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書評「いきものがたり」(水野 良樹)-誰も皆それぞれの「ものがたり」を生きている-

   

いきものがたりの名前を知らなくても、いきものがたりのメンバーの名前は知らなくても、「SAKURA」「ありがとう」「YELL」「じょいふる」「風が吹いている」といった楽曲を知っている人は多いと思います。本書「いきものがたり」は、いきものがかりのソングライター水野さんが、いきものがかり結成前から現在までの期間を、450ページもの書籍にまとめた本です。

思い出した自分の小中高生時代

僕は「いきものがたり」を読みながら、自分の小中高生時代を思い出していました。僕は水野さんと小中が同じ学校です。実家も凄く近所。学年が違うので、接点はほぼありませんが、水野さんが中学校1年生の時に、部活体験でサッカー部に見学に来ていたのは、なぜか覚えています。水野さんが上手かったからだと思うのですが、妙に印象に残っています。

水野さんと山下さんが、いきものがかり結成前に練習をしたというコミュニティセンターは、僕の実家の近くにあり、よく僕も勉強しに通ってました。厚木市立図書館が入っていたビルの中にある、厚木市民が安く使えるスタジオは、僕もバンドの練習に使っていました。そして、水野さんが高校生の頃にいつも学校帰りに立ち寄っていた、「タハラ」というCDショップは、僕も毎週のように通っていました。厚木市立図書館で本とCDをリュックサックに詰め込めないくらいパンパンになるまで借りて、自転車を漕いで近くの道に停めて、タハラで流行りの楽曲や、バンドスコアをチェックする。高校時代から大学を卒業するまで、いや、僕が海老名から離れる社会人4年目まで、僕にとって毎週の楽しみでした。そして、タハラの1Fから2Fに上がる階段の壁には、アマチュアバンドのライブの告知を貼ることが出来るスペースがありました。たしか、いきものがかりも他のバンドと同じように、タハラの壁にライブの告知をしていた気がします。「いきものがかり」って変な名前だなぁと思った記憶があるので、たぶん間違ってないはずだ。

いきものがかりは、「サンダースネーク」というハードロック系のバンドがよく使うライブハウスで、無謀にもライブハウスでのライブをワンマンで成功させる。これは、本当に凄いことなのだ。何故かと言うと、当時の厚木近辺のバンドシーンは、ハードロック、ビジュアル系ロックバンドに影響を受けたバンドばかりだった。LUNA SEAが厚木や町田を拠点としていたこともあるけど、歌をきちんと聴かせるようなバンドの居場所はあまりなかった。ゆずのコピーみたいなユニットも見かけたけど、厚木や海老名は少なかったと思う。いきものがかりは、そんな土地から出てきたバンドなのです。

貫かれた楽曲第一主義

いきものがかりは、よく考えると独自の道を歩んできたバンドだと思います。ボーカルとギター2名というバンド編成も珍しいし、これほどまでメンバーの顔と名前より、楽曲の方が有名なバンドも珍しい。水野さんが本書の中で繰り返し繰り返し語っているけど、いきものがかりは「楽曲が世の中に広まって欲しい」ということを心から願い、表現しているバンドです。「サンダースネーク」で行われた初ライブ、自分たちのバンドの自己紹介と楽曲の歌詞を書いたパンフレットを、訪れた人々に配ったのは、いきものがかりがいかに楽曲を大切にしているかを現しています。

いきものがかりの楽曲は、「メッセージがない」と言われる事があるそうです。僕も20代の頃にいきものがかりを聴いた時は、同じ事を感じた事があります。ところが、30代になってから、「メッセージがない」と言われるいきものがかりの楽曲が、心地よく感じられるようになりました。いきものがかりは、「SAKURA」「風が吹いている」のように、心象風景を描写したような歌詞が多いのですが、楽曲で表現された風景に、勝手に自分の気持ちや感想を重ねられるのが、凄く心地よいと思うようになったのです。自分が歳を重ねた事もあるのでしょうが、いきものがかりの楽曲第一主義ともいえる良さに、ようやく気がついたのだと思います。

過去の色々な想い出を思い出させる1冊

僕は、地元の英雄ともいうべき存在であるいきものがかりに対して、少し距離をもって接していたと思います。海老名のVINAWALKというショッピングモールで開催されたフリーライブは、普段人が行き交う公園のようなスペースが人で埋め尽くされ、5,000人もの人が訪れたと言われてるのですが、僕は両親と妹に誘われたにもかかわず、ライブには行きませんでした。ちょっと、抵抗感があったのだと思います。

2016年、いきものがかりは「超いきものまつり2016 地元でSHOW!!~海老名でしょー!!!〜 / 〜厚木でしょー!!!~」という10周年を記念したスペシャルライブを行います。僕が普段社会人サッカーの試合をやっている海老名運動公園で、1日25,000人を動員したライブが行われるというのは、すごく不思議な気分がしますが、このライブの事を耳にして、またいきものがかりを聴いてみようと思いました。このライブの事を知らなければ、僕は「いきものがたり」という本にも出会うことはなかったと思います。

僕の想い出を長々と語ってきましたが、この本を読んでいると、自分の人生を読んでいるような気分になりました。たぶん、違う人が読んだら、違う気持ちになるのだと思います。それは、いきものがかりの楽曲に、様々な人が様々な気持ちを重ねるのと同じだと思うのです。この本も、いきものがかりの作品というべきなのかもしれません。まあ、いきものがかりのソングライターが書いているから、当然なのですが。

本を読んで、こんなに過去の色々な事を思い出したのは、初めてかもしれません。ぜひ、多くの人に手にとってもらいたい1冊です。

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