書評「黄色いマンション 黒い猫 」(小泉今日子)

本書「黄色いマンション 黒い猫」は、小泉今日子さんが十代の頃から親しみ、かつては住んでいたこともある原宿の町を再び歩き、変わり続ける街並に彼女の半世の思い出を重ねながら、9年間にわたって書き綴った自伝的エッセイ集です。

描かれている2つの街の出来事

本書に書かれているのは、家族の話、友達の話、ボーイフレンド(「彼氏」と書かずに、「ボーイフレンドと書いているところが素敵です)の話など、様々なテーマでエッセイが書かれているのですが、本書に掲載されているエッセイ主に2つの街で起こった出来事について書かれています。1つは、原宿。そして、もう1つは、地元「厚木」です。(小泉今日子さんは「厚木I.C」というアルバムを作った事もあります)

本書を読んでいると、厚木にいた頃の小泉今日子さんは、学校をサボったり、複雑な事情を抱えている、もしかしたらどの学校にも1人はいるような少女だったように読めます。一方、原宿の小泉今日子さんは、アイドルとして、どの学校に1人はいるような存在ではなく、テレビなどのメディアを通じて、誰もが知る存在でした。ただ、本書を読んでいると、厚木に住んでいた頃の小泉今日子さんと、原宿の小泉今日子さんには、人目につく舞台にいるという以外は、大きく変わることがなかったのではないかと感じます。

もう1つの街

なお、本書は「厚木」と「原宿」の2つの街について書かれている本だと紹介しましたが、もう1つの街が登場します。それは、「葉山」です。

その頃の私は、いよいよ一人で生きていく覚悟をしていた時期だった。離婚して、猫を買い始めて、数年が経って恋愛も結婚もなんだかとても遠くに感じていた。一人の環境を整えるために都内で終の住処になるような家探しをしていたが、ピンと心の琴線に触れる家に出会えないでいた。

四十三歳から四十六歳まで住んだという、葉山での出来事について書かれたエッセイは、「厚木」の小泉今日子さんでもなく、「原宿」の小泉今日子さんでもない、今の小泉今日子さんの心境が素直に綴られています。

五十代に突入した私には残された時間が少ない。(中略)これからどう生きるのか?それが問題である。健康でいたいとも思うし、いい仕事をしたいと思うし、女としていつまでもキレイでいたいとも思うし、恋愛や男という難題に再び向き合うことにもチャレンジするべきだとも思う。結局、修行は続いているのだ。きっと死ぬまでずっと修行は続くのだろう。だから人は考えることを止めないし、だからこそ人生は楽しいのだ。神様だって苦行ばかりを強いたりしないはずだもの。

若い頃は勢いで物事を進められるし、苦しい事も乗り越えられます。しかし、年齢を重ね、経験を重ねると、勢いだけで物事を進めるのは難しくなります。体力も少しずつ衰え、20代と同じように出来るわけではありません。いろいろ悩んでいた時に本書を手に取り、少し勇気づけられたような気がしました。特に女性におすすめしたい1冊です。

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