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好きなだけじゃ仕事は出来ない。書評「仕事の小さな幸福」(木村俊介)

      2014/05/24

僕は著者の本が好きです。著者は、様々な職業の方から仕事に関する声を拾い上げ、1冊の本にしています。

著者の本には、「こうするべきだ」「こうあるべきだ」という自己啓発本にありがちな、安易なあるべき論や結論は書かれていません。常にインタビューを通して描かれているのは、悩み、苦しみながらも、なんとか道を切り開こうとする人の姿です。これまで、料理人、作家、書店員など、様々な仕事に従事する人のインタビューを読んできましたが、いつも同じです。

本書「仕事の小さな幸福」は、様々な業界で活躍する18人に、大きな成功や成果ではなく、日々の仕事から得られる「小さな幸福」についてのインタビューをまとめた1冊です。大きな成功や成果ではなく、「小さな幸福」についてインタビューをしているところが、著者らしいです。

インタビューしている18人のラインナップはこちら。

  • クリエイティブ・ディレクターの箭内道彦さん
  • 小説家の角田光代さん
  • 小説家の津村記久子さん
  • 起業家・デザイナーの山口絵理子さん
  • 小説家の池井戸潤さん
  • 写真家の古賀絵里子さん
  • 投資家・NPO法人理事長の慎泰俊さん
  • プロポーカープレイヤーの木原直哉さん
  • 小説家の安部龍太郎さん
  • 経済学者の柳川範之さん
  • 小説家の三上延さん
  • イラストレーター・ライター・漫画家のきたみりゅうじさん
  • アニメーション映画監督の新海誠さん
  • 小説家の伊集院静さん
  • 地球生物学者の高井研さん
  • 小説家の中村文則さん
  • 元プロ陸上選手の為末大さん
  • 陸上選手の佐藤真海さん

好きだけじゃ仕事は出来ない。

印象に残ったのは、伊集院静さんのインタビューです。伊集院さんは、仕事に対する姿勢について以下のように語っています。

「自分に合う仕事がなかなか見つからない」なんて口にするけれど、
ある個人に合う仕事なんて、そもそも世の中にはほとんどないんですよ。
私だってものを書くのが好きか嫌いかで言ったら、
そりゃ嫌いに決まってるんだ(笑)。」

「好きなことを仕事にしよう」という声をよく聞くようになりました。その言葉の裏には、「好きなことならより能動的に仕事に取り組める」という意図があるような気がしますが、僕は必ずしもそんな事はないと思います。能動的に仕事に取り組んだり、仕事における自分の課題を克服するためのエネルギーは、「もっと上手くなりたい」とか、「悔しさ」とか、必ずしも「好き」とは違う、むしろ、ストレスや反骨心と呼ぶべきマイナスのエネルギーの方が、強いと思うのです。

ただ、マイナスのエネルギーだけでは物事を続けることは出来ません。だからこそ、「小さな幸福」が重要なのです。

ちょっと上手く出来た、自分のやりたいことが出来た、ノルマを達成できた、人が喜んでくれた、など。大きな達成感ではなく、「小さな幸福」というべき達成感が、日々の仕事を継続させたり、向上させたりするには、重要なのです。

つまり、仕事の質を高めていくには、「好き」だけでもだめだし、「悔しさ」だけでもだめ。両方必要なのだと思うのです。

小さな幸福の積み重ねの先に未来がある

本書を読み終えて、僕自身の「仕事の小さな幸福」について考えてみました。僕の「仕事の小さな幸福」となっているのは、今日の仕事を無事終えた、お客様が喜んでもらえた、解析したら数値が上がった、昨日までうまくいかなかった所が少し上手く作ることが出来た、といった具合でしょうか。もちろん、このブログを書き終わること、書いたものに対して反応をいただくこと、それも僕にとっての「仕事の小さな幸福」になっています。

僕はタイトルになっている「仕事の小さな幸福」という言葉を目にした時、思い浮かんだのはイチロー選手の「小さいことを積み重ねるのが、とんでもないところへ行くただひとつの道だと思っています。」です。本書に登場する18人の人物は、社会で一定の成功を収めたとされる人物ばかりですが、皆「小さな成功」を積み重ねた結果、今の成功があるのです。結局、積み重ねの先にしか未来はないのです。

読み終えて、自身が抱えているマイナスのエネルギーを、日々「小さな幸福」へと替えて、生きていく。そのために、仕事があるのかもしれない。

そんな事を考えさせられました。

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