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2018年ロシアワールドカップサッカー最終予選 日本代表対タイ代表 レビュー「日本代表における本田圭佑の現在」

   

2018年ロシアワールドカップサッカー最終予選、日本代表対タイ代表は、4-0で日本代表が勝ちました。この試合のレビューでは、試合展開とは別のことについて書きたいと思います。それは、本田圭佑の事です。

最終予選を通じて変化した本田圭佑の立場

今回の最終予選が始まる前、本田は日本代表のエースでした。チャンスを作り、時には自らゴールを決める。多少守備で手を抜いても、自分が担当しているエリアを外れて動いても、攻撃で他の選手との違いをみせ、チームの勝利に貢献出来ればよい。だからこそ、自分がプレーしやすいように、監督にも率直に意見をぶつけ、監督にも(ある程度)許容させる。そんな立場の選手でした。

ただ、UAE戦の敗戦からスタートした最終予選を通じて、本田の立場は少しずつ変わっていきます。攻撃も守備も素早くアクションを起こし、自分の担当するエリアを忠実に守り、ハリルホジッチ監督が考えるプランをきちんと実行出来る選手が、少しずつ出場機会を増やしていきます。そして、この変化は本田にとっては、好まざる変化でした。攻撃も守備も素早くアクションを起こし、「出して、受ける」という動きを繰り返し、動き続けるようなプレーが苦手だからです。ボールを受けて、自分の足元で落ち着かせ、次のアクションを起こす。このようなリズムでプレーする選手にとって、ハリルホジッチ監督が実現させたいサッカーは、自分の強みが活きないと考えても不思議ではありません。そして本田は、スピードが早い状態でのボール扱いが、そこまで得意な選手ではありません。

オーストラリア戦後の本田のコメントを読むと、オーストラリア戦が守備を重視した戦いを志向したこともありますが、ハリルホジッチ監督の考えに必ずしも納得していないということが伝わってきます。

(監督のサッカーの完成度は)ちょっとビデオを見たいなとは思っていますが、やっていて課題は多いなと感じています。評価は今ここでは冷静には分析できていないですが、全然満足はしていないです。たぶんそれは全員思っていると思います。

(思い当たる課題は)多いです。守備もそうですし攻撃も。やっぱりこの短期間でイラク戦から全く戦術を変えて、アウェーでとにかく勝ち点は絶対に取りたいと思い、最低限の勝ち点は取れた。とはいえ、内容はいいように支配された。「支配させる」という感覚で前半はちょっとだけいられたんですけれど、後半は「支配される」に変わったと思います。これは大きな課題だと思っています。後半も「支配させる」という感じのゲームプランのまま2点目を狙いにいけたのであれば、もう少し評価はできましたが、後半はちょっと反省の方が多かったです。

本田としては、短い距離でパスを繋いで、相手を押し込み、攻撃のテンポを常にアップテンポにするのではなく、スローテンポの攻撃も織り交ぜたいのだと思います。ただ、何度も書きますが、本田の好みと、ハリルホジッチ監督の好みは必ずしも同じではありません。実は、ザッケローニ監督の時も、同じような事がありました。あの時は本田の方が力が強く、本田の意見が通りました。しかし、今回はそうはいきません。本田はACミランで結果を出せていません。結果が出ていない選手の言う事を聞く監督はいません。本田をスタメンから外し、チームも結果が出ています。本田とハリルホジッチ監督のパワーバランスが、最終予選開始前は本田の方が影響力がありましたが、現在は逆転しているように見えます。

本田が代表に呼ばれる理由

しかし、ハリルホジッチ監督は本田を常に起用します。自分の意に100%そぐわないプレーをする時がある本田を、交代の1番手で使うのはなぜか。本田を代表から外さないのはなぜか。もちろん、本田が日本人には珍しく「180cm以上の選手」で「左利き」という、他の選手にはない特徴をもった選手であるという点もあると思います。でも、そんな事よりハリルホジッチ監督が本田を評価しているのは、フィールド内外で起こる問題を解決し、チームをよい方向に導こうとするリーダーシップにあるのではないかと思うのです。この点においては、本田以上の選手はいません。

サッカーはフィールドで起こっている問題は、技術の問題というより、人間関係や、ちょっとしたコミュニケーションのずれが原因で起こっているという事が、よくあります。こうした問題の原因は、監督は100%把握出来るわけではありません。選手間や選手に近い立場のスタッフが率先して解決していく事が求められるのですが、そこで優れた能力を発揮するのが、本田であり、川島であり、長友であり、長谷部であり、といった選手なのだと思います。ハリルホジッチ監督は、チームがフィールドだけで成り立っているわけではないという事や、フィールドの中の問題に100%監督が関われない事をよく理解しています。だからこそ、本田を外さないのだと思います。

力の落ちたエースの扱いが一番むずかしい

ただ、本田個人の事を考えると、この状況は決して望ましくありません。特別待遇はなくなり、自分のプレーの質は上がらず、チームで出場機会を得られない。身体の動きは重く、正直言うとこのまま少しずつプレーのレベルが落ちていくんだろうなと感じました。

プロ野球の世界では、「力の落ちたエースの扱いが一番むずかしい」という言葉があるのだそうです。選手は若い頃のイメージを持っているから、9回完投し、速いボールもビシビシ投げれるイメージを持っているけど、実際はそうではない。力が落ちている事を選手は認めたくないものです。プライドも高いので、ちょっと扱いを変えるとへそを曲げます。だから、「力の落ちたエースの扱いが一番むずかしい」というわけです。

立場が変わりつつあるかつてのエースをどう監督は扱うのか。そして、かつてのエースは力を取り戻す事が出来るのか。僕は難しいと思っているのですが、今後も注目したいと思います。

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