創意工夫をこらして生きることの楽しさ。書評「僕らの時代のライフデザイン 自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方」(米田智彦)

僕らの時代のライフデザイン

本書を読む前にびっくりしたことがあります。それは、本書がダイヤモンド社から出版されていたからです。ダイヤモンド社は経済やビジネスに関する書籍や雑誌を出版している雑誌なのですが、スーツ着て満員電車に乗って出勤するビジネスマンがターゲットユーザーだと勝手に思っていたので、こういう本は出さないと思っていました。本書をダイヤモンド社から出版されたということに、時代の流れと、ビジネスマンが求めている情報の変化を感じます。

本書には「ノマドトーキョー」という1年間家やオフィス、家財道具を持たずに暮らすプロジェクトのことも書かれているので、オフィスをもたない働き方を紹介する書籍と思われがちだが、それだけではありません。本書は、テクノロジーの発達に伴い、働き方や暮らし方に変化が訪れていること、そしてそれをどのように実践していけばよいのか、ということをメリット・デメリットも含めて紹介しています。それが他の「働き方」「暮らし方」の書籍と大きく違う点だと思いました。

”複数のアカウントを持つ”

本書に書かれていた、”複数のアカウントを持つ”という考え方は凄く共感出来ました。アカウントは”顔”とも言い換えられると思うのですが、現代に生きる人々は、仕事や家庭の顔以外にも、ソーシャルメディアでの顔をもっています。そして、ソーシャルメディアのアカウントを、仕事中とは別のキャラクターとして使う人もいます。

ソーシャルメディアが発達するまで、仕事や家庭以外の顔を持っている人は多くありませんでしたが、現代では複数の顔を持つことが簡単になりました。最近、”副業”ならぬ””複業”をすすめる書籍や記事を多くみかけるのですが、僕は単純に仕事を増やすことについては、疑問に思っていました。なぜなら、仕事を増やすことがきっかけで充実した人生をおくれればいいのですが、今の仕事を楽しめていない人にとって、さらに仕事を増やすことは辛くなるだけじゃないかと思ったからです。

だからこそ、本書に書かれていた、”複数のアカウントを持つ”という考え方が重要なのだと思います。休日にコンビニでバイトするのではなく、子供のチームのコーチをやったり、プロボノなどのボランティア活動をやったり、家庭菜園をやる。あるいは、平日は都心で暮らすけど休日は郊外で過ごす、といったように複数の場所や活動の場所、つまりは”アカウント”をもつことによって、より充実した生活をおくることができるというのです。

「買う」のではなく「作る」

最近観た「水曜どうでしょう」のDVDの副音声で、鈴井貴之さんと藤村さんが「自分で家を作る」ということの重要性について語っていました。要約すると「ちょっと昔は、家というものは自分で修理したり、壁を塗ったりしたりしていた。実際にやってみると、そんなに難しいことじゃない」ということを語っていたのですが、本書を読んでいて、”自分で作る”ということが凄く重要なのだと感じました。

僕自身、「作る」ということより「買う」ということにばかり考えがおよんでいて、お金を払わないと家が直せなかったり、食べ物が手に入らなかったり、と思っていました。しかし、よく考えると、床の張替えも壁の塗装も自分でやろうと思えばできるし、ホームセンターに材料は売ってます。野菜も作ろうと思えば、作れます。

確かに、お金を払ってサービスを受けて、問題を解決するほうがよいケースもありますが、本書を読んで、自分自身は「お金を払って問題を解決する」という選択を選びすぎていたのではないか、と反省しました。

ライフデザインの時代

本書を読み終えて、改めて考えたのは「ライフデザイン」という言葉の意味です。自分自身の人生をデザインする。菅付雅信さんは「デザイン」という言葉を「編集」と言い換えていましたが、自分自身の人生を、自ら思い描いて、取捨選択した上で生きる。時代の波に翻弄され、不本意なことがあっても、精一杯生きる。現代の日本はこのあたり前のことが、改めて問われている時代なのだと思います。

誰かと同じことをやっていれば、一定の生活水準を維持できて、楽しい人生をおくれるという時代ではない。だからこそ、自分の出来る事を都度取捨選択し、複数のアカウントを使いこなしながら、創意工夫をこらして生きていかなければならない。

その事を強く感じさせてくれた1冊です。

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