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川崎フロンターレの「カブの日」企画に学ぶプロモーション -よい企画は「おやじギャグ」から生まれる-

   

最近、川崎フロンターレのプロモーション企画が、注目を集めています。第16節の松本山雅FC戦では、「カブの日」と題して、カブトムシの採集、「インベスターZ」の三田紀房さん、株主優待生活で知られる桐谷さん、そしてカブトムシの飼育で知られる哀川翔さんのトークショーと始球式が開催され、20,000人近い観客を集めました。

この「カブの日」の主役は、川崎フロンターレの新しいマスコット「カブレラ」です。カブの形をしたこのマスコットが正式に川崎フロンターレの一員になったのは、2014年のことです。この「カブレラ」誕生には、問題や課題を成功の原動力にすら変えてしまう、川崎フロンターレのプロモーション部部長である天野さんの発想と行動力がありました。

そこで、ファン感謝デー限定で発売された、天野さんのエッセイ「カブ料理~カブレラ誕生から桐谷さんまでの約500日クッキング~」を題材に、企画の考え方、問題をいかに解決するかという点について、紹介したいと思います。

川崎フロンターレのプロモーションのパターン

川崎フロンターレが展開するプロモーションには、3つのパターンがあるそうです。

1つ目は、「一発型」。話題性や意外性は高いのですが、2回同じことが出来ないプロモーション企画のことです。過去に企画したイベントだと、落語協会と組んで開催した「勝点(しょうてん)」や、マンガ、アニメを集めたイベント「闘A!まんがまつり」が該当します。

2つ目は、「継続型」。これは「等々力風鈴市」、「DOLEランド」、春日山部屋の力士をフィーチャーした「イッツアスモウワールド」などが該当します。地元の神社でやる盆踊りや祭りのように、毎年だいたい決まった時期に毎年ほぼ同じ内容で行うことで、人を安心させ、季節を感じさせるイベントです。

3つ目は、「一発継続型」。これは、「一発型」と「継続型」の両方の良さを兼ね備えたものです。どういうことかというと、イベントのタイトルは変わらないものの、毎年コンテンツは変わるイベントなので、人を安心させるだけでなく、驚きも提供できる、究極のイベントです。ただ、川崎フロンターレには、この「一発継続型」のイベントが、「多摩川クラシコ」と電車を特集した「川崎の車窓から」しかありませんでした。したがって、天野さんとしては、「一発継続型」のイベントをもっと増やしたいと考えていたそうです。

そこで、思いついたのが、新しいキャラクター「カブレラ」を特集したプロモーション「カブの日」です。バレンタインデーや父の日など、特別な日の1つとして、カブレラを特集し、みんなに楽しんでもらおう。そんな思いつきから、「一発継続型」のイベントとすべく「カブの日」の企画が具体化し始めました。

おやじギャグから生まれた「カブの日」企画

天野さんは、よく言えば言葉遊び、悪く言えばおやじギャグが大好きです。

「イッツアスモウワールド」、「勝点(しょうてん)」、「闘A!まんがまつり」など、どこかで聞いたことがある言葉を面白おかしく言い換え、言葉遊びから企画を発展させ、一見サッカーとは関係なさそうなプロモーション企画を上手くサッカーと結びつけてきました。そして、サッカーとは異なる切り口をプロモーションに盛り込むことで、サッカーには興味はないけど、企画には興味がある人をスタジアム少しでも連れてこようと、努力を続けてきたのです。

「カブの日」企画は、そんな天野さんの言葉遊び(おやじギャグ)から企画を膨らます作り方の真骨頂ともいえる企画です。

まず、「カブ」という言葉から「カブトムシ」を結びつけます。等々力陸上競技場の外にある、通称「フロンパーク」にカブトムシが採集出来るスペースを作り、自分が選んだカブトムシを自分の手で採集できるようにしました。

自分でカブトムシを採る機会が少ない子供たちにとって、カブトムシの採集が出来るのは、貴重な経験です。なお、カブトムシの採集は後援会会員でなければ参加出来ないので、参加したい人は後援会に入会しなければなりません。後援会に入会するきっかけとして、カブトムシ企画は大きな効果を発揮したと思います。

そして、2015年は「カブ」はカブでも、「株」を特集。インベスターZの作者の三田紀房さんを呼んでのトークショー、そして株主優待生活で知られる桐谷さんを呼んでのトークショー、そしてハーフタイムでの自転車1周。そして、「カブトムシ」企画では、哀川翔さんをゲストに呼んでのトークショー&始球式と、盛りだくさんの1日となり、観客動員数も21,490人と20,000人を超えました。

潜在層を掘り起こすヒントになる川崎フロンターレのプロモーション

こうした、サッカーとは一見関係なさそうに思える企画も、クラブにとってメリットがなければ、実施しても意味がありません。「カブの日」企画が行われた試合のグッズ売り上げでは、カブレラグッズの売上が上位を独占し、観客動員数も20,000人超えを達成。こうやって、集客プロモーションがクラブや地域への貢献を目に見える結果で示すことで、さらに思い切ったプロモーションが企画出来るようになるのです。

以前、「15年前から川崎フロンターレのプロモーション企画は面白かった」という記事を書いたのですが、根本的には川崎フロンターレのプロモーションは、15年前から変わっていません。

規模が大きくなり、1試合に詰め込まれるイベントの量が増え続けていますが、根幹となっている考え方、企画の発展のさせかた、そして何よりサッカーに1人でも多くの人に興味をもってもらおう。川崎フロンターレに1人でも多くの人に興味をもってもらい、スタジアムに足を運んでもらうきっかけを作ろう、という考え方は変わっていません。

現在、こうした「潜在層」と呼ばれる顧客をいかにして掘り起こし、顕在化させて、顧客とするか。様々なマーケティング手法で提案、議論されていることの大半は、この「潜在層の顧客化」についてです。

しかし、どうやって潜在層にアプローチしたらよいのか、どうやって潜在層を顧客にとりこんだらよいのか。頭を悩ませている企業が多いと思います。よいコンテンツを作って発信していれば、ニーズをもった顧客が来てくれるというマーケティング手法を聞くことがありますが、よいコンテンツとは何か、潜在層に向けて本当にコンテンツが機能するのか、訪れた潜在層の受け皿となるサービスが用意されているのか、きちんと考えて、マーケティングをしなければなりません。

川崎フロンターレのプロモーションは、潜在層を取り込む手法として、非常に参考になる事例です。個人的には、もっと世間に紹介されて良いと思いますし、マーケティングの専門家が注目しないのが不思議です。

来年はクラブ創立20周年を迎えます。たぶん、もうクラブ創立20周年にむけたプロモーション企画の準備は、始まっています。これからもどんなプロモーションで、あっと言わせてくれるのか。楽しみにしたいと思います。

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