nishi19 breaking news

スポーツでもっと楽しい未来を作る

ACミランを15年支えた知られざる日本人トレーナーの物語。書評「ミランの手 ACミランメディカルトレーナー遠藤友則」(小松孝 )

   

イタリアサッカーの名門、ACミランには試合に出るためには、あるチェックを受ける必要があるそうです。そのチェックとは、仰向けに寝て、足の裏を固さや、膝、股関節、腰の固さを触ってチェック。時間にして3分ほどのこのチェックは「Endocheck」と呼ばれています。

チェックしているのは、日本人トレーナーの遠藤友則さん。1999年に当時清水エスパルスのトレーナーを務めていた遠藤さんは、清水エスパルスに在籍していた元イタリア代表FWマッサーロの誘いで、イタリアにやってきます。そして、ひょんなことから、イタリアのACミランのトレーナーに就任することになったのです。

遠藤さんは、プリマヴェーラ(ユースチーム)のトレーナーを務めた後、トップチームのトレーナーに就任しました。遠藤さんがACミランに在籍していた間、ACミランは、リーグ優勝2回、UEFAチャンピオンズリーグ優勝2回を獲得。チームの栄光の影には、凄腕の日本人トレーナーの存在があったのです。

そんな遠藤さんですが、これまではサッカーファンの中でも知る人ぞ知る存在で、ほとんどメディアで取り上げられることはありませんでした。そんな遠藤さんは、2014-15年シーズンで、ACミランを退団することになりました。ACミランを退団するタイミングで、ACミラン時代の活動や知られざるエピソードを紹介しているのが、本書「ミランの手 ACミランメディカルトレーナー遠藤友則」です。

知られざるACミランのエピソード

本書には、遠藤さんしか知らない選手たちのエピソードがたくさん紹介されています。試合前に遠藤のストレッチを最初に受けたがったシェフチェンコ、06-07シーズンチャンピオンズリーグ準決勝の前日に、夜中に膝の治療を求めてきたインザーギ、移籍後も遠藤に治療を頼んだカラーゼやカッサーノなど、「中の人」だからこそ知りうるエピソードは、読み応えがあります。

バランスを「整える」

遠藤さんは、イタリアでトレーナーとして生き残っていくために、東洋医学を勉強し、独自の治療法を確立します。それは、痛みが発生している箇所を治療するのではなく、痛みを発生させる原因になっている身体のバランスの崩れを「整える」という治療法です。例えば膝の痛みを解消するために、足首や股関節の固さを取ることでバランスを整えることで、痛みを和らげるというものです。最初は東洋医学に懐疑的だった選手たちも、自分の他のトレーナーが施す西洋医学の治療法では治せなかった痛みが、遠藤さんの治療法で和らぐことを知った選手たちは、少しづつ遠藤さんへの信頼を深めていき、最終的には冒頭の「Endocheck」の信頼へとつながるのです。

男なら、こんな人生を送ってみたい

遠藤さんのACミランでの15年は、1人の男として、1人の職人として、自分の腕を頼りに、決して奢らず、道なき道を進み続けた15年です。男なら、こんな人生を送ってみたいと思うような遠藤さんの活躍ぶりに、男として心から尊敬するとともに、自分自身に対する情けなさもおぼえました。

サッカーが好きな人だけでなく、自分の腕で食べて行きたい人、サッカーのトレーナーになりたい人は、読んで損はない1冊です。

おすすめ商品

 - , ,