書評「考えの整頓」(佐藤雅彦)

本書「考えの整頓」は、「ピタゴラスイッチ」や、「だんご三兄弟」など、数多くの映像作品を手掛けた佐藤雅彦さんが、雑誌「暮しの手帖」に連載していた同名のエッセイをまとめた1冊です。

感覚を言葉に置き換え、ルールとしてまとめる

「自分の仕事をつくる」という本に書かれているのですが、佐藤雅彦さんは、30歳を過ぎてクリエイター職に移った後、仕事がなかった頃に、社内の資料室に通い、世界中のCMに目を通して、その中から自分が面白いとい思うものをビデオテープにまとめはじめます。じきに、自分が魅力を感じたCMには、共通するいくつかのルールがあると気付くようになったそうです。結果として、佐藤さんは、共通する23種類のルールをまとめるに至ったといいます。

佐藤さんのように、30歳を過ぎてからクリエイターに転じた人に、「水曜どうでしょう」のディレクターとして知られる、藤村忠寿さんがいます。

藤村さんも広告の営業として働いていた後、30歳を過ぎてクリエイター職に移り、イチから編集機器の使い方を覚え、「水曜どうでしょう」という作品を世に生み出しました。佐藤さんと藤村さんに共通しているのは、感覚を言葉に置き換えるのがとても上手い人だということです。「なぜ」面白いのか、「なぜ」笑ってしまうのか。2人共感覚では食べていけない営業の仕事をしていたからこそ、身につけたスキルなのかもしれないと、本書を読んでいて感じました。

「なぜ」「なぜ」と繰り返す

佐藤さんは、頭の中に浮かんだアイディアや、自分が感じた感覚を、言葉に一度置き換え、深く理解しようとしている気がします。

なぜそう感じたのか、自分がひっかかった理由は何か。「なぜ」「なぜ」と繰り返し、徹底的に掘り下げ、自分でも知らない、自分自身の奥深くに潜む感覚を掘り起こし、自分が表現したい映像や言葉として形にする。本書に書かれていることは、佐藤さんが普段行っている自分の感覚を掘り下げて得た言葉と、言葉を人が読めるように、自分が後に読み返して理解出来るようにつづった記録です。なぜ、佐藤さんは自分の考えを記録するのか。それは、考えを「整頓」したかったからです。

佐藤さんの著書は感覚を言葉に置き換えたよい見本

最近読んだ「観察の練習」という本でも感じたのですが、目で見たこと、耳で聞いたこと、頭で考えたこと、身体で感じたことを、言葉に置き換えないと、人に自分の意図や感じたことは伝わらないし、自分自身も深く理解する事は出来ないと感じています。

佐藤さんの著書は、感覚を言葉に置き換えた見本として、大変参考になると感じ、最近改めて読み直しています。ぜひこの書評をきっかけに、多くの人が興味をもって、読んで頂けたら嬉しいです。

追記ですが、本書の中に掲載されているこの言葉は、今後折に触れて思い返すことになる気がします。本書には、佐藤さんが大学の研究室で研究中に教授に言われたという、こんな言葉を紹介されています。

とにかく差をとれ、データの差を取れ。そこから何も出なかったら、さらにその差の差を取れ。