書評「たった一人の熱狂」(見城徹)

以前、三浦知良さんが「ストライカーという仕事はどんな仕事か?」と聞かれて、こう答えていました。

自分の一手、つまりゴールで、白を一瞬にして黒に逆転することができる、そういう仕事だ。

ストライカーとは、孤独な仕事です。チームの勝敗を託され、ゴールを決めればヒーローですが、決めなければ真っ先に叩かれます。「あいつは終った」「あいつは変わった」「あいつはダメだ」そんな周囲の喧騒をエネルギーに変え、目の前のDFの時には嫌がらせとも思えるようなタフな守備をかいくぐって、ゴールを決めるのは簡単ではありません。周りの人に何を言われても、1つのゴールがすべてを変えると信じて、努力を続ける人にしか、ヒーローにはなれません。

ストライカーの仕事を思い出したのは、この本を読んだからです。本書「たった一人の熱狂」は、幻冬舎の社長を務め、数多くのヒット作を編集者として世に送り出してきた見城徹さんが、「755」で語った熱い言葉まとめた1冊です。

圧倒的な努力とはなにか。

見城さんが過去の著書でも、極端で、熱い言葉をたくさん残してきました。本書にも、過去の著書と同様に、熱く、経験に基いた言葉が、数多く収められています

僕の口癖は「これほどの努力を、人は運と言う」だ。
(中略)
圧倒的な努力とはなにか。人が寝ている時に寝ないで働く。人が休んでいる時に休まずに働く。どこから手をつけたらいいのか解らない膨大なものに、手をつけてやりきる。
(中略)
こうした圧倒的努力は、当然のことながら苦難を極める。辛さでのたうち回り、連日悪夢にうなされることもしばしばだ。だが、僕は圧倒的努力をやめない。覚悟を決め、自分がやるべき仕事と対座する。憂鬱でなければ、仕事じゃない。毎日つらくて、毎日憂鬱な仕事をやりきった時、結果は厳然と現れる。

僕にとって、1日の終りは毎日が後悔だ。何もかも自分の思い通りになった日など、これまで1日としてない。

自分の身を切らず、自分の身を傷めずして、安全地帯で身を守りながら「キャラを立たせたい」と言ってもどだい無理な話だ。

賛成する人がほとんどいない、大切な真実

僕が本書を読んでいて思い出したのは、「Zero To One」という本の著者で、Facebookの外部投資家を務めるピーターディールの言葉です。ピーターディールは、人材を面接する時に必ず聞く言葉があるそうです。それは、「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」です。

「大切な真実」がありがちな答えなら、それは人まねでしかありません。だからといって、あまりに現実離れした仮説を言われても、それはそれで面白くありません。これは答えがある質問じゃない。大切なのは、自分の頭で考えた答えがあるかどうかであり、時が流れても、環境が変わっても、変わらない「大切な真実」を考え続けられるかどうか大切なのだ。ピーターディールは「Zero To One」の中でそう語っています。

「賛成する人がほとんどいない、大切な真実」。これは、本書のタイトル「たった一人の熱狂」と共通しています。どんな変革も、どんな名作も、最初は個人の思いつきから始まります。思いつくのは、誰でも出来ます。しかし、誰でも出来ることを、人にわかるようなレベルまで磨き上げ、理解してもらえるまで努力を続けられる人は、ほんの一握りです。大抵の人々は、途中で諦めてしまいます。

孤独を感じても、やる

見城さんが成功を収めてきたのは、他の人がやらないことを、地道に、人知れず、人が休んでいる間に、コツコツと積み上げたからです。人がやらないことをやるのは、簡単ではありません。アイツは何をやってるんだ。アイツは付き合いが悪いやつだなど、周りの人は人と違う事をやる人の足を引っ張ろうと、あらぬことを言ってきます。周りの楽しそうな声や姿に目もくれず、辛い仕事をするのは、本当に辛いことです。こうした経験を積み重ねていくと、人は孤独を感じます。でも、やらなければなりません。

圧倒的な努力は、誰でも出来ることではありません。でも、自分自身どうしても譲れないもの、意識しなくても続けているものなど、心の拠り所にしているものならあるはずです。見つけるには、徹底的に自分自身と向き合って、辛くても自分自身の声に耳を傾けるしかありません。

しかし、孤独と引き換えに得られるのは、圧倒的な成功です。ただ、孤独を引き換えにしても、必ずしも成功が得られるわけではありません。それでも、信じてやり続ける。辛くてもやり続ける。そんな一握りの人が、圧倒的な成功を掴み取る事が出来るのだということを、本書は教えてくれます。

おすすめ