ユベントスの「ボールを奪いにいかない守備」について考える

2013/04/29

風邪をひいてしまい、予定していたフットサルをキャンセルしたので、久しぶりにサッカーの試合をじっくり観る時間が出来ました。観たのは、先週末に行われたミラン対ユベントス戦。結果は1-0でユベントスが勝利した試合だったのですが、この試合注目したのはユベントスの守備です。今まで何度もユベントスの試合は観たことがあったのですが、守備に焦点を絞って観たのは初めてです。ユベントスの守備に焦点を絞って観ると、Jリーグで見慣れた守備とは全く違う守備の仕方をしていることに気づきました。

ボールを奪いにいかない

ユベントスの守備の最大の特徴、それは「ボールを奪いにいかない守備」です。なぜ「ボールを奪いにいかない守備」が特徴になるのかというと、現代のサッカーの守備は相手がボールを持った時に、相手を取り囲んでボールを奪いに行く守備が基本です。Jリーグも大半のチームが、ボールを奪いにいく守備をしています。J1の首位に立つ大宮アルディージャは、このボールを奪いに行く守備が洗練されています。(さすが、日本に「ボールを奪いにいく守備」を持ち込んだベルデニック。)

ところが、ユベントスの守備は違います。ボールを持っている選手にはもちろんDFがアプローチに行くのですが、ボールを奪うためのアクションをとることはほとんどありません。どうするのかというと、「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」ように守備をするのです。つまり、相手の選択肢を減らすことで、ボールを奪う守備なのです。

「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」守備のメリット

「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」守備を行うメリットは2つあります。1つは、「体力をあまり消耗しない」という点です。「ボールを奪う守備」は、ボールを持った選手を複数の選手で取り囲んで、ボールを奪いにいきます。ボールを奪うために、1人の選手を複数の選手で取り囲むということは、取り囲むために自分のポジションを外してボールを奪いに行かなければなりません。自分のポジションを外してボールを奪うアクションを連続させるには、体力が必要です。

しかし、「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」守備では、相手のボールを奪いに行くために、自分のポジションを外すことが求められないので、無駄に体力を消耗しません。むしろ、「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」守備では、自分が守るべきポジションをきちんと守ることを優先します。守備をするポジション(エリア)を守ることが、パスコースとドリブルをするコースを塞ぐために、まずスべきことだからです。

2つ目は、「攻撃の時に自分のポジションから攻撃できる」ことです。当たり前のことですが、相手のボールを奪いに行くためにポジションを崩さないので、ボールを奪った時、自分のいるべきポジションから攻撃が組み立てられます。これは味方の選手も同様なので、相手チームの隙をより巧みにつくことができます。

ユベントスはこの2つのメリットをうまく活かしています。例えば、「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」守備では、ボールを奪う位置は低くなりがちなのですが、ユベントスにはアンドレア・ピルロというロングパスの名手がいるので、むしろ低い位置でボールを奪って、ピルロのパスからチャンスを作る攻撃を得意にしています。

高い戦術理解と連携が求められる

しかし、「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」守備にはデメリットもあります。消すべきパスコースやドリブルのコースがチーム内で共有できていないと、パスコースが消せずに、ズルズルとゴール前まで下げられてしまい、なかなか攻撃できなくなってしまいます。

また、この守備はパスコースやドリブルのコースを消すために、選手全員が正しいポジションにつくことが求められます。しかし、正しいポジションにつく前に攻撃されたり、素早いパス回しやサイドチェンジなどで、正しいポジションにつけないまま攻撃されると、簡単にシュートまで持っていかれてしまいます。したがって、「パスコースとドリブルをするコースを塞ぐ」とは、フィールドプレーヤー全員に高い戦術理解が求められる守備なのです。

イタリアで求められる”縦パスを奪う技術”

ユベントスはどの局面でボールを奪う事が多いのかというと、相手がCFに縦パスを入れた瞬間にボールを奪うことが多いことがミラン戦を観ていてわかりました。思い出したのは、7年前に観に行ったチャンピオンズリーグの試合で、当時現役だったミランのパオロ・マルディーニが、相手の縦パスを入れるタイミングを見計らって巧みにボールをカットしていた守備です。

ミランの前にはローマの試合を観に行ったのですが、当時ローマのCBを務めていたメクセス(現在はミラン)とキブ(現在はインテル)のコンビも、相手の縦パスをカットするのが非常にうまかったです。生で観ていると、そこに誘い込ませてボールを奪っているかのようでした。

イタリアはアリゴ・サッキという名将が「ボールを奪う守備」を始めた国としても知られていますが、マルディーニやキブやメクセスのディフェンスに象徴される「縦パスをカットする技術」は、現代のユベントスの守備に引き継がれている気が、ミラン戦の映像を観ていて感じました。

あえて難しい守備戦術に挑戦する川崎フロンターレ

なぜ、ユベントスの守備に注目してみたのかというと、川崎フロンターレの風間監督が「自分が目指している守備は、ユベントスのやり方に近い」と語っていた記事を読んだからです。確かに川崎フロンターレの守備は、パスコースや相手のドリブルのコースを消そうという意図は読み取れるのですが、肝心のパスコースがきちんと消せておらず、パスをつながれて、ズルズルと押し込まれる機会が目立ちます。

また、DFが「縦パスをカットする技術」をもちあわせていないので、せっかく狙いどころが絞れても、縦パスをいれられ、簡単にシュートまで持ち込まれる場面も目につきます。(ジェシは例外ですが)ユベントスの守備は、「相手のボールを奪う」守備に比べるとメリットも大きいですが、簡単に導入できる守備ではありません。「相手のボールを奪う」守備に慣れていた日本人選手には、非常に難しい守備だと思います。この守備方法を日本人が身につけることができれば、より高度な戦い方が出来るはずです。川崎フロンターレは現在リーグ戦1勝3分け4敗と苦戦していますが、取り組みが実を結ぶのかという点でも、注目していきたいと思います。

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