すべてはユーザーのために。書評「インサイド・アップル」

2012/11/14

インサイド・アップル

今やエクソン・モービルを抜いて、時価総額No1の企業となったアップル。本書は今まで明らかにされてこなかった、アップルの企業としての姿をまとめた書籍です。本書を通じて書かれている事で、印象に残ったのは主に以下の3点です。

  1. 徹底した秘密主義と分業制
  2. 細オリティを支えたスティーブ・ジョブズとデザインチーム
  3. 数字ではなくユーザー体験にこだわる

僕は、ここにアップルと他の企業との違いがあるのではないか、と思います。

徹底した秘密主義と分業制

本書で一貫して書かれているのは、アップルの徹底した秘密主義についてですが、その秘密の一旦は徹底した分業制にあると、本書には書かれています。(MacRumors(マックの噂)なんていう人気Webサイトがあるほどです。)

アップルでは、個々の担当者は自分の仕事は把握していても、最終的にどのようなアウトプットになるのか、また他の部門やカテゴリーがどのような仕事をしているのか、全く把握していないのだそうです。それほど分業制は徹底しています。徹底した分業制を取ることのメリットは2つあります。

1つ目は、担当者が自分の仕事に集中できるという点です。
例えば、ある人の仕事がシステム開発だった場合、自分の仕事以外(予算・社内調整など)の仕事の割合が大きくなったら、本業であるシステム開発の仕事に集中できなくなってしまいますが、アップルでは自分の仕事以外は一切担当させることはありません。自分の仕事に集中させ、120%以上のパフォーマンスを引き出す体制になっているのです。

2つ目は、分業制を敷くことで、情報の漏洩を最小限に留めることが出来ます。
個々の担当者は自分の仕事しか知らないため、他人と仕事の話をしても話が噛み合いません。したがって、自ずと仕事の事を話す機会が少なくなるという仕組みになっているのです。(もちろんアップルは製品の事を社外の人間に話したら、即刻クビという規約があるそうですが。)徹底した分業制を敷いているアップルでは上級役員であっても、スティーブ・ジョブズが基調講演で何を話すのかは知らない、ということがあったといいます。

徹底した分業制にはメリットがあることは分かりましたが、そう考えると、1人のユーザーとして疑問が湧いてきます。

  • アップルが製品のクオリティを高めるためには、分業制や秘密主義だけでは不可能ではないか。
  • 担当部門やカテゴリーを超えて仕事を進めていく必要があるのではないか。

もちろんアップルにも、部門間の利害を調整し、最適化する機能は社内に存在します。
「スティーブ・ジョブズ」と「デザインチーム」です。

クオリティを支えたスティーブ・ジョブズとデザインチーム

アップルの部門間の利害を調整し、最適化する機能として、もっとも影響力が大きいのが「スティーブ・ジョブズ」という存在です。スティーブ・ジョブズはアップルの隅々にまで気を配り、隅々にまで口を出す。それゆえに部門間を超えた仕事のやりとりにも口を出し、よい製品を作るためなら、強引に体制や開発の優先度まで変えてしまう、と本書には書かれています。

したがって、アップルという企業が公開企業でありながら徹底した秘密主義を保てる理由、それは製品や製品PRの最終アウトプットはスティーブ・ジョブズの中にしかないからではないか、とさえ思えるのです。

なお、スティーブ・ジョブズが口を出さない場合、アップルでは「デザインチーム」の意見が優先されることがあるそうです。アップルのデザインチームは機能の最適化まで考えたデザインを考えることが出来るチームです。そのため、困ったときにデザインを優先することで、製品としての機能を向上させ、クオリティを高める仕組みを作っているのです。

ちなみに、「デザインチーム」はスティーブ・ジョブズ直属の部署なので、スティーブ・ジョブズの意見が最も反映されやすい部署だと言えます。

アップルという企業は、徹底的な分業制を敷きつつ、部門を横断する人物「スティーブ・ジョブズ」と明確な基準を提示する「デザインチーム」の存在により、製品のクオリティを保っているのだと思いました。

数字ではなくユーザー体験にこだわる

アップルという会社を表す一言が、象徴的な言葉が本書には掲載されています。プロダクト・マーケティング担当の元幹部ロブ・シェーベンのことばを借りれば、アップルという会社は、以下の一言で表されます。

「アップルは、ユーザーの体験のことばかり考えている。収入の最大化は考えていない」のだ。

アップルという会社は、数字を意識するのは、CFOおよび関連部署の担当者のみなのだという。デザインやマーケティングの担当者が、売上や費用を意識して、仕事を進めることは殆ど無いのだという。アップルでは「ユーザー体験」の最大化こそが、すべてなのだ。

ユーザーが「Amazing」「Fantastic」と叫びたくなる製品を作ること、または作られた製品の価値を正しく理解してもらうことだけに、アップルに所属する全ての社員は、全精力を傾けています。

それでいて、アップルの社員は他のシリコンバレーの企業と比べると、給料は安いのだという。みなアップルで働く目的は、最高の製品が作りたいからだ。お金儲けをしたいわけではない。そんな価値観を社員が共有していること、それこそがアップル最大の強みなのです。

価値観を共有しつつ、スティーブ・ジョブズ亡き後、製品のクオリティを保って、ユーザーの体験を最大化させ続けることができるのか、アップルの今後に注目です。

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