メッシの脱税疑惑で考える、サッカー選手と税金とタックス・ヘイヴン問題

世界最優秀選手賞”バロンドール”を4年連続受賞しているリオネル・メッシについて、スペイン国内で税金逃れを行ったというニュースが報道されています。

報道によると、メッシは父親(メッシの代理人を務める)とともに、2006年から2009年にかけて400万ユーロ(約5億1000万円)以上の税金をウルグアイやべリーズ、スイス、英国に設立された実体のない会社を介し、自身の肖像権によって得た収入を隠した疑いがもたれています。

タックス・ヘイヴンを活用した税金逃れ

このニュースを読んだ時、2つ思い当たることがありました。

1つは、以前から気になっていた「タックス・ヘイヴン」問題です。「タックス・ヘイヴン」とは、法人税や所得税などの税率がゼロか極めて低い国や地域のことで、アップル、Google、スターバックスといったグローバル企業が、「タックス・ヘイヴン」を活用することで合法的に税金逃れを行なっていることが国際問題になっています。追加納税をしたということはメッシの件は合法ではなかった可能性がありますが、複数の国にまたがって税金逃れを行ったという点は、グローバル企業と共通しています。

南米選手が活用するタックス・ヘイヴン「ウルグアイ」

もう1つは、サッカー選手の移籍で度々登場する「ウルグアイ」という国の存在です。実は、ウルグアイは”南米のスイス”と呼ばれ、国際的に認められている税基準を約束しなかった国・地域として、OECD(経済協力開発機構)がブラックリストに入れたことがある国なのです。(現在は解除)

ウルグアイの税制については僕は詳しく知らないのですが、古くからウルグアイの金融機関は南米のお金持ちが資産管理の目的で活用されているそうです。メッシの母国アルゼンチンは経済的に厳しい状況におかれているため、ウルグアイを活用したのは必然の流れだったと推測されます。(一部、高城未来研究所発行「Future Report」Vol.030/Part1を参照)

ウルグアイを経由して移籍し、税金逃れを行ったフッキの移籍

ウルグアイを経由した税金逃れについては、日本サッカー界も関係しています。

有名なエピソードとしては、現在ゼニト・サンクトペテルブルクに所属しているブラジル代表FWフッキが、2008年7月に東京ヴェルディからFCポルトに移籍したとき、ウルグアイの「C.A.レンティスタス」という2部のクラブを介して移籍したときのことです。

なぜ、ウルグアイの2部のクラブを介したのかというと、ウルグアイは移籍金に税金がかからないからです。フッキと代理人は、FCポルトからの移籍金9億3000万円をウルグアイのクラブを通すことで税金逃れを合法的に行い、移籍金は代理人と仲介した「C.A.レンティスタス」に入り、東京ヴェルディには移籍金はほとんど入らなかったと言われています。

現在も行われている手法なのかはわかりませんが、メッシが税金逃れを行ったとされる2006年から2009年の頃は、フッキのような移籍は他にもあったと言われています。また、メッシの場合、当時アルゼンチンは深刻な経済危機にあったこともあって、母国に資産をおいておくよりは、ウルグアイを含めた複数の国に資産を分散させた方が安全と考えたとしても不思議ではありません。

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国家が狙いを定めるサッカー選手の資産

冒頭にも書きましたが、今回のメッシの税金逃れの件についてのニュースを追っていくと、メッシの行ったことが合法的だったかどうかは別にして、アップルやGoogleの例と同様に、欧米諸国が税金に対して非常に神経質になっていることが伺えます。

フランスでは100万ユーロを超える所得者を対象に75%の税金をかけるという増税策を提案していましたが(後に”違憲”と判断される)、人口の増加や社会福祉の整備に財源が必要な国家にとって、グローバル企業や高所得者の資産は、格好のターゲットと言えます。

したがって、今回のメッシの件は単なる有名人の税金逃れの話題というだけにとどまらず、高額所得者に対して国家が厳しく税金を徴収していく、という姿勢を表明したものだと言えます。

あるいは、国家として断固とした姿勢をみせることで、財政危機に瀕するスペイン国民の気をそらそうとしているのかもしれません。考え過ぎでしょうか。

実は「サッカー選手と税金」という問題は、リーグの力関係にも大きな影響を及ぼしています。
その点は次回の更新で紹介したいと思います。

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