現代を生きる人々に、移動しながら生活する「参勤交代のすすめ。」書評「日本人はどう住まうべきか?」(養老 孟司,隈 研吾)

都市集中、過疎。自然喪失。高齢化、そして、震災、津波。21世紀に起こりうる問題を考えたうえで、日本人はどう住まうべきか。本書は、隈研吾と養老孟司の対談をまとめた1冊です。

移動しながら暮らすこと、複数の拠点で暮らすこと

読んでいて面白いと思ったのは、移動しながら暮らすこと、複数の拠点で暮らすことを、2人とも推奨していることです。本書では、「参勤交代のすすめ」という言葉で紹介されていますが、移動しながら暮らす、複数の拠点で暮らすことというのは、高城剛さんもそのメリットを語っていますが、全く違うバックグラウンドをもつ2人が、同じことを語っているのは、非常に興味深く感じます。

なぜ、著者2人は参勤交代をすすめるのか。それは、都市にいるということは、秩序と整理の中にいることなので、そこから外れる時間を作ることで、考え方を変えることが出来るからです。そして、2拠点間で生活をするということは、リスクマネジメントを軽減することにも繋がります。

参勤交代というと、お殿様が国と江戸を行き来していたことを指すため、お金持ちだけが出来る行動のように思いがちです。しかし、江戸時代でも、出羽三山参りやお伊勢参りに参加したり、どこか違う場所に移動するということはあったそうです。ロシアでは「ダーチャ」という別荘を庶民が持っていて、週末は郊外にあるダーチャで暮らす生活を楽しんでおり、ダーチャで野菜を作っていたことで、経済危機を乗り切ったと言われています。

旅行することが仕事

隈研吾さんは「日本人は異常に一つの場所に張り付いている人たち」、「旅行することが仕事」「旅行することで、日本の常識を壊すことが仕事」だとまで語っています。移動しながら暮らす。複数の拠点で暮らす。地方から都市に出てきている人は、定期的に田舎に帰ることでもいいのかもしれません。実家が都市の人は、実家のサポートを受け、頻繁に実家と自分の家を行き来することから始めても、いいのだと思います。

ブラジルに移民した日系人から学ぶこと

ブラジルワールドカップを観ていると、現地で暮らす日系人が紹介されることがあります。100年前に、日本から地球の反対側で暮らす。今のように、飛行機で24時間あれば行けるわけではなく、船で1年がかりで移動したといいますから、大きな決意が必要だったと思います。そして、現地で暮らすようになっても、様々な差別を受けたそうです。しかし、様々な困難に負けず、移り住んだ土地で少しでもよい暮らしをしようとした結果、現地に受け入れられただと思います。

日本人はどう住まうべきか。そのヒントは「参勤交代」という言葉にある気がします。
移動しながら暮らす、複数の拠点で暮らす。自分自身どうやったら実現できるか。きちんと考える必要があるのではないか。改めて考えさせられた1冊です。

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