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ファンタジーは、つじつまを合わせないから面白い。書評:熱風2014年7月号 特集「三鷹の森ジブリ美術館企画展示 クルミわり人形とネズミの王さま展」

   

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「三鷹の森ジブリ美術館企画展示 クルミわり人形とネズミの王さま展」です。宮﨑駿監督の長編アニメーション引退後初の仕事となる企画展示としても、注目を集めている展示です。

特集では、宮崎監督のインタビューをはじめ、その魅力と世界観、展示の感想などについて、様々な方が語っています。

「三鷹の森ジブリ美術館企画展示 クルミわり人形とネズミの王さま展」特集のラインナップは、以下のとおりです。

「クルミわり人形」との出会い(宮崎 駿)
アリソン・ジェイ【インタビュー】
時を超える「クルミわり人形」(若松宣子)
なぜ少女にはメルヘンが必要なのか(竹宮惠子)
長編アニメーションでは難しくても、ファンタジーは作りたいという宮崎さんの思いの結晶(渋谷陽一)
僕は宮崎さんの絵を見られるのがうれしい(尾田栄一郎)

個人的には、「ONE PIECE」の作者、尾田栄一郎さんのインタビューが読めただけでも、読んでよかったと思った特集でした。

物語として全然つじつまが合っていない

今回の特集を読んでいて、気になった言葉があります。それは、「つじつま」です。今回の特集で寄稿している方々が、異口同音に原作「クルミわりとネズミの王さま」を読んだ感想として、「物語として全然つじつまが合っていない」と語っているのです。

宮﨑駿さんは、つじつま合わせについて、こんなことを語っています。

まるで原作者のホフマンが、
「君、何でつじつまがそんなに必要なんだね」と言っている感じなんです。
そうすると「つじつまというやつは本当に愚劣な行為なんだな」とか、
僕も思い始めるようになりましたね。
僕は自分の人生のつじつまも合っていないですから(笑)。

つじつまばかり気にしているというのは、本当に腹がたつんです。
「説明されていない」とか、
「僕はわかるけど、ほかの人はわからないだろう」とか、
そういう映画の感想がものすごく多くて。
僕の率直な感想は「おまえは分からなくていい」ですね。

尾田栄一郎さんは、つじつま合わせについて、自身の作品と照らしあわせた上で、こんなことを語っています。

僕が子どもの頃に読んでいた週刊少年連載漫画というのは、
たいていストーリーのつじつまが合っていなかった。
(中略)
当時の漫画って、先週「新キャラ登場!」といってたくさん登場したキャラクターが、
次週には平然といなくなっていたりするんですよ。
漫画家さんたちも。面白さを優先したいからつじつまに関係なく絵描くし、
子どもはそれを全然気にせず受け入れるんですね。
それが昔の連載漫画だったんです。

だから、僕は漫画家になったとき、
きちんとつじつまを合せた物語を作ってみたいと思ったんです。
過去と未来をつなげて作ることを個性にしたのが、
僕が描いている「ONE PIECE」という漫画です。

尾田さんは、自身の挑戦のひとつとして、つじつまの合う物語を作ってみたかっただけであって、本来は、もっと物語は自由でいいはずだと語っています。人を楽しませようとする時に生まれるものは、「クルミわりとネズミの王さま」のような、自由な発想だというのです。

宮﨑駿さんの映画の作り方は、作りながら結末を考える、という作り方で作っていました。まるで、漫画の連載作家のような作り方で映画を作っていたのですが、尾田さんは「面白さを単純に追求していくと、こういう作り方になる」と語っています。そして、「宮崎さんくらいの人になると、つじつまを合わせようと思えば出来る」とも。

つじつまが合わない作品は、敬遠される

近年、つじつまが合わない作品は、敬遠される傾向にあります。尾田さんも語っていますが、(自戒も込めて)矛盾を細かく指摘する人が偉い、みたいな風潮があり、漫画が少年だけでなく、大人も読むようになったため、つじつまをあわせた作品を作らないと、読んでもらえないのかもしれません。

しかし、つじつまがあっているということは、反面、ストーリーの展開や結末が想定できるため、物語の面白みに欠けることがあります。つじつまを合わせることが、物語としての面白みを欠くことにつながっていないか。宮崎さんと尾田さんの言葉を読んでいると、そんな事を考えてしまいます。

ファンタジーはつじつまが合わないから、ファンタジー

では、なぜ宮崎さんは、今回くるみわり人形をテーマに企画展示を開こうと企画したのでしょうか。それは、渋谷陽一さんが語っていましたが、宮崎さんが作りたがっていた「ファンタジー」を作品として、作りたかったからだと思います。ファンタジーはつじつまが合わないから、ファンタジーなのです。

ファンタジーを長編の映画にするのは、現在の社会状況から考えると難しいと判断した宮崎さんは、自身のファンタジーの表現を作品として落としこむために、企画展示というフォーマットを選んだのではないのでしょうか。

と、ここまで書いていてなんですが、僕はまだ展示を観ていません。

観たいのはやまやまなのですが、ジブリ美術館のチケットを手に入れることが出来ず、観に行けていません。企画展示は、2015年3月まで実施しているそうなので、なんとか時間を作って、チケットを取って、展示を観に行きたいと思います。

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