スタジオジブリが「思い出のマーニー」で犯した3つのミス

2014/09/30

先日、「思い出のマーニー×種田陽平展」という展覧会に行ってきました。この展覧会は、「思い出のマーニー」の美術監督を務めた種田陽平さんが「思い出のマーニー」の世界観をセットで表現。さらに、セットの中で、映画に使われたイメージ図や絵コンテや背景画が展示されています。

展覧会で特に素晴らしかったのは、セットです。マーニーの部屋に入って、ベッドを見た時は、本当に映画の中に入り込んだような感覚を覚えましたし、映画のクライマックスで登場するサイロのセットは不気味で、背筋が寒くなるような気分がしました。

「思い出のマーニー」は、公開後の興行収入が不調だと言われています。ただ、この展覧会を訪れて、不調と言われるほど、ポテンシャルのない作品ではないとも思いました。ただ、こうも思いました。

スタジオジブリは、「思い出のマーニー」で明らかなミスを犯しているな、と。

今日は、そのことについて書きたいと思います。

距離感を間違えた空間設計

1つ目は、空間設計です。

種田陽平さんが作った背景美術に問題があるわけではありません。種田さんの作った美術を元に、実際に描かれた美術背景に問題があると感じました。これは、展覧会に行かなければわかりませんでした。映画と違うと感じたのは、マーニーの部屋です。セットで作られた部屋の方が、机、ベッド、といった要素が部屋の中にコンパクトにまとまっています。つまり、映画で描かれている部屋より、少し狭いのです。

映画でマーニーが置かれた境遇は、屋敷に閉じ込められたお姫様です。だから、部屋は密閉感があった方がよかったと想います。セットでは密閉感を感じたのですが、映画ではそうなってませんでした。だから、映画で観ると、妙に1人の距離が遠く感じ、生理的に違和感を覚えるのです。

気にならないレベルかもしれませんが、スタジオジブリの映画は、こうしたディテールの積み重ねで世界観が作られています。個人的には、作品の出来に微妙に影響したのではないかと思うのです。今までのスタジオジブリの作品で、こうした美術空間の距離感を間違えるといったことは、ありえませんでした。

子供を呼び込めなかった宣伝

2つ目は、宣伝です。

「思い出のマーニー」は、中高生の女の子がよく観ているそうです。今までのスタジオジブリの作品は、「おとなもこどももおねーさんも」観る作品でしたし、当初「思い出のマーニー」は、特に小さな子どもたちに観てもらう作品にしたい、という意気込みで作っていたのだと思います。

ところが、宣伝は違いました。予告編を観ていると、マーニーと杏奈の心の動きがよく分かるように予告編が作られていますが、あれだと子供は観ないと思います。もっというと、子供を連れて行こうと考えていた親にとって、「思い出のマーニー」は子供には難しい作品じゃないかと思わせてしまうつくりになっていました。もっと、喜怒哀楽を全面に出して、ワクワク楽しい部分を押し出して、予告編を作ってもいいと思いました。

「思い出のマーニー」が子供に受け入れられない作品だとは思いません。なぜなら、展覧会の周辺では、展覧会のポスターを見る度に「マーニー!」「マーニー!」と叫ぶ子供を何人も見かけました。マーニーというキャラクターは、十分子供に受け入れられる要素が詰まった、魅力的なキャラクターだと思います。それだけに、その事を上手く伝える宣伝になっていないのは、残念です。

口ずさめない主題歌

3つ目は、主題歌です。

プリシラ・アーンの主題歌が展覧会で流れていて聴いてみました。よい曲だと思います。美しい歌声に、美しいメロディ。でも、スタジオジブリの映画の主題歌としては、合格点は与えられないと思います。なぜなら、「誰もがすぐ覚えられて、口ずさめる歌」じゃないからです。

スタジオジブリの主題歌は、映画の世界観を踏襲した上で、誰もが口ずさめる名曲ばかりです。「風の谷のナウシカ」、「君をのせて」、「となりのトトロ」、「さんぽ」、「ルージュの伝言」、「やさしさに包まれたなら」、「カントリーロード」、「もののけ姫」、「崖の上のポニョ」、「ひこうき雲」、など。口ずさめば、映画のシーンや世界観が頭の中に浮かんでくる。そんな曲ばかりです。

ところが、今回の「思い出のマーニー」で使われている主題歌「Fine On The Outside」は、歌詞も英語で、主題歌を聞いた人が、簡単に口ずさめる歌ではありません。スタジオジブリとしては新しい事をしたかったのでしょうが、どうしてもこの歌を使いたいのならば、歌詞を日本語にした方が、より多くの人に親しまれる歌になったと思います。

極論を言うと、「アナと雪の女王」との興行収入の差は、主題歌にあると僕は思います。とても、残念です。

「思い出のマーニー」は、過去のスタジオジブリの作品と比較しても、特別劣っている作品だとは思えません。ただ、「思い出のマーニー」では、今までスタジオジブリが決してやらなかったミスを犯していて、その事が興行収入に大きく影響していると思うのです。「思い出のマーニー」は、いい意味でも悪い意味も、スタジオジブリにとって分岐点となる作品だと思います。これから、スタジオジブリがどう変わっていくのか、1人のファンとして追いかけて行きたいと思います。

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