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自分の表現を極めようとした男が残した言葉。書評:熱風2015年6月号 特集「北斎」

   

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、2015年6月の特集は、「北斎」です。

最近葛飾北斎の話題を耳にする機会が増えました。昨年、上野の森美術館で開催された、アメリカ・ボストン美術館所蔵の葛飾北斎作品の里帰り展が、大勢の観客を集めたことが話題になりました。今年3月には、100年以上も所在不明になっていた葛飾北斎の「隅田川両岸景色図巻」が発見され、来年開館予定の「すみだ北斎美術館」で、一般公開される予定です。さらに、葛飾北斎の娘、お栄を描いた長編アニメーション映画「百日紅〜MIss HOKUSAI〜」というアニメーションも上映されました。

そして、リニューアルオープンした信州・小布施で6月30日まで開催中の「北斎とその弟子たち 北斎絵画 創作の秘密」に、スタジオジブリが企画協力していることにちなんで、今回の特集が組まれました。

「北斎」特集のラインナップは、以下のとおりです。

小布施の北斎(市村次夫)
視覚の魔術師・北斎が描く「男浪」と「女浪」(池田憲治)
わたくしという現象 あるいは北斎の青(福岡伸一)
北斎の画面設計(中村英樹)
杉浦日向子が描いた北斎とお栄を、最大限の力をもって映画化する。(原 恵一)
『富嶽百景』跋文より [書]鈴木敏夫

生きることに貪欲な男の姿

僕が今回の特集で最も印象に残ったのは、『富嶽百景』跋文の内容です。葛飾北斎が75歳の時に出版した「富獄百景」の跋文(あとがき)には、こんな文章で、今までの画業を振り返っています。

己六才より物の形状を写の癖ありて
半百の此より数々画図を顕すといえども
七十年前画く所は実に取るに足ものなし
七十三才にして稍 禽獣虫魚の骨格
草木の出生を悟し得たり
故に八十六才にしては益々進み
九十才にして猶其奥意を極め
一百歳にして正に神妙ならん与欠
百有十歳にしては一点一格にして生るがごとくならん
願くば長寿の君子予言の妄ならざるを見たまふべし

現代語に翻訳すると、こういう文章になります。

私は六歳から物の形を写生する癖があり
五十歳の頃から数々の画図を本格的に描いてきたが
七十歳までに描いたものは、実に取るに足りないものばかりであった
七十三歳でようやく鳥獣虫魚の骨格や
草木の出生を悟ることができた
ゆえに八十歳になればますます向上し
九十歳になればさらにその奥義を極めて
百歳でまさに神妙の域を超えるのではないだろうか
百何十歳となれば一点一格が生きているかのようになるだろう
願わくば長寿を司る神よ
私の言葉が偽りでないことを見ていてください

この文章から伝わってくるのは、70歳を過ぎても、画業を極めるために、必死で生きようとする力強い男の姿です。生きようとするエネルギーが、文章からもひしひしと伝わってきます。この後、葛飾北斎は小布施に移り住み、90歳までの生涯を、画業に邁進して過ごすことになります。

この文章を読んだ時、ふと思い浮かんだのは、宮﨑駿さんと高畑勲さんの姿でした。2人とも、70歳を過ぎても、自分の表現を極めようと、もがき続けています。たぶん、2人は死ぬまで、もがき続けるのだと思います。この2人の作品も、葛飾北斎の作品同様に、後世に残る作品になると思います。そんな2人の姿勢を普段から見ていたスタジオジブリが、葛飾北斎の展示に協力したのは、必然のような気がしました。

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