JSAA OPEN SEMINAR「バスケットボールのITxデータの今と未来」から読み解くNBAの事例と日本の現状

2015/02/28

昨日、日本スポーツアナリスト協会が主催するセミナー、「バスケットボールのITxデータの今と未来」に出席してきました。近年、NBAはテクノロジーの導入と、ファンへのデータ提供を積極的にすすめています。2013年にはSAPの協力の下「stats.nba.com」というWebサイトを開始。4,500超パターンとも言われるデータをリアルタイムに分析し、様々なパターン別のデータが、無料で閲覧できるようになりました。

さらに、2014年には「Sports VU」というシステムを導入します。SportVUでは、アリーナのハーフコートに3台ずつ合計6台のカメラを設置し、毎秒25回ずつ各プレイヤーとレフェリーのコート上での位置、ボールについてはコート上での位置と高さを記録します。収集されたデータはサーバーに送られ、ソフトウェアによって特定のルールに従って加工された上で、90秒以内にレポートとして各チームに提供される仕組みになっています。これが、「stats.nba.com」でも同様に提供されます。

なぜ、NBAはこうした取組を行っているのか。日本の現状と、今後はどうするべきなのか。それが、今回のセミナーのテーマでした。プログラムは以下のとおりです。

  • 「NBAにおけるIT×データ活用の最新事例」:斎藤千尋氏(バスケットボールライター)
  • 「代表チームにおけるIT×データ活用方法」:末広朋也氏(日本バスケットボール協会・男子日本代表チームテクニカルスタッフ)
  • 「バスケットボールにおけるIT×データの今と未来」:馬場渉氏(SAPジャパン・バイスプレジデント)、斎藤千尋氏(バスケットボールライター)、尺野将太氏(日本バスケットボール協会・女子日本代表チームテクニカルスタッフ)

実際に役立つデータを抽出する

こうしたテクノロジーが導入される前は、バスケットボールは「得点数」「アシスト数」「リバウンド」といった、「ベーシックスタッツ」というデータを採っていました。しかし、ベーシックスタッツだけでは、勝因との因果関係が、データを観ただけでは分かりません。そこで、よりデータを活用するために、競技の特性を把握した上で、データを置き換えたらどうなるか、現場では工夫しているそうです。

日本バスケットボール協会・男子日本代表チームテクニカルスタッフの末広さんが話してくださったのですが、リバウンドだけとっても「ハードコンタクト」「ソフトコンタクト」「ウオッチ」「どうしようもないリバウンド」の4種類に分けます。「ハードコンタクト」とは、相手としっかり競り合って、リバウンドにチャレンジしたケース。「ソフトコンタクト」は、相手とほとんど競り合わなかったリバウンド、「ウォッチ」とは、ただ見ていただけのリバウンドといった具合に、リバウンドだけでも、ケース別に分けて抽出しているそうです。「ソフトコンタクト」「ウォッチ」は、選手がチャレンジしなかったことを現す指標です。こうして、必要なデータを抽出し、現場の指導に役立てているのです。

トレーナーもデータを活用する

強く印象に残ったのは、アメリカでは既にトレーナーまで、データを活用するという意識が浸透しているということです。セミナーには昨年サンアントニオ・スパーズのトレーナーを務めていた山口大輔さんがいらっしゃっていたのですが、サンアントニオ・スパーズでは「選手をいかに健康に過ごすためにデータを使っていたか」という点について、話をしてくださいました。

Sports VUを使えば、選手の出場時間や、ポジションごとの強度もわかります。昨シーズン、ティム・ダンカンとケビン・デュラントでは、ケビン・デュラントの方が、出場時間が1,000分多かったそうです。1,000分違えば、プレーオフに回った時、コンディションは大きく変わります。こうした、データを把握した上で、日々のメニューを組み立てていたそうです。

データの位置づけが著しく低い日本

現在の日本のスポーツ界の課題は、データの位置づけが著しく低いということです。アナリストがいるチームがいればいいほうで、担当しているアナリストも人数が少なく、NBAのようにシステムが導入されてなければ、睡眠時間を削って作業するしかありません。尺野さんが「10日間で10時間しか寝られなかった」などと語っていましたが、今どきどんなブラック企業でも、そんなに働くことは要求されません。日本のスポーツ界でデータの位置づけ、アナリストの位置づけが低いことをよく現しています。

現在、データをスポーツの現場に活用出来るかどうかも含めて、競技の力なのだと思います。データを現場に活用するだけでなく、ファンにも等しく提供する。ファンに提供したことによって、ファンとのつながりを強め、競技としてのレベルも上がる。だから、NBAはテクノロジーの導入に力を入れているし、NHL、NFL、MLBといったリーグも、NBA同様に力を入れています。こうした流れは、世界中のスポーツに波及していくと思われます。

NBAがSports VUに投資した金額は、3億円と言われています。ビジネスの世界でも、データを活用して、勝ち方を模索する時代です。もっと、日本もスポーツにデータを活用していったほうがよいのではないか。そんな事を考えさせられたセミナーでした。

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