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英語が分からなければ、何も学べない「知の高速道路」の時代。書評「世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション」(サルマン・カーン)

   

ふとしたきっかけで観たNHKのドキュメンタリー「あなたもハーバード大へ ~広がる無料オンライン講座~」を観て、僕は大きな衝撃を受けました。

番組で紹介されていた、「MOOC」と呼ばれる誰でも無料で閲覧できるオンライン講座では、オンライン上でハーバード大学やスタンフォード大学といった、有名大学の講義が無料で受けることが出来ます。つまり、今までは留学したり、お金をかけないと学べなかった知識が、無料で学べる環境がオンライン上で用意されているのです。

羽生善治さんは、このようにITを活用した学習環境を、「知の高速道路」と表現しました。現代はあらゆる種類の「知の高速道路」が広がっていることを、ドキュメンタリーは視聴者に突きつけていました。僕は頭では理解していたものの、番組を観て「ここまで学べるのか!」と衝撃を受けました。

オンライン上で閲覧できる無料の講座として有名なのが、「カーン・アカデミー」です。「カーン・アカデミー」は、3000本以上の教育ビデオが登録されているWebサイトで、初等教育から大学レベルの講義まで、物理、数学、生化学から美術史、経済学、ファイナンスまで学ぶことが出来ます。

「カーン・アカデミー」は現在、ビル・ゲイツ財団やGoogleなどの企業からの支援を受け、ますます規模を拡大させています。その「カーン・アカデミー」を創設したのが、今回ご紹介する書籍「世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション」の著者、サルマン・カーンです。

本書「世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション」は、「カーン・アカデミー」のこれまでを振り返ると共に、著者が「カーン・アカデミー」を運営していくうちに考えた「未来の教育論」について書かれた1冊です。

英語が分からなければ、何も学べない

本書を読み終えて感じたのは、これからの社会における英語の重要性です。

「カーン・アカデミー」を実際に試したのですが、英語での講義に慣れていない僕のような人間でも、とてもわかりやすくて、学習が継続しやすい内容になっていると思いました。

ただ、講義の内容は英語です。「カーン・アカデミー」に日本語の講義はないわけではありませんでしたが、ほとんどの講義で使用されている言語は、英語です。ということは、どんなに素晴らしい「知の高速道路」が世界に広がっているとしても、英語が理解出来なければ、その恩恵を受けることは出来ないのです。

これから教育のコストは、益々低くなっていくと思います。なぜなら、これから「知の高速道路」は益々凄いスピードで建設され、整備されていくからです。僕の子供たちは、自分たちが望めば「知の高速道路」に乗れば、短期間で目的地近くまでたどり着くことが出来ます。羨ましい限りです。

しかし、その「知の高速道路」は、条件を満たさなければ入れません。その条件の1つが、英語です。もはや英語は、単なる言葉というよりは、「知の高速道路」に入るための条件の1つであり、言い換えれば”ツール”なのです。

低コストになった英会話

ただ、その英語も、オンライン英会話スクールというサービスが発達したことで、低コストで学ぶことが出来ます。そして、「TED」でプレゼンされている内容は、無料で、かつ字幕付きで、閲覧することが出来ます。つまり、英語という”ツール”を得るコストも、益々下がっていくことでしょう。英語を学ぶためだけの、単なる「語学留学」や「体験留学」にコストをかけるのは、無意味な時代がやって来ているのです。

「知の高速道路」を使えなければ、勝負すら出来ない

では、オンライン上で学習できる選択肢が増えたことによって、どのような変化が起こっているのでしょうか。羽生善治さんは、「知の高速道路」が出来たことによって起きた変化について、以下のように語っています。

ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、
将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。
でも高速道路を走りぬけた先では大渋滞が起きています。

(梅田望夫「ウェブ進化論」より)

大渋滞を別の言葉で言い換えると、競争が激しくなったということです。

これまでは、教育制度が整っていた国でしか受けられなかった教育が、オンライン上でも受けられるようになり、途上国の人々でも学ぶチャンスが増えました。しかし、その一方で、一定量の知識や能力を持った人が世界中で増えたことで、今まで恩恵を受けていた人々(特に欧米や日本に住む人々)は、知らず知らずのうちに、新たに知識や能力を得た途上国の人々との競争に、巻き込まれていくのだと思います。僕も含めて。

だからこそ、僕も「知の高速道路」を利用しつつ、子供たちには「知の高速道路」を利用する方法を教えてあげなければなりません。そうしなければ、競争する場所にすら立てないからです。競争する場所に立った後は、どうするべきか。それは本人次第です。

今までは、「お受験」や「留学」が、競争する場所に立つための手段だったのかもしれません。しかし、本書を読んで実感しました。「競争する場所」に立つ手段が、明らかに変わったことだということを。この流れは益々加速していくことでしょう。だからこそ、今後の流れを知るために、本書をぜひ一読しておくことをオススメします。日本語訳も素晴らしく、非常に読みやすい1冊です。

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