2018年ロシアワールドカップサッカー最終予選 日本代表対オーストラリア代表「南アフリカ大会の宿題を片付けるチャンスがやってきた」

2018年ロシアワールドカップ サッカー最終予選、日本代表対オーストラリア代表は、2-0で日本代表が勝ち、2018年ロシアワールドカップへの出場権を獲得しました。

中央のMFのマッチアップ

この試合で僕が注目していたのは、日本代表の中央のMF対オーストラリア代表の中央のMFのマッチアップでした。

日本代表のフォーメーションは4-3-3で、MFは井手口が左、山口が右、長谷部が中央に位置し、長谷部は井手口と山口の少し後ろに位置します。

オーストラリア代表は、中央のMFはルオンゴとアーバインの2人。日本代表の方が3人いるので、数的優位に思えますが、ルオンゴとアーバインの前に、トロイージとロギッチという2人がいます。この2人がMFに近づいてパス交換すると、4対3で数的不利になります。このパス交換をどう抑えるかが、ポイントでした。

日本代表が井手口と山口を起用したのは、二人が守る場所でボールを奪って、素早く相手人内にボールを運び、得点を奪いたいからです。オーストラリア代表は、3-4-3というフォーメーションを、攻撃時も守備時も変えません。守備時にMFの両サイドの選手がDFの位置まで戻り、5人で守る事があるのですが、オーストラリアは敢えて3人で守ります。

さすがにゴール前までボールを運ばれたら、MFが1人戻ってきてDFが4人になる事はありますが、基本的には3人で守ります。したがって、DF3人で守っている両脇には、ボールを受けられるスペースが空いてました。日本代表はそのスペースを活用して、ボールを相手人内に運ぼうと考えたのだと思います。

戦前に解説者の方が「戻るのが遅い」と語っていましたが、たぶん戻らないのはチームのルールなのだと思います。戻らない理由として考えられるのは、相手を押し込む時間を増やすために、出来るだけ相手ゴールに近い場所でプレーさせたいというのもありますが、たぶん両サイドの選手が体力がないので、DFまで戻してたら、90分戦えないからだと思います。長友や酒井宏樹が90分絶え間なく動けるのが、いかに凄いことなのかがよく分かります。だから、彼らはイタリアとフランスの名門チームでプレー出来るのです。

オーストラリア代表のパス交換が止められなかった理由

日本代表としては、オーストラリア代表の中央のMF2人にボールを持たせて、奪ったボールを素早く運んで攻撃したかったのですが、前半は上手くいきませんでした。

上手くいかなかった理由は、オーストラリアDF3人と両サイドのMF2人とのパス交換を止められなかったからです。

オーストラリア代表は攻撃を開始する時に、DF3人でパス交換をします。日本代表はFWの乾、大迫、浅野の3人がボールを奪おうと距離を詰めるのですが、オーストラリアのDFは距離を詰められると、両サイドのMFにパスを出し、日本代表の守備を外してボールを運んでいきます。両サイドのMFがフリーでボールを受けてしまうので、日本代表は山口や井手口が対応しますが、対応するとオーストラリア代表の中央のMFがフリーになってしまいます。

フリーなったら、余っている長谷部が対応しようとするのですが、長谷部か前に出ると、トロイージとロギッチが中央でパスを受ける、といった具合に後手に回ってしまう場面がありました。また、オーストラリア代表の両サイドのMFにパスが通ると、FWのクルーズがサイトに動いてパスを受けます。この動きに対応するため、中央のDFを務める吉田と昌子が移動するので、中央にスペースが空いてしまう事がありました。オーストラリア代表が空いたスペースを活用する事はありませんでしたが、見ていてヒヤヒヤしました。

狙い通り、オーストラリア代表のDFの両脇をついて得点を挙げることが出来ましたが、ボールを保持していたのはオーストラリア代表でしたし、むしろ失点するまではオーストラリア代表の狙い通りに試合が進んだのだと思います。

