あえて1人の意見を取り上げる。書評:熱風2014年5月号 特集「日本のいま!」

2014/07/22

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「日本のいま!」です。「日本のいま!」について、青木理さんにインタビューしています。

あえて1人の意見のみ掲載した理由

本特集では、集団的自衛権、安倍内閣と取り巻く人々、憲法第9条など、現在マスメディアで取り上げられている問題について、青木さんの意見が述べられています。非常に参考になる意見も多いのですが、個人的には「日本のいま!」というタイトルをつけるのであれば、青木さん以外の方の意見も読んでみたかったです。

ただ、複数の意見を掲載することで、視点がぼやけてしまう部分もあります。熱風の編集部は、今回は青木さんの意見を前面に出そうという編集方針で、編集したのだと思います。こういう編集方針が貫けるのは、熱風がフリーペーパーだからだと思います。広告を掲載したり、お金をもらって発行していたら、こんなことは出来ません。そういう意味では、熱風の強みを活かした特集だと思います。

日本の治安は悪くなっていない

今回のインタビューで印象に残ったのは、日本の治安についての意見です。青木さんによると、1960年代、いわゆる「三丁目の夕日」の頃の殺人事件の発生件数は、年間3,000件ほどあったのだそうです。ところが、このころを境に殺人事件の件数はずっと減り続け、最近では年間1,000件くらいになっているのだそうです。2013年はついに1,000件を下回り、戦後最小を記録しています(殺人未遂も含む)。つまり、日本の治安は言われるほど悪くなってはいないのです。

ただ、青木さんは、景気は低迷し、貧富の格差も広がっているなか、なぜ殺人事件が増えないのか疑問だ、と語ります。そして、青木さんは殺人ではなく自分を殺しているのではないか。つまり、景気の低迷、貧富の格差などによる絶望感や不安感は、「自殺」という形で顕在化しているのではないかというのです。

僕自身、「三丁目の夕日」の時代を知りません。「三丁目の夕日」がいい時代だと言われるのは、極論を言えば「過ぎ去った過去はよい思い出」だからです。必要以上に美化することは、「三丁目の夕日」の時代が一生懸命に創りあげようとして現代を否定することになるのだと思うのです。

今回の「熱風」は、現在の日本の問題を分かりやすく紹介している特集です。
無料で読めますので、ぜひ手にとって読んでみてください。

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