“社会”を信じるクリエイター。情熱大陸「猪子寿之」

2012/11/19

美術手帖 2011年 06月号 [雑誌]

昨日の情熱大陸で取り上げられていたのは、チームラボの代表であり、テクノロジーを用いた斬新な作品を発表している猪子寿之さんでした。

“社会”を信じるクリエイター

猪子さんの回を観ていて、一つのキーワードのことしか、彼は語っていないということに気づきました。
彼が語っていたキーワード、それは”社会”です。
猪子さんが自らの仕事について、番組内で以下のように語っています。

僕自身が本当にやりたいことは、社会から離れすぎているから、社会との接点があることが仕事になっている。

ここで、自らの発想と社会との接点を仕事にしていこう、とする彼の考え方が読み取れました。
また、猪子さんは”社会”について、番組内で以下のような発言をされています。

社会は未来に進みたがっている。僕らが未来の形を提示すれば、それが仕事になる。

僕が番組内で最も印象に残った言葉が「社会は未来に進みたがっている」という発言です。この発言は、社会というものの本質を的確に言い当てていると思い、こういう考えを持っている人はすごいな、と思いました。

また、猪子さんは未来に進みたがっている社会のことを、心から信じているのだと、これらの発言から感じました。社会の本質を理解し、信用し、未来を提示するために、自らのアイディアとテクノロジーを駆使し、形にする。

これを猪子さんとチームラボは、愚直なまでに、誠実に実行しているから、他のクリエイター集団とは、違う仕事ができているのだと、理解しました。簡単には真似できるものではありません。これからもチームラボの活躍は、続いていくと感じました。

台湾の個展の苦労話を前面に出さない編集

今回の放送を観ていて、情熱大陸の編集が従来の放送と違うような気がしたので、記しておきます。番組内で、チームラボが台湾の美術館に個展を出展する話を取り上げています。

従来の情熱大陸だと、個展開催に向けた苦労話や、個展の盛況ぶりを取り上げて、番組の後半部分の軸にするところですが、苦労話はほとんど放送されず、個展の盛況ぶりもあっさり取り上げただけでした。

たぶん、ディレクターは取材を終えて、個展の話を軸にするより、猪子さんの”社会”に対する考え方を、番組の軸にしたほうが、面白いと考えたのではないのでしょうか。

従来の情熱大陸の編集手法とは異なりますが、僕は今回の「猪子寿之」さんという題材を放送するにあたっては、この編集手法は間違いなかったと思います。おかげで、「猪子寿之」というクリエイターの考えている”軸”が、”社会”というキーワードから、理解を深めることができたからです。

今後も、苦労話やトピックを軸とした編集手法を取ることは時と場合によってあると思いますが、今回のような編集手法も題材によって使い分けて欲しいと思いました。

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