名古屋グランパスのサポーターに知ってもらいたい、風間監督のサッカーを理解する基本的なポイント

2017年シーズンの名古屋グランパスの監督に、風間八宏さんが就任しました。川崎フロンターレでは約4年半にわたって監督を務め、2016年シーズンではファーストステージ2位、セカンドステージ3位、年間順位は鹿島アントラーズに敗れ3位(勝ち点では2位)、天皇杯は2位という結果を残しました。

それ以上にサッカーファンの印象に残ったのは、川崎フロンターレのサッカーです。ボールを保持し、相手が人数を割いて守るペナルティーエリア内にいとも簡単に侵入し、ゴールを挙げるサッカーは、多くのサッカーファンを魅了しました。川崎フロンターレの観客動員数が、風間監督の就任後に増えていったのは、メインスタンドの改築終了やプロモーションの効果だけでなく、サッカーも要因だったと思います。

メディアでは、よく「風間監督のサッカーは特殊」と語られることがあります。しかし、僕にとっては、風間監督のサッカーは特殊ではありません。風間監督のサッカーが特殊と言われるのは、他の監督のサッカーとは基準や切り口が少し違うからです。この記事では、風間監督がよく使用する言葉の意味を解説しつつ、風間監督のサッカーへの理解を深めるために、基本的なポイントを紹介したいと思います。名古屋グランパスのサポーターにとっては、風間監督のサッカーへの理解を深める手助けになると思いますし、川崎フロンターレのサポーターは、復習もかねて読んでみてください。

フリーの定義

風間監督の言葉でよく使われる言葉が、「フリーの定義」です。よく風間監督は、日本代表から選手が帰ってくると、「日本代表とはフリーの定義が違うから、元に戻るまで時間がかかる」という事を話していました。では、風間監督が語る「フリーの定義」とはどういう意味なのでしょうか。

一般的に「フリー」という言葉が使われる時は、「敵が周りにいない状態」の事を指します。しかし、風間監督が考える「フリー」とは、「自由にプレーできる状態」と事を指します。周りに敵がいても、そのプレーヤーが自由にプレーできる状態で、ボールがとられないと考えるのであれば、それは「フリー」という状態です。例えば、メッシが2人の守備者に囲まれていても、メッシが「この2人にボールを取られないし、関係なくプレーできる」と考えていて、実際にそうプレー出来るとしたら、それは「フリー」な状態です。

相手が近くにいても、ボールを取られない場所にパスを出して、味方が受けられれば問題ない。守備者が周りにいても、ボールを奪われない状態なら、パスを出してもよい。この考えは当たり前なのですが、最初は理解するのに時間がかかるかもしれません。なぜなら、フィールド中央で守備者が近くにいる選手より、サイドで敵がいない選手にパスを出したほうが、よい選択だと思えるからです。

しかし、サイドにパスを出すということは、ゴールから遠ざかるという事を意味します。ゴールはフィールドの中央にあります。方法はどうであれ、結局最後はボールをフィールド中央に運ばなければなりません。中央は当然守備者がたくさんいますが、守備者を避けてばかりでは、ゴールは生まれません。そこで大切なのは、「フリーの定義」だというわけです。

この言葉は、折に触れて頻繁に登場するので、覚えておいて損はないと思います。

パスサッカーなんてサッカーはない

就任記者会見でも語っていましたが、風間監督は「ポゼッションサッカー」や「パスサッカー」という言葉を使ったことはありません。それは、風間監督がサッカーというスポーツをよく理解しているからです。

サッカーにおいて、「パス」とは、ボールを相手ゴールまで運んだり、ボールを相手に奪われないための手段です。「ポゼッション」とは、ボールを保持している状態の事を指します。そもそも、「サッカー」とは、相手よりボールをゴールに多く決めたチームが勝つスポーツです。そして、「パス」とは「ゴールを挙げる」「相手にゴールされるチャンスを防ぐ」ための手段であり、目的ではありません。また、「ポゼッション」することで、相手から攻撃される事はありませんが、ゴールを挙げられるかどうかは、その後のボールの動かし方にかかっています。

