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都市で生きるべきか、地方で生きるべきか。書評:熱風2014年4月号 特集「人口減少社会2」

      2014/07/22

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「人口減少社会」についてです。2013年10月号に特集されたのですが、反響が大きかったようで、深くこのテーマを掘り下げるために、第2弾の特集が組まれました。

若者のローカル志向と、東京への人口集中という、対照的な現象が同時に起こっているなかで、人口減少社会のいまとこれからを探る。これが、今回のテーマです。

「人口減少社会」特集のラインナップは、以下の通りです。

地域からの離陸と着陸――人口減少社会と「緑の福祉社会」のビジョン(広井良典)
田舎のパン屋が見つけた「人口減少社会の働き方」(渡邉 格)
過去と未来につながる場所から 「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去(かむさり)なあなあ日常~」で伝えたかったこと(矢口史靖)
人口減少と地域再生――北海道から見える日本(渡辺一史)
【対談】岩崎夏海×川上量生 「日本は鎖国して、みんな京都人になる!?人口減少社会のこれからを大胆予想する」

都市圏への人口集中と地方の衰退

まずは、「人口減少社会」で起こることを整理しておきます。

1つ目は、都市圏への人口集中です。商品やサービスは、より多くの人に使ってもらうために、人の多い地域をターゲットに定めるようになります。商品やサービスを提供するには、人の雇用も必要になるので、もともと人が多かった地域、つまり都市圏に人が集まるようになるというわけです。

2つ目は、地方の衰退です。人口が減少し、税収入が減った地方は、公共サービスが維持できなくなり、衰退していくことが考えられます。すでに、2007年に夕張市が財政破綻していますが、今後同じような自治体が出てくることが予想されます。

衰退する都市と人口減少社会の問題を考えるときにいつも思い出すのが、エミネムが主演した「8マイル」という映画です。映画のタイトルになっている「8マイル」とは、デトロイト北部に伸びる「8マイル・ロード」のことなのですが、この「8マイル・ロード」が、そのままデトロイトの都市と郊外を分ける境界線になっています。「8マイル・ロード」を挟んで、都市に住むのは貧しい黒人。郊外に住むのは、裕福な白人です。

東京を中心に「8マイルロード」を挟んで都市に住むのは貧しい人々で、郊外に住むのは裕福な人々。数年後の日本は、デトロイトのようになっているんじゃないかと思うことがあります。

正しく高く-パン屋タルマーリーの事例-

では、郊外もしくは地方で生活基盤を築くにはどうしたらよいのか。そのヒントになりそうなのが、岡山県真庭市勝山の築100年以上の古民家を改装した「パン屋タルマーリー」です。真庭市勝山は人口8,000人弱。毎年100人程度人口が減っているそうです。「パン屋タルマーリー」の営業日は週4日で、年に合計1ヶ月以上は長期休暇を取っているそうですが、それでも経営は成り立っているといいます。

「パン屋タルマーリー」で最も大切していることは、「正しく高く」パンを売ることです。生産者が手間ひまかけてつくった素材を「正しく高く」仕入れ、手間ひまかけてパンをつくる。そのすべての労働と、家賃や減価償却などの諸経費を「正しく」価格に反映し、パンを食べる人にきちんと届けるということです。

言葉にすると簡単ですが、誰もが「あんパンは1個100円」と思っているところに、それを超える値づけをすることは簡単ではありません。「足し算を無視して店は成り立たない」という考えの下、「パン屋タルマーリー」の平均単価は、400円ほどになっているのだそうです。

「パン屋タルマーリー」は、パンを作る夫(イタル)とパンを売る奥様(マリコ)の名前からつけられたのですが、奥様は最近こんなことを口にされているそうです。

「商品の価格を決めることは、人生をデザインすることだ」

この言葉を読んで、このツイートを思い出しました。ツイートを書いたのは、西村佳哲さん。働き方研究家として「自分の仕事をつくる」という本を書いた方です。

地方で生きていくには、都会以上に「生きる力」が求められる

ここまで読めば、地方で働いてみようと考える人もいるかもしれませんが、地方で生きていくのは簡単ではありません。むしろ、都会で生きていく以上の「生きる力」が求められている、とさえ思います。

「田舎」は、ユルい場所でもなければ、のんびり暮らすための場所でもない。
もちろん都会から逃げ込むための場所でもない。
(略)
技術もなにもない、なにもできない人間がノコノコやってきたところで、「田舎」のためにはならない。
力がなければ「田舎」で生きていくこともできないし、「田舎」に活力をとりもどさせることもとうていできるはずがないのだ。
(『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』165-166ページ)

よく、「インターネットがあれば、どこでも仕事が出来る」という話を聞きますが、あれは「インターネットがあれば、都市と連絡が取れる」というだけで、「インターネットがあれば、地方に仕事が作れる」というわけではありません。地方で暮らすためには、「地方に仕事を作る」、もしくは仕事がなくても生活していく力が求められるのではないかと、僕は思うのです。

仕事がなくても生活していく力というのは、「衣・食・住」のうち、少なくともひとつは自分で賄い、コストをかけずに生活することではないかと思います。それは、都会で生活していくよりはるかに難しいです。

余談ですが、夫婦で「暮らしかた冒険家」と称して、自分たちの暮らし方をインターネットを通じて世間に広めている人がいます。夫の池田秀紀さんは、ウェブデザイナー。伊藤菜衣子さんは写真家。たとえば、農家のWebサイトを作ってあげる代わりに、一生分の野菜をもらう。こういった具合に、自分たちの技術と物を交換して、暮らしています。こうした例が、メディアで取り上げられる機会も増えてきたと感じます。

「パン屋タルマーリー」や「暮らしかた冒険家」に関する記事に映っている写真を見ていると、どれも、目がらんらんとして、素敵な顔をしています。それは、都会で生活する人々が失っている「生きる力」が、目に現れているからなのかもしれません。

都市に生きるものは、労働を買い叩かれて暮らし続けるのか

日本は、これから人口の減少に伴い、少しづつ社会が変化していくと思います。

現在30代の自分は、その変化を真正面から受け止めなければならない立場にありますが、都市で生きるべきか、地方で生きるべきか、あるいは両方を行き来するべきなのか。自分の生き方や考え方が、全く定まっていないのが現状です。地方に魅力を感じることはありますが、生まれてからずっと都市で暮らしてきた自分が、現時点で地方で生きる力をもっているとは思えません。妻も同様です。

じゃあ、どうするのか。答えはまだ出ていません。
まずは、「田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」」を読んで、
それから考えてみたいと思います。

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