、研鑽を積み、作品を発表しつづけ、人の目にとまる努力をするという点は、今も昔も変わらないと思います。しかし、音楽の世界では、お金を誰からどのようにもらうのかについては、明らかに変わってきました。自分がやったことに対する対価をいかにもらうか。今後の自分自身の取組を考える上で、とても参考になりました。

音楽の世界で起こることは、数年後に他のビジネスでも起こる

「音楽の世界で起こることは、数年後に他のビジネスでも起こる」と聞いたことがあります。本の配信が始まり、定額ダウンロードが始まりましたが、音楽の世界では何年も前に起こっていた事です。したがって、本書を読めば、今後他の業界でどのような事が起こるのか、ある程度予測出来ると言えるかもしれません。

「ウェブ進化論」や「フリー」といった、今後起こりうる未来を書いた本のように、本書も読んで損はない1冊です。ぜひ読んでみてください。

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