“検索”しても調べられないコトがある。書評「「調べる」論―しつこさで壁を破った20人」(木村俊介)

2013/01/30

「調べる」論―しつこさで壁を破った20人 (NHK出版新書 387)

「調べる」とはどのような行為を指すのだろうか。
Googleの登場により、インターネットを使って様々な情報を「調べる」事が、手軽にできるようになった。実際、僕も美味しいお店や行きたい場所の道順など、様々なことをインターネットを使って、調べている。しかし、本当にこういった行為を「調べる」というのだろうか。

本書は、「調べる」という行為について様々な仕事をしている20人に、「調べる」ことについてインタビューという形式で「調べる」ことをした1冊です。

「調べる」ことで「真実」に近づく

本書には、様々な仕事をしている人々が登場する。暴力団関係の記事を書くフリーライター、医者、社会学者、ヒューマンエラー研究家といった職業を担当している方も登場する。当然調べ方も対象も異なる。

僕が最も印象に残ったのは。文化人類学者の渡辺靖さんの言葉です。渡辺さんは「調査がまとまる時期」について、このように語っている。

調査がまとまる時期はいつか?不思議なもので、ある瞬間にパッと出てくるんです。

(中略)

厳密に言えば、この要素に関してはまだまだ調べ足りないなんてこともある時期にでも、その瞬間が来ると、もういいんじゃないのかな、となる。

(中略)
どこまで調査するのか、この膨大なデータから何をどうまとめようかという時には、ふと「降りてくる」ものがあるんですよね。

僕は「調べる」という言葉の意味を、「わからないことや不確かなことを、いろいろな方法で確かめる。調査する。研究する。」と捉えていました。それは間違ってはいないと思います。しかし、渡辺さんの言葉を読んだ時、僕は「わからないことや不確かなことを、いろいろな方法で確かめる。調査する。研究する。」行為だけでは、「調べる」という行為は完結しないんじゃないか、と。

たしかに「調べる」のは人やモノ(データ)なのかもしれませんが、人やモノを通じて本当に調べているのは、結果だけではなく結果のさきにあるものを調べたいんじゃないか。言い換えると、絶対的な答えとなるもの。すなわち「真実」に近づき、解き明かそうとしているんじゃないか。本書を読んで、そんな事を考えてしまいました。

「調べる」こととは何か。

Googleでキーワードを入力するという行為は、「調べる」という行為をとってはいるが、上ずみをすくい取っているだけで、本当に「調べる」ことをしているわけではない、と思えてきます。

冒頭にも書いたが、Googleの登場により、インターネットを使って様々な情報を「調べる」事が、手軽にできるようになった。しかし、本当に調べたいことを「調べる」には、Googleでは調べられない。本書を読んでいると、改めてそんなことに気付かされます。

最後に、本書の「はじめに」に掲載されている、著者の「仕事の話」という書籍から紹介された心臓外科医の言葉を抜粋して紹介します。

留学から帰ってくる頃、ドイツの恩師に、ぼくは言葉をくださいと言ってノートをだしたことがありました。

すると、先生が書いてくれたのはドイツ語で「人に頼るな。

これ、当時三十二歳のぼくには、「孤独に頑張れってことかな」としか思えなかった。でも、今ならこの言葉の意味がわかります。

味のある言葉でね、これは「自分の中にしか結論はない」ということなんですよ。

(中略)

前に人のいないはじめての場所に入りこむと、そのうちに「問いも答えもない世界に自分はいるんだ」と気づきます。

(中略)

だから、自分で決断をして自分で自分の問いに答えるしかない。

本書は「調べる」という行為が何か、改めて問い直す1冊です。
この本を読んで、あなたにとっての「調べる」とは何か、改めて問い直してみてはいかがでしょうか。

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