2018年ロシアワールドカップサッカー最終予選 日本代表対サウジアラビア代表「ヨーロッパでは普通の戦い方でアジアのチームに勝った試合」

2016/11/17

2018年ロシアワールドカップサッカー最終予選、日本代表対サウジアラビア代表は、2-1で日本代表が勝ちました。2016年10月に行われたオーストラリア戦のレビューで、僕は以下のように書きました。

この試合にハリルホジッチは手応えを感じていると思います。守備をスタートするポジションが崩れておらず、短期間ですが、役割が整理されていると感じました。この試合の戦い方が、今後の日本代表の戦いを測る基準になるはずです。

サウジアラビア代表との試合を観る限り、オーストラリア戦で得られた手応えを基にして、チームとして一歩前に進める事が出来た。そんな試合だと思います。

ブンデスリーガのスタンダード

この試合の勝因は守備です。オーストラリア戦でハリルホジッチが求めていた、縦方向と横方向の選手間の距離を短くし、相手の選手がボールを持ったら、複数の選手が連動して素早く距離を詰め、ボールを奪う。オーストラリア戦で機能していた守備が、この試合でも機能していました。

以前も書きましたが、ハリルホジッチの戦い方は、ブンデスリーガの中位クラブだとよくみられるサッカーです。この試合でスタメンを務めていた、大迫、清武、原口、長谷部といった選手は、いずれもブンデスリーガの中位クラブに所属する選手です。山口、酒井宏樹、そしてこの試合ではスタメンを外れましたが酒井高徳も、ブンデスリーガの中位クラブに所属していたり、所属していた経験があります。ちなみに、プレミアリーグでは、レスター・シティが同じような戦い方をします。つまり、ハリルホジッチは、ヨーロッパでは普通の戦い方を、日本代表に持ち込んだだけなのです。ヨーロッパでは普通の戦い方に慣れている選手は、クラブでのプレーをそのまま見せれば、代表でもよいプレーが出来るということなのです。

ロンドン五輪の代表および予選を戦ったメンバーが、スタメンに増えてきているのも、ハリルホジッチの戦い方が機能するようになった要因だと思います。大迫、清武、原口、山口、酒井宏樹、酒井高徳、吉田麻也といった選手は、ロンドン五輪代表で、関塚監督がハリルホジッチのようなサッカーを実践して、結果を残した時のメンバーです。したがって、この戦い方で戦えば、結果が出るという成功体験を持っていること、代表という選抜メンバーで構成する組織で実践した経験を持っているため、何をすればよいか分かっているというのも、大きなアドバンテージだと思います。

この試合にスタメン出場したJリーグの選手は、山口、森重、西川しかいませんでした。これは、海外のシーズンが開幕して数ヶ月を経過し、海外でプレーする選手のコンディションが上がってきたことも大きいと思います。一方、Jリーグの選手たちは、シーズン終盤のためコンディションが下がっています。ハリルホジッチのサッカーは、短い距離のダッシュを継続して何度も何度も実践出来なければ、機能しないサッカーです。ハリルホジッチが常に「海外でプレーする選手は、継続して試合に出てコンディションを上げて欲しい」と語るのは、自分がチームに求めているサッカーを実現させるために、コンディションがとても重要だという認識があるからなのです。

守備が機能しなくなったのは攻撃に問題があるから

勝ったとはいえ、課題はあります。縦方向と横方向の選手間の距離を短くし、相手の選手がボールを持ったら、複数の選手が連動して素早く距離を詰め、ボールを奪う守備が、後半20分過ぎからは機能しなくなっていました。これは、疲れてきたことが要因ですが、疲れる要因になったのは攻撃です。

攻撃の時に、ペナルティエリア付近までボールを運んだ後、確率の低いパスやシュートを選択して、チャンスを活かせない場面がみられました。攻撃の時に、スピードを上げたままプレーすると、身体をコントロールするのが難しく、ミスが増えてしまいます。一旦スピードを落としてから、再度スピードを上げたり、横方向のパスで相手の守備を動かすといった工夫が必要なのですが、こうした工夫が日本代表のプレーからはほとんどみられず、同じテンポでずっとプレーしていました。攻めきる場面と、ボールを回しながら休憩する場面を使い分け、試合のテンポをコントロールする事は、まだまだ出来ていません。

よいプレーが出来るメンバーが限られている

少しずつハリルホジッチが目指すサッカーが浸透してきていると思いますが、まだまだ実践出来るメンバーが少ないのも課題です。特に、後半から本田と香川が入りましたが、2人が入ってから、テンポの良い攻撃、守備はほとんどみられませんでした。また、2人とも、自分がプレーすべき場所を外れてプレーすることが多かったです。

例えば本田は、左サイドにボールがある時、守備の時に主に右側のボランチを務めていた長谷部の横におらず、斜め前に位置していることがありました。少しだけ前にいるため、左サイドから右サイドにボールが移った時、相手に距離を詰めるのが1歩遅れる。あるいは、本田に合わせて距離を調整したり、本田のポジションを調整出来ないがゆえに、選手間の距離が開いている場面がみられました。

ワールドカップ最終予選は半分終わっただけ

ハリルホジッチは、ワールドカップ最終予選を通じて、チームに対して繰り返し自分がやりたいことを語り、機能するための練習を行ったと思います。メンバーも入れ替えたこと、初戦のUAE戦の敗戦による危機感も手伝い、少しずつチームとの力は上がってきていると思います。ただ、まだまだ選手同士の戦い方に対する理解度、「目の高さ」は揃っていないなと感じますし、不必要に煽る監督の発言やパーソナリティに対する不満も、まだ解消されたとはいえないと思います。

この試合の勝利はとても大きいと思います。しかし、まだワールドカップ最終予選は折り返し地点です。2017年3月に行われるアウェーのUAE戦とホームのタイ戦では、Jリーグは開幕したばかりですし、ヨーロッパでプレーする選手は怪我を抱えている選手がいる事が予想され、決して万全のコンディションでプレー出来る試合にはならないかもしれません。そして、まだアウェーでの試合が3試合残っています。安心出来る状況ではありません。

今後チームがどのような戦いを披露するのか。そして、どんなメンバーが起用されるのか。ある程度方向性や基準が見えてきたことで、より楽しみが増えました。楽しみです。

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