これからの日本でどう生きてゆこうか?書評「ひとの居場所をつくる」(西村佳哲)

本書は、「自分の仕事をつくる」「いま、地方で生きるということ」といった働き方に関する著書を書いている著者が、「アクロス福岡」などを手がけたランドスケープ・デザイナー田瀬理夫さんのお話を通じて、人が働き、生きていくための場所をどう作るのか、現在の著者の考えをまとめた1冊です。

本書のまえがきで、著者はこんなことを語っています。

この本を書くにあたって抱いている問いを一言にすると、
「これからの日本でどう生きてゆこうか?」というものになる。

その問いに対する答えはなにか。本書を読み進めていく間、ずっと考えていました。

何が出来るのか

田瀬さんは岩手県の遠野に「Queen’s Meadow Country House」という集落を作り、運営しています。そこでは、6頭の馬がいて、森と田んぼと畑と牧草地に囲まれた敷地で、無施肥・無農薬によるお米の栽培、有機無農薬での豆や野菜の栽培を行っています。

本書を読んでいくと分かるのですが、「Queen’s Meadow Country House」は、「農業をやろう」と考えて作られた場所ではありません。遠野という地域の特性を活かして、何が出来るのか。その事を考え続けて生まれた場所なのです。

モノがなければ作ればいい

不思議なのは、どうやって収益を得ているのかわからないことです。お米や有機無農薬の野菜を栽培していたり、集落の中にはゲストハウスもあるそうですが、どれが収益の源になっているのか、よくわかりません。正直、読み終えた今でも、よくわかりません。

でも、「Queen’s Meadow Country House」の運営はなりたっています。それはなぜか。1つ言えることがあるとすれば、お金に頼らずに運営しているからなのではないのでしょうか。お金とは、お金とモノを交換するための道具です。お金がなければモノと交換できないのだとすれば、モノが欲しければ、作ればいい。もしくは、借りればいい。こういう考え方で運営されているのです。

自分に出来ないことは頼めばいい

そんな田瀬さんの仕事に関する考え方で、印象に残った言葉を紹介します。

自分に出来ないことについて、
出来るようにならなくちゃいけないとは、あまり考えたことがないんです。

まわりを見ると、きれいに図面を書ける人はいるし、
ロジックをまとめるのが上手い奴もいる。
そういうやつがいるんだから平気だと思ったんです。
頼めばいいやと。

出来ないことを出来るようにならなきゃいけない。スキルがなければ、身につけなければならない。現代に生きる人々は、そう言われ続けています。しかし、田瀬さんはそうは考えていないようです。やれる人に頼めばいいというのです。

じゃあ、どうやって仕事をすすめるのか。田瀬さんは、以下のように語っています。

「こういうやり方でいいですか?」と確認を取ってから始める。
やり方を最初に提案するんです。

そういうふうにしているので、基本的にはどれもハッピーに終わる。
役割とやり方がちゃんと決まっていれば、仕事は楽しく出来るんじゃないかな。

これからの日本でどう生きてゆこうか?

冒頭に書かれている「これからの日本でどう生きてゆこうか?」の答えについて、「これ」という答えは、本書には書かれていません。しかし、本書のあとがきに書かれていた以下の言葉がヒントになる気がしています。

田瀬さんたちに、この社会の経済と呼ぶのか資本主義というのか、
金融やら、土地所有制度やら、効率主義やらに、
異議申立てをする気持ちがあるのは確かです。

でも「ここがおかしい」「けしからん」と声高に主張するのではなく、
とても小さな、でも一生懸命に磨いてぴかぴか光るものを、
「ほら、きれいでしょ」と言って差し出してみせている、そんな気がします。

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