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書評「国立競技場の100年: 明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ」(後藤健生)-日本のスタジアムの歴史と未来を考えるのに最適な1冊-

   

国立競技場の100年: 明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ

国立競技場にまつわる問題は様々な人々が様々な切り口で様々な意見を述べているのだけれど、自分なりに知りたいことがありました。そもそも、国立競技場はどんな経緯で建てられたスタジアムなのだろうか、と。

国立競技場は、世界でも珍しいくらい「アクセスの良い」スタジアムである。東京都心の真ん中にあり、渋谷、新宿、東京といったターミナル駅からも近く、地下鉄、JR共に徒歩10分圏内で最寄り駅からたどり着く。大抵街外れにあることが多いヨーロッパやアメリカのスタジアムと比較すると、都心の真ん中に建てられた国立競技場の立地は、極めて異例だといつも思っていた。なぜ、こんな都心に大規模なスタジアムが建てられたのか。その事は国立競技場の歴史を調べないかぎり理解できません。過去を知らななければ、国立競技場にまつわる問題の本質は理解できない。僕はそう考えていました。

そんな事を考えていたら、僕にぴったりの1冊があることを知りました。それが「国立競技場の100年: 明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ」です。本書は、国立競技場の前身になっている明治神宮外苑競技場の歴史を含めた国立競技場の100年を振り返った1冊です。

国立競技場の前身はなぜ「明治神宮外苑」競技場なのか

国立競技場の前身は明治神宮外苑競技場です。なぜ、「明治神宮外苑」の競技場なのか。ここに、国立競技場が東京の真ん中に建てられた理由が隠されています。

明治神宮は1912年に崩御した明治天皇を祀る神社として建てられました。明治神宮の内苑(神社そのもの)は、代々木(今の原宿)に建てられました。その付帯施設として「外苑」が建設されました。その一部として作られたのが、明治神宮外苑競技場なのです。

なぜ、神宮外苑に競技場が建てられることになったのか。元々神宮外苑は、「青山錬兵場」という演習地があり、その敷地を活用することになっていました。そして、当初から外苑計画の中に建てられる「記念建造物」の中に、「競技場」が含まれていました。その理由が詳しく書かれている資料は残っていないようですが、かいつまんで言うと、「近代スポーツを神事として明治神宮に奉納する」場所として、明治神宮外苑競技場は建てられたようなのです。

なお、神社にスポーツ施設が設けられた例というのは、明治神宮以外でも散見されるそうです。神奈川県の三ツ沢運動公園は、当初護国神社に併設される予定で建てられた施設なのだそうです。実際、護国神社はほぼ完成していたそうですが、太平洋戦争中の空襲で消失してしまい、結果的に三ツ沢運動公園の整備のみが進み、戦後は周辺は住宅地となりました。

つまり、「明治神宮外苑」という名がつくだけあって、あくまで「明治神宮の付帯施設」として建てられたのが、国立競技場にまつわる歴史の始まりというわけなのです。

「明治神宮」の外苑として位置づけられ続けた国立競技場

「明治神宮外苑」の付帯施設だったので、明治神宮外苑競技場の改修にあたっては、都度明治神宮の許可が必要だった時代があったそうです。みんなが知っている国立競技場の原型は、実は東京オリンピックではなく、1958年に行われたアジア大会にあわせて建設されたのだそうです。その時には、明治神宮は運営から離れていたのですが、明治神宮は一貫して国立競技場については「外苑の施設の一部」という考えを持っているため、外苑の景観には特別なこだわりをもっていました。

国立競技場の建設の際にも、明治神宮側は「絵画館側のスタンドはできるだけ低くしてほしい」といった要望を伝えていたそうです。その時にスタンドの高さとして、明治神宮側が主張した高さは8メートル。明治神宮側がこうした考えに至った理由は、「明治神宮外苑は国民の浄財によって造られ、寄進されたものだから損じてはならない」という考えがあったからだそうです。

日本のスタジアムの歴史と未来を考える上で、最適な1冊

国立競技場の歴史に関する詳細は、ぜひ本書を読んでいただきたいのだが、本書を読んでいて感じたのは、日本のスタジアム(競技場)の歴史について、深く理解している人は少ないのではないかということです。

土地がもっている歴史を踏まえず、表面的なデザインや工数のみが検討されている今の国立競技場問題の進み方を考えると、本書は出来るだけ多くの人に手にとってもらいたい1冊です。国立競技場、いや日本のスタジアムの歴史と未来を考える上で、最適な1冊だと思います。1回読んだだけで理解できないくらい、情報量の多い書籍ですが、読んで損はありません。

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