相手への献身、友情、自らの信ずるものへひたむきに進んでいく熱意。「ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ」

天空に浮かぶ伝説の島「ラピュタ」を巡る冒険活劇、「天空の城ラピュタ」。「天空の城ラピュタ」はいかにして生まれたのか、「天空の城ラピュタ」を観た人はどんな影響を与えたのか。稀代の冒険活劇の裏側をていねいに解説したのが、本書「ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ」です。

「天空の城ラピュタ」の魅力を表した、宮﨑駿の企画覚え書き

宮﨑駿監督は、「天空の城ラピュタ」の企画覚え書きに、こんな言葉を記しています。

「天空の城ラピュタ」が目指すものは、若い観客たちが、まず心をほぐし、楽しみ、よろこぶ映画である。笑いと涙、真情あふれる素直な心、現在もっともクサイとされるもの、しかし実は観客たちが、自分自身きづいていなくてももっとも望んでいる、相手への献身、友情、自らの信ずるものへひたむきに進んでいく少年の熱意を、てらわずに、しかも今日の観客に通ずる言葉で語ることである。

「天空の城ラピュタ」の魅力は、この企画覚え書きに書かれた少年像に尽きるのではないのでしょうか。そして、少年と引き合う少女も同じ魅力を持っていることが、その魅力を何倍にも高めてくれていると思うのです。

作品の魅力を地でいく製作者たち

「ジブリの教科書」シリーズで楽しみなのは、鈴木敏夫さんによる作品解説です。

意外な理由で始まった「天空の城ラピュタ」制作の経緯、「天空の城ラピュタ」を制作するために設立した「スタジオジブリ」、そして休眠会社を基に設立したため、3,600万円くらいの借金を抱えてスタートした「スタジオジブリ」など、ここでしか読めないエピソードが満載です。

個人的には、音楽についてのエピソードが印象に残りました。当初、「天空の城ラピュタ」の音楽は、宇崎竜童さんに依頼する予定だったのですが、高畑勲さんの判断で久石譲さんになったというエピソードは、僕も知りませんでした。もし久石さんが引き受けなければ、名曲「君をのせて」は生まれなかったかもしれません。

ちなみに、「君をのせて」は、宮崎さんが主題歌についてイメージしていたメモを、高畑さんが整理して歌詞を作ったというエピソードがあります。このエピソード通りなら、作詞に高畑さんがクレジットされてもいいのかもしれませんが、高畑さんはクレジットされることを断ります。

宮﨑駿監督のためにスタジオジブリの設立に尽力する鈴木敏夫さん、自らがクレジットされないのに「君をのせて」の作詞をサポートした高畑勲さんの姿は、よく考えると、「天空の城ラピュタ」で描かれている少年の姿そのものです。少年の姿を地でいく人々によって描かれた映画だからこそ、映画にリアリティがあり、長い間人々に愛される作品になったのではないか。そんな事を改めて感じさせてくれる1冊です。

関連商品