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2018年ロシアワールドカップ サッカー最終予選 イラク代表対日本代表 レビュー「試合の流れを変えた後半のイラク代表の対応」

   

2018年ロシアワールドカップ サッカー最終予選、日本代表対イラク代表は、1-1の引き分けでした。

ハリルホジッチ監督は、アウェーで行われたオーストラリア代表との試合以降、明らかに戦い方を変えています。相手のサッカーを分析し、相手チームの特徴を出させず、自分たちの特徴を出して勝つための戦い方を選ぶようになりました。「自分たちがやりたいサッカー」として、「試合に勝利するためのサッカー」を考えて実行する。そして、試合に勝利するためには、どんなメンバーを選び、どんなフォーメーションを選択すればよいか。当たり前の事のようですが、今までサッカー日本代表は、この「当たり前の事」より、「自分たちがやりたいサッカー」を披露することを優先して戦ってきました。

しかし、最終予選を戦ってきて感じるのは、アジアの他の国のレベルが上がっている事です。個人の力に頼ることなく、チームとして戦える国が増え、自分たちがやりたいサッカーを披露して勝てるチームの方が少なくなりました。きちんと対策しなければ勝てないのです。

原口を中央で起用した理由を考える

この試合、サッカー日本代表は、DF4人、MF5人、FW1人の「4-5-1」というフォーメーションで戦いました。MFはDFの前に遠藤と井手口を配置し、FWの大迫の後ろに原口を配置しました。右サイドに本田、左サイドに久保が配置されました。親善試合のシリア戦とは人の配置が異なりました。この配置を採用した要因は、山口や香川が怪我をして起用できない状態だった事、今野のコンディションといった要因もあると思いますが、イラク対策だったと僕は感じました。

イラクは「4-5-1」のフォーメーションを採用していましたが、攻撃時は中央のDF2人の間に、21番のサード アブドゥルアミールが下がってきてパスを受け、中央と左右にパスを出します。この選手が攻撃の起点になります。中央のDF2人はあまりパス出しには参加しません。21番のサード アブドゥルアミールから左右のDF(サイドバック)の2人にパスを出した後は、サイドバックとMFとの間で短い距離のパスを交換し、相手ゴール近くまでボールを運ぼうとします。

また、中央の攻撃時は左MFを務めていた、19番のマフディ カミルがサイドバック付近に下がってきて、短い距離のパスを交換して、ボールを運ぼうとします。右サイドは9番のアハメド ヤシーンはパス交換にはあまり参加せず、DFの背後を狙います。10番のアラー アブドゥルザフラと、5番のブルワ ヌーリがサイドバックの近くに寄り、パス交換に参加します。このパス交換が始まるとイラクのペースになってしまうので、21番を起点とした攻撃を出来るだけ相手のペースで進めさせない事が、イラクと戦う上でのポイントでした。

ハリルホジッチ監督の選択は、最も守備を献身的に実行してくれる原口を中央で起用する事でした。原口は愚直に21番をマークし、特に縦方向のパス交換を消そうと守備をしました。原口は中央でパスを受けるのは得意ではありませんので、原口を中央で起用したのは、守備の事を考えてだと思います。

イラクは攻撃時は、「4-1-2-3」のようなフォーメーションを採用しているので、シリア戦で採用した「4-1-2-3」を採用すると、日本代表をイラクの「1」のポジションの選手を2人でマークする事になってしまい、ミスマッチが生じてしまいます。ミスマッチから相手に主導権を握られたくはなかったので、ハリルホジッチ監督は「4-5-1」を選択し、マークする選手をはっきりさせました。原口が21番、遠藤が5番、井手口が10番をマークすることで、マークがはっきりしました。また、遠藤は近くに19番がいるので、19番もマークしなければなりませんでした。上手く対応したと思います。

本田を右サイド、久保を左サイドに起用したのは、本田を中央で起用しない場合は、左より右の方がよいという判断だったのだと思います。守備の事を考えると、本田も久保もそれほど献身的に実行してくれるタイプではありませんので、守備の事を考えた配置ではないと思いました。

ただ、攻撃時にサイドからのパスで高いパスより低いパスを選択していたことから、低いパスをあわせてシュートしてゴールを決めるというパターンを練習していたのだと感じました。サイドから低いパスを合わせるのは、左利きは右サイド、右利きは左サイドにいたほうが簡単に出来ます。ハリルホジッチに聞かなければ分かりませんが、得点を獲るために、久保を左、本田を右にしたのだと感じました。