後半から守備を修正した日本代表

後半開始後、日本代表は守備を修正しました。修正したのは、オーストラリア代表のDF3人と両サイドのMFとのパス交換への守備です。

オーストラリアのDFがボールを持ったら、乾と浅野は、オーストラリアの両サイドのMFの位置を頭に入れながら、パスコースを消しながら素早くボールを持っている選手との距離を詰め、サイドからボールを運ばせませんでした。

オーストラリア代表はサイドからボールが運べなくなったので、中央のMFにパスを出しますが、中央のMFには山口と井手口がマークしているので、自由にプレー出来ません。トロイージとロギッチにパスを出そうとすると、長谷部、吉田、昌子のうち一人が素早く距離を詰めます。オーストラリア代表の攻撃の手を一つ潰した事で、日本代表の守備が上手く機能するようになりました。

ハリルホジッチ監督が起用したかったメンバーで勝った試合

この試合のスタメンを知ったとき、僕は「ハリルホジッチ監督が最初から選びたかったのは、この試合のようなメンバーなんだろうな」と思いました。ハリルホジッチ監督は、相手の特徴を分析し、相手の強みを消し、試合に勝つ事から逆算して、戦術を決める監督です。どんな相手に対しても、ボールを保持するような戦い方はしません。

この試合は、オーストラリア代表に「ボールを渡す」事で、試合をコントロールしようと考えたのだと思います。相手の攻撃を受け止め、ボールを奪ったら素早く相手陣内にボールを運ぶアクションを起こす。ボールを奪われたらは素早く帰陣し、何度もボールを奪うアクションを繰り返す。

したがって、ハリルホジッチ監督が好むのは、「攻守両面でアクションを絶えず起こせる選手」です。この基準に照らし合わせると、井手口、浅野、そしてリーガ・エスパニョーラで戦ううちに攻守のアクションの質と量が改善された乾といった選手が起用されるのだと思います。メンバー選考から、「自分が信頼出来るメンバーで戦う!」というハリルホジッチ監督の想いが感じられました。

今こそ2010年南アフリカ大会の宿題を片付けよう

この試合を観ながら、僕は2010年の南アフリカ大会の日本代表の戦いを思い出していました。大会直前に戦略を変更した日本代表の戦い方は、この試合の日本代表と似た戦い方を披露しました。「守備重視」という批判も受けながら、予選リーグで2勝を挙げ、ベスト16まで勝ち進みました。

しかし、2010年の南アフリカ大会のベスト16という成果は、大きな宿題も残しました。予選リーグを2位で通過し、ベスト8をかけたパラグアイ戦では、予選リーグから積み重ねた疲労とあわせ、ボールを相手ゴール方向に運ぶ事が出来ず、シュートチャンスを作れずにPK戦で敗れました。2010年の時は大会直前に戦略を変更したため、細部を詰め切る時間はありませんでした。しかし、今回はまだロシアワールドカップまで時間があります。

この試合は日本代表の試合にしては珍しく、ボール保持率が33.5%、パス本数が305本と、ボールを相手に保持された時間が長く続きました。

ハリルホジッチ監督は攻められるだけの戦い方を、必ずしも良しとはしていません。基本的な戦略は変えずに、もっとシュートチャンスを作ったり、ボールを運べたり、パスで相手の守備を崩せる選手を起用するプランも頭にあると思います。柴崎、小林祐希、香川といった選手を選んでいるのは、ハリルホジッチ監督が、相手にあわせて勝つために、様々な戦い方を選択肢にいれていることが読み取れます。

ハリルホジッチ監督が作り上げたチームは、相手からボールを奪ったら素早く攻撃する「カウンター戦略」を掲げつつ、チームとして勝つために素早く攻撃と守備を実践出来る選手を選び、相手にあわせてフォーメーションや起用する選手を選び、試合に勝つチームです。相手を踏まえた上で、「どう勝つか」を戦略に基づいて実践するチームです。

ハリルホジッチ監督が今後どんなチームを作るのか、とても興味があります。カウンター攻撃の鋭さを追求していくのか、より強度の高い守備を追求するのか、あるいは相手によってはボールを保持して相手を崩せるような戦い方も選択出来るチームにするのか、僕自身、カウンター戦略のチームをきちんと追いかけた事がないので、ハリルホジッチ監督のチーム作りは勉強になります。今後が楽しみです。

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