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書評「決定力を鍛える―チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣」(ガルリ カスパロフ)

   

ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう」という書籍は、マンチェスター・シティの監督を務めるペップ・グアルディオラとある人物との対話からスタートします。ある人物とは、ガルリ・カスパロフ。15年もの間チェスの世界チャンピオンのタイトルを保持し続けた人物で、IBMの「ディープ・ブルー」と対決したことでも話題になりました。現在は政治家に転身しましたが、チェス界では伝説的な人物です。

「決定力を鍛える―チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣」は、ガルリ・カスパロフがこれまでチェスの対局を通じて得た、知恵・経験・教訓について、自身の経験だけでなく、マイクロソフト、ボーイングの戦略を分析し、チャーチルや孫子の思想を引き、軍事史を繙いて、その知識を仕事や人生全般にどう活かすかを問いかけた1冊です。

チェスから学ぶ生き方の秘訣

「決定力を鍛える―チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣」には、チェスから学んだカスパロフの戦略、戦術、読み、才能、分析といった考えが書かれています。どの言葉も示唆に富んでいて面白いので、一部を紹介したいと思います。

大きな成功をおさめている棋士は、読みの根拠をあくまで戦略プランに置く。ガイドとなる戦略があれば、最大の効果と最大の速度は相互に排他的にな貼らず、双方を備えた分析が可能になる。戦略家はまず遠い未来のゴールを設定し、そこから現在へと逆向きに考える。グランドマスターが最善の手をさせるのは、十手か二十手先の盤上に見たい展開を根拠にしているからだ。

長年にわたるわたしの成功がもたらした興味深い副産物なのか、対戦相手の中には型破りな手筋でゲームを独創的な方向にもっていこうとする者がいた。そうすれば私の豊富な経験を無効にできるし、異例の局面に対する備えならば負けないと不踏んだのだろう。こうしたプレーヤーの多くが気づいたはずだが、問題はほとんどの場合、そういった考え方にはまともな根拠がない点にあった。革新性という美点が不適切という欠点を相殺することは、ごくまれなのである。

“なぜ?”こそは、職務を果たすものだけのモノと先見性のある者を、単なる策士と偉大な戦略家を分かつ問いである。自分の戦略を理解し、発展させ、そのとおりに実行したいのなら、たえずこの問をいだかなければならない。

私たちはみな、分析と経験を組み合わせて決断の基準にする。ねらいとするのは、そのプロセスを認識して、よりよい決断を下せるようにすることだ。そのためには視野をひろげ、戦術上の決断がもたらす結果を評価できるようにしなければならない。言い換えると、戦術を正しい方向にとどめるために戦略が必要なのである。

長期的に見て危険なのは、悪い戦略がよい戦術やまったくの幸運のために成功するケースだ。一度はうまくいくとしても、二度起きることはめったにない。だからこそ、成功にも失敗と同様に厳しく問いを投げかけることが重要である。

指し手を検討する歳、私が最初にするのは、ただちに決定木を下っていくことではない。まずやるべきは、その局面における全ての要素を考慮し、戦略を構築して中間目標を立てることだ。そうしたすべてのファクターを念頭に置いたうえで手筋を読み始めれば、どの結果が好ましいかわかる。

周到な準備の期間は、苦労して導いた手筋を使わなかった時にも好結果で報われていたのだ。努力と成績のあいだには、直接のつながりはなくとも、魔術的といえる相関関係があった。

今日、気晴らしになるものは無限に等しく、コンピュータ化した世界では誰もが即席の娯楽を手に入れられる。さまざまな機器などを使えば、時間を浪費する方法は一ダースもあるだろうが、たいてい何の実にもならない。私たちの発展に役立つ深い戦術的なものでなないのである。

意思決定プロセスを改善することは母国語を学ぶのに似ている。それまでの人生でずっとやってきたことを改善するには、無意識にしていることを意識的に変えなくてはならない。

解決策や革新的な案が、まるで天から振り分けられるごとく、ふさわしい時期にふさわしい人物からもたらされるということではない。創造性は努力と目的意識を通じて手に入れる事が出来るのである。

優れた解決法を見つける鍵は、まず問題を正確に認識することだと、どの科学者も言うだろう。

生き残るための唯一の方法は、ピラミッドをのぼりつづけることだ。麓にとどまることはできない。そこでの競争は熾烈をきわめるからだ。

ここで紹介した以外にも、たくさんのよい言葉が本書には詰まっています。カスパロフの本を読んで学んだのは、自分が感覚として理解していることを、言葉に置き換える事によって、より物事に対する理解が深まるのだという事です。感覚は感覚としておいておくのは大切ですが、言葉に置き換えることで、再現性を高めるだけでなく、次の感覚をつかむために、前に進む一歩を踏み出す手助けになるんじゃないか。そんな事を考えました。

ぜひ多くの方に読んで頂きたい1冊です。

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