家を見れば人となりが分かる。書評「ぼくの住まい論」(内田樹)

ぼくの住まい論

先日ご紹介した「みんなの家」という書籍と本書「ぼくの住まい論」は、同じ住宅について書かれた本です。「みんなの家」は、建築家の立場から「家を建てる」という仕事について書かれた書籍でした。本書「ぼくの住まい論」は、建築家に仕事を依頼した施主の立場で書かれた書籍です。読み終えて、「住まい」というテーマを通じて書かれている著者の人生観というか、物事に対する考え方が、強く印象に残りました。

武道家の心得は「ありもの」で状況に対応するにある

僕が最も印象に残ったのは「武道家の心得は「ありもの」で状況に対応するにある」という言葉です。僕は何か不都合や不便を感じると、お金をモノやサービスに替えて、問題を解決しようとしがちですが、問題を解決するのはお金ではなく、アイディアです。

「武道家の心得は「ありもの」で状況に対応するにある」を読んだ時、「アイディアや考え方しだいで不便は便利に変えられる」という当たり前の事に、改めて気付かされました。

貨幣は退蔵を好まない

他に面白かったのは、お金に対する考え方です。著者は本書の中で「自己利益ではなくて、公共の利益をはかることで結果的に自己利益を確保できる。その方が貨幣の本質にかなっている」と書いています。

どういうことかというと、貨幣は”交換を加速させるための商品”であり、貨幣の本性を活かすためには、手元に来たら間髪を容れずにただちに次のプレーヤーにパスするべきで、流れを止めて自分だけの「溜池」を作ってしまうと、流れが死んでしまい、別のもっと流れのいいところを求めて流れていく、というのです。(たしか邱永漢さんも同じようなことを言ってました)

人と分け合う

本書の各所で登場するのが、著者の「人と分け合う」という考え方です。自宅で宴会を催したり、道場を開いたりしています。著者が自然とこうした振る舞いができているのは、合気道という武道を嗜んでいる影響もあるのかもしれません。楽しいこと、嬉しいことを「人と分け合う」という考えがなければ、初めて会った独立したばかりの建築家に仕事を依頼することはなかったんじゃないか、と思いました。

余談ですが、著者が実践している、物を人と分けあったり、どんな人でもフラットに付き合ったり、つながったりする事は、インターネットの基本概念である「リンク」「シェア」「フラット」に通ずるものがあるなぁ、などと思ったりしました。

家を見れば人となりが分かる

本書を読んでいると、家という空間には、その人の人となりが図らずも反映されるのだなぁと思い知らされます。建てられた家には、著者の人となりが色濃く反映されています。本書を読んで、著者と同じように考え、家を建てる必要はないと思います。ただ、家には自分自身の人となりが反映されると知っていれば、どうやったら自分にとって住みやすい家が出来るのか、少しは分かるのかもしれません。

タイトルに「住まい論」と書かれていますが、著者の人生観や物事への考え方が分かりやすく説明された1冊です。「みんなの家」とあわせて読んでみることをおすすめします。

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