ジョゼ・モウリーニョが「スペシャル・ワン」になれた理由。書評「モウリーニョ 成功の秘密」

なぜ、ジョゼ・モウリーニョは選手やスタッフに慕われるのでしょうか。
なぜ、ジョゼ・モウリーニョは世界一の監督と言われるのでしょうか。

これだけ勝ち続けている人が、
今よりもっと勝てるようにと凄まじい努力を続けている。
世界一になったのに、今も他の誰より努力し続けている。
(デコ)

あなたの歴史の一部になれたことを今も誇りに思っている。
僕の選手生活の中でも、一番貴重な時期だった。
(ディディエ・ドログバ)

あなたと一緒にいられた時間は、僕にとって最高の思い出です。
あれからも時々連絡できるのは、大きな喜びです。
僕のためにいろいろしてくださったことを今も感謝しているし、
あなたをどれほど慕っているかは、十分おわかりでしょう。
またいつか、何かの形で一緒に仕事をしたいです。
今後のなお一層のご活躍を祈って!
(フランク・ランパード)

「モウリーニョ 成功の秘密」では過去、モウリーニョのもとでプレーした選手、ライバルとして凌ぎを削ってきた監督にインタビューを実施し、さまざまな目線でモウリーニョを分析した1冊です。

「世界一の監督」の仕事

本書で最も印書に残ったのは、冒頭に書かれているジョゼ・モウリーニョの一日について語られた言葉です。

毎朝7時に起きて、8時15分にはスタジアムに入る。
練習が始まるまでの2時間、完全な静寂の中、
オフィスで練習の細かい準備をしたり、自チームと対戦相手の分析をすすめる。
聞こえるのは、清掃員の老婆たちのささやきと周囲のざわつく音だけだ。

練習開始前にアシスタントと短いミーティングを行い、
次戦の相手チームの特徴を確認する。
芝生管理の責任者とはピッチ状態の話や週末の試合時の天候を、
用具係とは練習で使う道具を確認する。
選手のケガや健康状態によって、別メニューが必要かなどは医療担当と相談する。
これが日課だ。

約2時間の練習。その後、次戦に向けた記者会見、編成との打ち合わせ・・・。
そうしてやっと、学校から帰って食事をしている子供たちに電話する時間が出来る。
5分ほど休憩したら、スタッフが食事をしている「エル・コロンボ」に合流。
そしてスタジアムへ戻り、下部チームの練習を視察する。

彼らを見ながら、カンテラの今後についてコーチ陣と話したり、
次シーズンの準備について論じたりする。
それからスタジアムを出る前に、フロントともチームの動きなどを共有しておく。
それが終われば駆け足でセトゥバルの妻やマチルデ(娘)、ゼ・マリオ(息子)が自宅へ戻り、
やっと人心地がつくーーーーー。

これは2000年10月に掲載されたインタビューですが、モウリーニョの生活は今も変わっていないと思います。

サッカーの監督は、試合中や試合前後の記者会見での言動や行動や采配に注目が集まりがちですが、本当の仕事場は日々のトレーニングをする練習グラウンドです。このモウリーニョの言葉は、サッカーチームの監督という仕事の本質と、モウリーニョという監督の仕事に対する姿勢をよく現しています。

彼は、実績がない頃から自分自身を信じていました。実績があるから自分を信じていたのではなく、これから実績をあげるであろう自分の未来を信じていたのだと思います。

「世界一の監督」になった自分になったつもりで行動する

本書に書かれているのは、サッカーチームの監督という仕事に全身全霊をかけて取り組む一人の男の姿です。自分自身の事を世界一の監督になれると信じ、世界一の監督になるために世界一の努力をし、世界一の監督のチームの選手には、世界一の練習をさせて、世界一のチームにしよう。その思いが実現したからこそ、モウリーニョという監督がこれほどまでに支持されているのだと思います。

僕は、ジョゼ・モウリーニョの行動や言動は、「世界一のサッカー選手を目指す」と言い続けている本田圭佑に似ていると思うことがあります。なりたい自分をイメージし、イメージした自分になりきろうと努力することで、いつのまにか、イメージした自分になっている。本田圭佑はそんな考えを元に行動し続け、ACミランの10番を背負うまでの選手に成長しました。

ジョゼ・モウリーニョの言動、行動を深堀りすると、「世界一の監督ならこうする」といった考えが、根拠にある気がします。「自分」ではなく「世界一の監督」が基準なのです。「世界一の監督」というものは、どういう監督なのか。もしかしたら、今のジョゼ・モウリーニョは、モウリーニョが考えた「世界一の監督」を演じた姿なのかもしれない。読み終えて、そんなことを考えてしまいました。

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