身体の使い方が変われば、仕事が変わる書評「「筋肉」よりも「骨」を使え!」(甲野善紀,松村卓 )

2014/12/23

僕の周囲にも、ランニングやトレーニングを習慣にする人が増えました。体力の低下を防ぐため、好きなスポーツの成績向上のため、ストレス快勝のため、一人の時間が欲しいから、など。目的は様々ですが、身体を動かすという行為自体は気持ちがいいことなので、人間の本能で気持ち良いことを求めた結果、ランニングやトレーニングを習慣にする人が増えたんじゃないか。そんな気がしています。

でも、気持ち良いことを求めた結果、怪我をしたり、負荷の高いトレーニングを続けて、身体が疲れた状態が続くようだと、トレーニングの本来の目的が果たされたとは言えません。

思い通りに身体を動かすには、どうしたら良いのか。身体にとって、気持ちのよい使い方とは、どんな使い方なのか。疲れにくい身体にするには、どうしたらよいのか。

本書「「筋肉」よりも「骨」を使え!」は、武術家の甲野善紀さんと、「骨ストレッチ」というトレーニングを考案したトレーナーの松村卓さんの二人が、昨今のトレーニング理論に異を唱え、身体のパフォーマンス向上を目的とするならば、どんな身体の動かし方をすればよいのかについて、二人の考えを対談形式でまとめた1冊です。

筋肉は骨を動かすためにある

読み終えて印象に残ったのは、「筋肉は骨を動かすためにある」という考え方です。

例えば、「速く走りたい」と思った時、速く走るためのパワー(出力)を上げれば、身体は速く走れると思いがちです。だから、人はパワーを上げるために、パワーの源になっている(と思っている)筋肉を鍛えます。足を速くしようとして、脚の筋肉を鍛えるというのは、そういう考え方に基づいたトレーニングなのだと思います。

ところが、脚の筋肉を鍛えてパワーが向上しても、パワーを上手く身体に伝え、速く移動させるエネルギーに変わらなければ、速く走ることは出来ません。身体を移動させるには、身体の骨格、すなわち骨を移動させる必要があります。骨を速く移動させることが出来なければ、いくら筋肉を鍛えたとしても、そのトレーニングはムダです。すなわち、筋肉は骨を動かすためにあり、トレーニングは骨を動かす動きを向上させるために、行うべきだと、本書には書かれています。

パワーを上げても、パフォーマンスは上がらない

また、著者の2人は昨今の筋力トレーニングや、体幹トレーニングといった、身体に負荷をかけて、力を入れるトレーニングは、身体の効果的な使い方を阻害すると語っています。僕自身、体幹トレーニングをやっていたころ、腹筋や背筋といった筋肉が強くなったことで、身体が安定したような感覚を覚えました。しかし、続けていくうちに、身体がスムーズに動かなくなってきたと感じるようになり、体幹トレーニングは止めてしまいました。実際、体幹トレーニングをやっていた頃に比べると、ヨガをやっていたこともあり、身体は柔らかくなってきたと感じています。

個人的には、昨今のトレーニングは、「パワーを上げればパフォーマンスが上がる」という考え方に基づいているのではないか、と感じています。車にたとえるならば、エンジンが大きくなれば速く走れる、という考えだと同じです。しかし、車だって、エンジンが大きくなっただけでは速く走れません。車体も空気抵抗を考えて、最適な形にしなければなりませんし、足回り、タイヤといったパーツが、エンジンのパワーを効果的に地面に伝えなければ、速く走る車にはなりません。

身体の使い方がよくなれば、仕事のパフォーマンスがあがる

日本人は、古くから農作業を通じて、効果的な身体の使い方が出来ていた民族だと言われています。それが近代化によって失われているのだとしたら、今こそ身体の使い方を見直す必要があるのかもしれません。そして、効果的な身体の使い方が出来るようになれば、もしかしたらもっといい仕事が出来るんじゃないか。本当に仕事のパフォーマンスを上げたければ、身体の使い方から考えてみたらどうか。僕は、本書を読み終えてそんなことを考えています。

関連商品