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アンダーアーマーといわきFCが掲げる壮大なビジョン

   

アンダーアーマー

2016年1月13日、アンダーアーマーの正規日本ライセンシーである株式会社ドームは、福島県社会人2部リーグに所属する「いわきFC」の運営を主事業とする「株式会社いわきスポーツクラブ」を新たに設立したことを発表しました。「株式会社いわきスポーツクラブ」は将来的なJリーグ参入を目指し設立されたクラブで、社長には昨年まで湘南ベルマーレの社長を務めていた、大倉智さんが就任しました。

「株式会社いわきスポーツクラブ」は、元々あった「いわきFC」の事業を譲り受ける形で、設立されました。「いわきFC」は2015年シーズン福島県社会人3部リーグを全勝。今年2部に昇格しています。ただ、今回の会社設立とともに、セレクションを行うため、選手は入れ替えられるものと思われます。

僕はドームがいわき市に対する取り組みを耳にしてから、ずっと注目してきました。

いわきFCのビジョン

僕がいわきFCに注目したのは、そのビジョンです。いわきFCのWebサイトには、以下の様なビジョンが掲げられています。

1.いわき市を東北一の都市にする:スポーツが持つ経済的な価値を最大限引き出し、復興から成長へとつなげていきます。
2.日本のフィジカルスタンダードを変える ~魂の息吹くフットボール~:身体の大型化+ボールスキルを高いレベルで実践する攻撃的なスタイルを確立し、観る者に感動、勇気、希望といった無形のサービスを提供します。
3.人材育成と教育を中心に据える:スポーツを通じて社会を豊かにするために、地域と共に未来ある子供たちの成長を担います。そして社会性のある世界基準の選手、指導者を育成します。

まず注目したのは、いわき市をスポーツを通じて、東北一の都市にするという野望です。具体的には、年間売上は日本では断トツの100億円を達成して世界のビッグクラブの仲間入りをし、いわきFC観戦を中心とした観光や飲食などへの消費によるいわき市への経済効果を拡大させ、いわき市全体を我々が盛り上げ、成長に繋げていきたいと書かれています。いわき市の人口が34万人ということを考えると、これは壮大な目標です。

株式会社ドームは、いわき市に設立した物流センター「ドームいわきベース(DIB)」の横に、人工芝のグラウンド、クラブハウス、トレーニングセンターを建設。選手は、ドームいわきベースで勤務しながら、日々の練習に取り組みます。社会人リーグからプロを目指す時、いかに選手の給与を保証していくかが課題なのですが、株式会社ドームが主体となっているプロジェクトのため、給与と雇用、そして最高の練習環境が整備されているというのは、今までの日本のスポーツクラブにはなかったことです。

そして、このプロジェクトが興味深いのは、スポーツを通じて引き出した経済的な価値を、復興につなげようとして始める初めてのビッグプロジェクトだということです。

実際のチームを作る上で、「日本のフィジカルスタンダードを変える」というビジョンも、他のチームとは明確に違っています。日本のサッカーは、ボールを扱う技術に焦点をあてて、チームを作るのがほとんどですが、いわきFCはアンダーアーマーやDNSを提供している会社らしく、フィジカルから目指すサッカーを考えているのが、とても興味深く、今までの日本のサッカークラブとは違っています。FC今治とは全く違う「型」が生まれる可能性を秘めています。

フィジカルからサッカーを考える上で、大倉智さんがWebサイトに掲載していたメッセージが非常に興味深かったので、抜粋して紹介したいと思います。大倉さんは、湘南ベルマーレのフロントとして長年日本のサッカーに関わっているうちに、Jリーグの将来像に頭打ち感を感じることになったそうです。

日本サッカー界はチームが勝利することを第一に置き、目先の勝利が全てとなっていることです。点を取られたくないからゴール前を固め、ボールを奪いにいかない。フォワードにいい選手がいて少ない人数でカウンターを仕掛け、ゴールを狙う。相手チームは自陣でボールを回し時間を使いながら、ゴールの機会をゆっくりと探していく。そのようなサッカーで、選手の躍動する姿、感動が生まれるでしょうか。若い選手がピッチをガンガン走り躍動する。勝ち負けだけではなく、お客様に感動、勇気、希望といった無形のサービスを提供することが、サッカーの本質ではないかと思います。バイエルミュンヘンの関係者にスポーツ興行は「どうやって負けるかが大事だ」と言われたことを思い出します。
(中略)
一概に全てとは言えませんが、現在の日本サッカー界は、クラブの母体となる親会社が良い選手を獲得することばかりに投資し、勝利という価値観のみを追求しているのが実態です。
そんなサッカー界に、スポーツを通じて社会を豊かにするという理念を掲げて追求しているドーム社が参入することは、大きなイノベーションをもたらすと直感したのを今でも鮮明に覚えています。

このような考えが、いわきFCのビジョンには反映されているのだと思います。

そして、人材育成と教育を中心に据える。いわきFCはサッカースクールを無料で行う予定だそうです。ドームいわきベースの施設は地域に開放される予定です。また、いわきFCは最終的にはサッカー専用スタジアムの建設も目標にかかげています。ドームいわきベースの施設を元に、スポーツに励む子供たちが将来いわきFCでプレーする選手も増えてくるはずです。

スポーツサプライヤーがチームを作るという前例のない取り組み

このプロジェクトが面白いのは、スポーツサプライヤーが地域にコミットメントし、チームを作ったということです。ドームはメーカーではありませんが、このような事例は世界的にも例がないと思います。スポーツサプライヤーがクラブを設立することは、ユーザーとの接点を増やすという意味でも、大きなメリットがあります。ドームにとっても、いわき市にとっても、非常に野心的なプロジェクトだと思います。

スタッフも面白いメンバーが集まっています。強化・スカウト本部の部長は、現役時代は湘南ベルマーレのDFとして活躍し、引退後は湘南ベルマーレの強化部で働いていた田村雄三さん。そして、水戸ホーリーホック、FC東京でDFとして活躍した後、2014年から株式会社ドームに勤務していた平松大志さんがチームリーダーに就任しています。

ブランドマーケティング部のチームリーダーには、湘南ベルマーレで広報を務めていた岩清水 銀士朗さん(なでしこジャパンのDF岩清水梓さんの弟です)。そして、いわきFCの代表としてチームを支え続けていた向山聖也さんが、引き続きチームをサポートしていくことになりました。

最近、FC今治、沖縄SV、SC相模原といった、興味深いサッカークラブが地域に増えています。共通しているのは、日本をスポーツでもっと豊かにしようというビジョンです。もちろん、根底には現在の日本のスポーツがおかれている現状、日本のサッカーの現状に対する不満があります。ただ、その不満を愚痴として言うだけでなく、様々な方々が具体的にアクションを起こして、問題を解決していこうとしていることが、僕には興味深くうつっています。

いわきFCが今後どんな歩みを進めるのか、Jリーグにステップアップするには時間と地域の理解を得る必要があると思いますが、引き続き注目したいと思います。

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