2ステージ制に反対した人はどこにいった。Jリーグの問題は解決していない。書評「Jリーグ再建計画」(大東和美、村井満)

本書「Jリーグ再建計画」は、Jリーグの前チェアマンの大東和美さんと現チェアマンの村井満さんの声を中心に、Jリーグの現状と課題、そして将来に向けて現在取り組んでいることをまとめた1冊です。

本書の存在がサッカーファンに知られていない

2015年シーズンから、Jリーグは2ステージ制になります。

昨年、2ステージ制になることが発表された時は、スタジアムで反対する段幕を掲げたサポーターも多かったのに、現在は2ステージ制に対する反対意見は聞こえてきません。あの時反対の意志を示したサポーターは、いったいどこにいってしまったのでしょうか。もしくは、反対していたサポーターは、全て2ステージ制に賛成したのでしょうか。

「こんな本が発売されているなんて知らなかった」。
それが僕が本書を図書館で目にした時の正直な感想です。

僕が情報収集を怠っていたのかもしれませんが、ワールドカップ前に出版されたこともあって、本書はほとんど話題になりませんでした。話題にならなかったことで、本書が読まれていないのであれば、それは極めて残念です。

2ステージ制になる理由

なぜ、Jリーグは2ステージ制になるのか。端的にいうと、Jリーグの入場者数が2008年を境に年々下降していることが大きな要因だ。2008年のリーグ戦1試合平均入場者数は19,202人だったが、2013年のリーグ戦1試合平均入場者数は、17,226人。実に2,000人近く減少しています。

また、Jリーグの全試合に広告看板を掲出出来るトップパートナーは、全部で12枠あるのだが、この枠が毎年売れ残っているということを、サポーターはどれだけ知っているだろうか。トップパートナーの広告枠は1枠あたり推定3億円、しかし、毎年4〜5枠程度が売れ残っているのだといいます。本書によると、今までは売れ残った広告枠は広告代理店が持ち出しで支払っていたのですが、2010年以降は広告枠の販売を担当していた博報堂とJリーグが包括契約の見直しに合意し、広告不足分の支払額を減額するとともに、マーケットを他社にも開放しました。ところが、それでも新たに獲得できた広告枠は、電通が獲得した日本マクドナルドの1社のみ。つまり、日本を代表する大手広告代理店2社をもってしても、広告枠を埋めきれていないというのが、2013年時点でのJリーグの現状であり、Jリーグというエンターテイメントの価値を現している気がします。

この事実が、Jリーグに改革へと決断させているのだ。アジア戦略の推進、クラブライセンス制度の構築、J1昇格プレーオフ導入、ポストシーズン制導入、J3創設など。大東さんが就任した2010年7月以降だけでも、Jリーグが実施した施策は、こんなにあります。大改革といってもいいほどの改変ですがが、劇的な改善にはいたっていません。本書を読んでいると、日本のユース年代やJリーグのクラブがアジアを勝てなくなった理由も、Jリーグの緩やかな衰退に要因があるのではないかとすら思えてきます。

減った観客を呼び戻すのは簡単じゃない

減った観客を呼び戻すのは、簡単ではありません。

試合のある土日に、Jリーグの試合をスタジアムで観るというのは、手間も時間もかかります。僕は結婚して2人の娘がいますが、サッカーに興味のない妻と2人の子供を連れて、スタジアムに行くのは、正直骨が折れます。最寄りのスタジアムが、家族向けのイベントを多く企画してくれている川崎フロンターレでなければ、連れて行くのは難しいと思います。

また、ディズニーランド、キッザニア、アウトレットモール、キャンプ場、などなど、土日に余暇を過ごすためのサービスは、たくさんあります。余暇を過ごすためのサービスとして、Jリーグはこれらのサービスと競争していると考えると、難易度が理解できると思います。

子供はずっと試合を観てくれるわけではありません。走り回ったり、急にトイレに行きたがったりします。落ち着いて試合を観ようと思ったら、テレビで観ていたほうが楽です。しかし、僕のようにスタジアムに行くのは面倒だと思っている人に来てもらえるようにしないと、観客は増えないと思います。

プロサッカークラブは農業だ

川崎フロンターレの天野春果さんは、「プロサッカークラブの運営は、農業に似ている」と語っていました。農業のように、土を耕し、水や肥料を与え、収穫して、消費者に届ける。途中雨が降ったり、雪が降ったり、台風が来たりすることもあって、思い通りにはいかない。プロサッカークラブの運営も、この繰り返しだというのです。
最近は、新鮮で美味しい野菜を食べたい消費者が直接農家と契約したり、ファーマーズマーケットなどで野菜を購入したりすることも増えています。サッカーが好きな人、Jリーグが好きな人がこれからのJリーグを支えていくために出来る事は、美味しい野菜を食べたい消費者と同じことなのかもしれません。なにもしないで、美味しい野菜が食べられるわけではありません。

サッカーが好きな人、Jリーグが好きな人にぜひ読んで頂きたい1冊です。

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