歌舞伎を知らない日本人にこの1冊を。書評「ビジネスマンへの歌舞伎案内」(成毛 眞)

本書「ビジネスマンへの歌舞伎案内」は、「ビジネスマンこそ歌舞伎を観るべき」と題して、初心者には理解し難い歌舞伎の世界をわかりやすく解説し、知らないと恥ずかしい常識から、教養として押さえておきたい必須の演目、ビジネスにも役立つちょっとした知識まで、著者自身の体験をおりまぜながら、豊富な知識を交えて語られている1冊です。

敷居が高い歌舞伎の世界

僕は、1年に1回フジテレビで放送される中村勘三郎さん(中村家)のドキュメンタリーが大好きです。歌舞伎という伝統芸能を守る覚悟、守りつつ新しい道に挑戦する姿、そして家族と中村家一座として働く人同士の絆。毎年毎年観ていて胸が熱くなるドキュメンタリーで、楽しみに観ております。

でも、僕が歌舞伎を観に行ったことがあるのは、1度だけ。高校時代に社会体験として行っただけです。実は、平成中村座が上演されていた時、一度観に行こうとしたのですが、日程が調整できず断念しました。中村勘三郎さんが亡くなったとはその後だったので、あの時観に行っておけばよかったと後悔したのをよく覚えております。

興味があるのに歌舞伎を観に行かない要因は、自分にとって敷居が高いと感じていたからです。お話は分からないし、歌舞伎のルールというか、決め事も分からない。観に行っても、楽しめないんじゃないのか。そう感じていたのです。でも、本書を読んで、その考えは変わりつつあります。歌舞伎を知らないのは、日本人としてまずい。読み終えて、そんな気持ちを抱きました。

歌舞伎はビジネスとしても成立している

また、本書を読んでいて驚いたのは、歌舞伎は松竹という東証一部企業が運営しているエンターテイメントだということです。国が芸能を支援しているのではなく、あくまで企業が運営し、常に観客を動員し、興業を行うことで利益を獲得し続けたからこそ、伝統芸能として発展していったということに、改めて驚かされました。ちなみに、歌舞伎が上演される歌舞伎座も、株式会社歌舞伎座という東証二部上場企業です。

本書では、歌舞伎座で提供されるきめ細やかなサービスや、歌舞伎座という施設が歌舞伎を楽しむために、いかに考えぬかれて作られた施設なのか、詳しく紹介しています。そう考えると、歌舞伎という芸能がどう発展してきたか知ることは、ビジネスにも通じる点が多い気がします。

本書を読み終えても、正直言うと、歌舞伎のことがよくわかったとは、言い切れない自分がいます。でも、これだけは分かりました。歌舞伎が長年にわたって日本人に親しまれてきたのは、理由がある。その理由を知ることは、決して損ではない。そして、知るには歌舞伎の世界に飛び込むしかない、と。

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