愚痴や不満や事件が、会社を成長させる。書評「星野リゾートの事件簿」(中沢 康彦)

2014/07/22

事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ。」

この「踊る大捜査線」の名ゼリフは、現場で起きている問題が会社として改善出来ないという、よくある会社の問題点を、上手く表現した言葉だと思います。実際に仕事をしていると、現場の問題を現場で解決することが、いかに難しいかよく分かっているつもりです。言うほど簡単なことではありません。単純に、現場に権限を与えれば、解決出来るわけでもありません。

「現場の問題を、現場で解決する」。この当たり前のことを実践することで、大きな成果を挙げている企業があります。それが、星野リゾートです。「星のや」「リゾナーレ」「温泉旅館 界」といったリゾート施設の運営を手がけ、他のホテルや旅館とは異なる圧倒的なサービス力で、顧客の支持を集めています。

そんな星野リゾートが、いかに現場で起きている事件に向き合い、解決したのか。それをまとめたのが、本書「星野リゾートの事件簿」です。

日々起こる現場の「事件」

本書には、様々な「事件」が収められています。今やトマム名物と言われるようになった雲海テラスはいかにして生まれたのか、名門旅館やリゾート施設の再建に従業員はどう取り組んだのか、顧客のために動かない現場にブチ切れた新人が送った1通のメール、など。

本書に収められている11のエピソードどれもが面白く、消極的だった社員が、いかにして積極的に問題を解決する社員へと変わっていくのか。現場の問題に立ち向かう社員を、社長はどのように支えたのか。星野リゾートの普段の仕事ぶりがよく分かる1冊になっています。

愚痴を言って終わらせない

実際、星野リゾートの社員の方に聞いたことがあるのですが、星野リゾートの社員の方も、日々起こる出来事に対して、愚痴や不満を言ったりすることはあるのだそうです。

しかし、星野リゾートの社員が違うのは、愚痴を言って終わりにしないことです。愚痴を言う原因となった問題を皆で共有し、会社の課題として解決しようと取組む。その事を、社員みな意識している。その社員のかたはそうおっしゃっていました。

実際に話しを聞いて、それが星野リゾートの凄さなのだと感じました。話をしてくれたのは女性でしたが、背筋をピンと伸ばして、はっきりと物を喋る、笑顔が素敵な女性でした。

本書が出版されたのは、2009年。当時から5年経ちますが、この5年間にも、日々新たな事件が起きているはずです。そして、新たに起きた事件が、星野リゾートの社員を育て、強くする。本書を読み終えて、星野リゾートで働きたいと思う人は多いだろうなぁと感じました。

星野リゾートのサービスに興味をもった人、ホテル・観光業に興味を持っている人だけでなく、現場の力を最大限に引き出すためにどうしたらよいか考えているマネージャーにも、オススメしたい1冊です。

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