人が求めている技術を身に付ければ生き残れる。書評「歩-私の生き方・考え方-」(宮本慎也)

2014/08/05

昨年、惜しまれつつ現役を引退した宮本慎也さん。通算安打数は2133本という記録だけでなく、シーズン最多の67犠打、三塁手としてシーズン最高守備率となる.997を記録するなど、どちらかというと名脇役として、チームを支え続けたプレーヤーです。

そんな宮本さんは、引退会見の時、「プロになってから、1度も楽しんでプレーしたことはない」という言葉が話題になりました。「楽しんでプレーする」「リラックスしてプレーする」という言葉を口にする選手が多い中、宮本さんの言葉には、19年間プロとして生き残っていくために、持てる力を全て発揮しようとしていた男の素直な気持ちが現れていたような気がします。

本書「歩-私の生き方・考え方-」は、そんな宮本慎也さんの生き方、考え方を、自らの言葉で振り返った1冊です。

自分の言葉で技術を語る

印象に残ったのは、野球の技術に関する宮本さんの解説です。ボールを捕る、バントをする、など。野球の基本的な技術が、一つ一つの動作毎に丁寧に解説されています。宮本さんが丁寧に解説出来るのは、宮本さん自身が、一つ一つの技術について、自分の頭で深く深く考えながら、身につけていったからだと思います。

なぜ、宮本さんが自分の言葉で技術を語れるまでに考えるようになったかというと、それは宮本さんが、お世辞にも身体的な素質に恵まれた選手でなかったからだと思います。176cmという身長は野球選手では小さく、特別にパワーがあるわけでも、脚が速いわけでも、肩が強いわけでもありません。

そんな宮本さんは、自身の能力を素直に認めた上で、「どうしたら上手くなれるのか」、「どうしたら生き残っていけるのか」、必死で考えたのだと思います。ボールを捕る能力を磨き、バントを練習し、右打ちなど狙ったところに打つ練習をする、など、チームが勝つために、生き残っていくための技術を、自ら試行錯誤しながら身につけていきました。

人が求めている技術を身に付ければ生き残れる

宮本さんが生き残るために身につけていった技術は、人が求めていた技術です。人が求めている技術を身につけ、適切なタイミングで提供することが出来れば、生き残っていくことが出来る。宮本さんの生き方、考え方には、サバイバルに重要な要素が詰まっていると思いました。

自分自身、改めて仕事に望む姿勢、技術を学ぶ姿勢や考え方について、考えさせられた1冊です。

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