本田と久保の動きで気になったのは、守備時の動きです。本田と久保はイラクのサイドバックがボールを持ったら、素早く距離を詰めて、相手からボールを奪うような守備をしていました。オーストラリア代表との試合の時は、MF4人が1列に並び、相手がある程度攻め込んでくるまでは、ボールを奪うような動きはしませんでした。しかし、イラク戦は違いました。中央の井手口と遠藤はDFの前に残ったままで、本田と久保はサイドバックのマークにつく。きちんと場所を守る守備をトレーニングさせ続けたハリルホジッチ監督としては、珍しい采配だと思いました。

たぶんハリルホジッチ監督は、イラクのサイドバックと21番でパス交換され、体力を消耗するのを恐れていたのだと思いますし、サイドのパス交換から中央にボールを運ばれる事を恐れたのだと思います。イラクの攻撃の特徴をきちんと分析した上で、対策を講じていたことがよくわかりました。

試合の流れを変えたイラク代表の対応

日本代表は後半10分までは試合をコントロールしていたと思います。しかし、後半10分頃のイラクのある変更によって、イラクペースになりました。イラクの変更は、左右のMFの配置を変えた事です。19番のマフディ カミルを右、9番のアハメド ヤシーンを左に移します。左利きのマフディ カミルを右サイドに配置したのは、日本代表の守備に抑えられてたので、彼を起点にパス交換をしようという意図もあったと思いますし、9番がよいプレーが出来ていなかったので、配置変えてよいプレーが出来るのか、様子をみたかったのだと思います。ただ、9番はよいプレーが出来なかったので、11番のフマム タリクと交代させます。11番は左利きでしたが、右サイドに配置し、19番を再び左サイドに配置する、はずでした。

ところが攻撃時には19番が左サイドから右サイドに移ってきて、ボールを受け始めます。空いた左サイドには、10番が下がってスペースを埋めます。11番の選手はボールを扱うのが上手い選手なので、11番と9番が近い距離でパス交換することで、イラクが攻撃する時間が少しずつ増えていきます。久保と本田を比較した時、本田よりは久保のサイドの方が攻略できると思ったのだと思いますし、本田がボールを持って相手陣内に運ぼうとしても、スピードがないし、味方が相手陣内に進むのを待つようなプレーをするだろうと予想したので、多少攻められてもよい。そんな考えもあったのだと思います。

日本代表はマークする選手を決めて守っていたので、19番が右サイドに移ったことで、19番の選手を誰がマークしてよいのか分からず、ボールを持った選手への対応が遅れるようになりました。少しずつ原口がマークしていた21番が余裕をもってパスをする場面も増えていきます。この2人のパス交換から同点ゴールが生まれたのは、イラクにとっては狙い通りだと思います。

ただ、イラクにとって誤算だったのは、19番が足をつらせ交代してしまったことです。19番が交代したことで、イラクは11番を左に、交代出場したバシャル レサンを右に配置します。交代後はパス交換のテンポが落ち、狙い通りの攻撃が出来なくなってしまいました。

どのチームも規律がとれて、相手の戦い方に応じて変化してくる

日本代表も選手交代では誤算が生じていました。井手口、酒井宏樹の負傷交代も想定外だったと思いますが、ハリルホジッチ監督にとって想定外だったのは、21番をマークさせていた原口が、マークを外すようになってしまったことだと思います。原口を交代させたのは、21番をマークさせたかったからだと思います。まずは相手の長所を消す事を優先させていることが、この交代からも読み取れます。色々批判された交代ですが、倉田が入り、19番が交代してからは、イラクが疲れもあるのか、パス交換のテンポが落ちたのも事実です。決して悪い交代ではなかったと思います。

ハリルホジッチ監督が言うように、最後に浅野のような選手を入れていれば、得点を奪えていたかもしれませんが起用できなかったので、この結果は妥当だと思います。ハリルホジッチ監督としては、出来る事はきちんと実行したと思います。僕が驚いたのは、イラクが試合展開に応じて戦い方を変えてきた事です。今回の最終予選を観ていると、どのチームもアジアのチームとは思えないほど規律がとれているチームが多く、相手の戦い方に応じて戦い方を変えてきます。ハリルホジッチ監督はじめとするスタッフや選手はよく対応していると思います。

イラク戦に引き分けたことで、オーストラリア、サウジアラビアと難敵との対戦に勝たなくてはならなくなりました。最終予選を突破するのは簡単ではありません。次の試合は8月。どんな選手が選ばれ、どんな戦い方をするのか。注目したいと思います。

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