つまり、「パスサッカー」「ポゼッションサッカー」とは、手段を目的と取り違えて言葉を使っている例であり、風間監督が意図しているサッカーを表現している言葉とは、全く違うのだということを、覚えていて欲しいと思います。

ただ、風間監督はボールを保持することを大切に考えているのは間違いありません。なぜかというと、ボールを保持している方が、ゴールを挙げる権利があり、ゴールを奪われないからです。サッカーにおいて、ボールを保持しているということは、「攻撃する権利を持っている」という事です。どう攻撃するか、チャンスの回数を増やし、成功率を高めていくためのサッカーを志向していくことで、相手のチャンスの回数を減らし、成功率を減らすことで、結果的に相手よりゴール数で上回って勝利する。それが、風間監督が考えるサッカーです。パスを何本つなごうが、どうでもよいのです。パス1本でも、ゴールはゴール。よく「横パスは1本もいらない」という事もあります。

こんな考え方からも、風間監督はサッカーの原理に忠実に考え、サッカーを組み立てている事が伝わってきます。そもそも、サッカーとはどんなスポーツなのか。そこに立ち返って考えると、風間監督の志向するサッカーがよく理解出来ると思います。

目を揃える

風間監督は、よく「目を揃える」という言葉を使います。以前「川崎フロンターレがチーム作りで実践した「目を揃える」ということ」という記事を書いたことがありますが、ここで語られている「目」とは、サッカーを判断するための基準、ととらえて頂いても良いと思います。この「目」を高い基準で揃えることで、プレーの質を向上させていくのが、風間監督の考えるサッカーの基本です。

まずは、チームづくりのスタートとして、「目を揃える」ことから始めると思います。それは、前述の記事でも書きましたが、選手やコーチだけではありません。サポーターもです。特にサポーターの目が最初は揃っていないので、最初の何試合かは、従来の基準で考えると考えられないプレーもあると思います。この「目」を揃えるために必要なのが、「フリーの定義」なのです。まずは、チームが目指すこと、考えている事の基準をきちんと理解することが、サポーターにも求めらています。

川崎フロンターレで風間監督のサッカーが時間がかかったのは、この「目を揃える」のに時間がかかったからです。その理由としては、風間監督がシーズン途中で就任したこと、スタッフの中に風間監督の基準が理解出来る人がおらず、選手だけでなくスタッフも教育しなきゃいけなかったこと、サポーターの目を揃えるのに時間がかかったことが、軌道に乗るまでに時間がかかった要因です。そして、川崎フロンターレというチームが目指す「攻撃的サッカー」を定義し、基準をアカデミーにも浸透させることも、風間監督のミッションでした。時間がかかって当然です。

僕は、川崎フロンターレのときより、「目を揃える」のは時間はかからないと思います。川崎フロンターレの就任当初は、中村憲剛以外の選手は、風間監督の事を訝しげにみていました。しかし、今回は川崎フロンターレの実績があるので、そんな事はありません。また、スタッフも川崎フロンターレから風間監督の下で仕事をしていた人を連れてきました。一からスタッフを教育する必要はありません。そして、何よりJ2のシーズンということで、選手もスタッフもサポーターも、よい意味でハングリーな状態です。風間監督は、以前「最初の半年が大変だった」と語っていたことがありますが、今回はそこまで大変にはならないと思います。

繰り返しになりますが、風間監督のサッカーは特殊だと言われる事がありますが、僕にとっては特殊ではありません。風間監督のサッカーは、サッカーというスポーツの原理に忠実に従い、合理的に目的を実践するために、何をすべきか考えて行われるサッカーです。ぜひ、名古屋グランパスのサポーターは期待していて欲しいと思いますし、川崎フロンターレのサポーターは鬼木新監督就任後も、培ったものを忘れずに、チームを見続けて欲しいと思います。

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