新たなチャレンジが自分の可能性を広げる。書評「日本サッカーの未来地図」(宮本恒靖)

2011年に現役を引退した日本代表のキャプテンを務めた宮本恒靖さんは、他の選手と違う行動をとって、世間を驚かせました。

それは、FIFAマスターという大学院への進学です。FIFAマスターとは、「スポーツに関する組織論、歴史・哲学、法律についての国際修士」のことで、スイスにあるスポーツ教育機関CIES(The International Centre for Sports Studies スポーツ研究国際センター)と提携してFIFAが運営しているスポーツ学に関する大学院のコースのことです。卒業生は、FIFAやUEFA、IOC、AFC、各国サッカー協会、CASなどのスポーツ機関、スポーツテレビ局、スポーツマーケティング会社、各国サッカーリーグ及びサッカークラブなどで活躍しています。

以前、FIFAマスターに通っていた方のブログ(現在は閉鎖されているようです。残念)を読んだことがあって、個人的に興味があったので、宮本さんの取組には注目していました。FIFAマスター在籍当時、日経新聞やNumberなどに掲載されていた記事を、食入るように読んでいたことを、本書を読みながら思い出しました。

本書、「日本サッカーの未来地図」は、宮本さんのFIFAマスター受講時の経験を振り返りながら、日本サッカーが発展していくために、どんなことが必要なのか、宮本さんの考えをまとめた1冊です。

前向きに楽しんだチャレンジ

本書を読んでいると、FIFAマスターというコースが、いかに入学するのが大変で、そして入学した後も大変か、よく分かります。FIFAマスターは、10カ月の間にイギリス・イタリア・スイスにある3つの大学を回って、歴史、経営、法律を学びます。カリキュラムも濃密で、息つく暇もありません。そして、会話も、授業も、レポートも全て英語。授業についていくだけで、精一杯だと思います。しかし、そんな生活も、宮本さんは前向きに楽しんでいたのだのだと思います。語り口は常に前向きで、新たなチャレンジを楽しんでことが、文章から伝わってきました。

新たなチャレンジが可能性を広げる

僕は、本書を読む前から、「宮本さんは、FIFAマスターで何を学びたかったのだろう」という疑問を抱いていましたが、それは読み進めているうちに、理解出来ました。たぶん、宮本さんは世界のサッカーで、何が起こっているのか知りたかったのだと思います。現役中には分からなかった、サッカーの裏側を知り、世界のサッカーがどんな方向に進んでいるのかを知る。そして、日本のサッカーがどんな方向に進めばよいのか、自分が何をすれば良いのか、考えたかったのだと思います。

FIFAマスターという選択は、誰にでも出来る事ではありません。しかし、自分が進む道を見つけるために、一度立ち止まって考えたり、興味があることにトライしてみるというのは、誰にでも出来る事だと思いますし、時に新たな可能性を広げてくれるのだと思います。

宮本さんはFIFAマスターへのチャレンジによって、新たな知見と、世界中で活躍する卒業生との人脈を得ることになりました。2015年から宮本さんはガンバ大阪のアカデミーコーチに就任しましたが、FIFAマスターで得たものは、宮本さんの今後の人生を支えてくれると思いますし、日本サッカーの発展に大きく貢献してくれると期待しています。

正直、期待していた以上に面白かった。世界は動き続けているし、世界を知りたければ飛び込むしかない。その事を改めて教えてくれる1冊です。読み終えて、僕は「自分は今のままでいいのか」と、少し焦りを覚えました。

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