書評:熱風2017年7月号 特集「仕事と家庭」-「宅急便の生みの親」小倉昌男が隠していた知られざる真実-

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、「仕事と家庭」です。

「仕事」と「家庭」どちらが大切なのか。仕事に没頭するためにはなにかを犠牲にしなくてはいけないのか。「働き方革命」という言葉を目にするようになったのも、「仕事」と「家庭」の関係が変化していることの現れだと思います。「熱風」では、「仕事と家庭」を考える上でのテキストとして、1冊の本を紹介しています。

その本とは、「祈りと経営」。

「宅急便」の生みの親であり、「小倉昌男経営学」という本の著書でも知られる名経営者・小倉昌男さんはは、現役引退後に私財46億円を投じて障害者福祉に晩年を捧げます。これまで美談として語られがちだった宅急便事業の大成功、そして福祉事業の大成功。2つの事業を成功させる一方で、実は家庭は大きな問題を抱えていました。小倉さんはどのような問題をかかえていたのか。プロテスタントからカトリックへの改宗、晩年の小倉さんを支えた謎の女性の存在、など。「祈りと経営」につづられている小倉昌男という経営者の別の顔について語ることで、「仕事と家庭」というテーマについて、著者の森健さんとスタジオジブリ プロデューサーの鈴木敏夫さんが対談で語っています。

家庭で問題を抱えていたことが大きな仕事を成し遂げる原動力になった

僕はまだ「祈りと経営」を読んでいないので、特集を読んだ上での感想や印象に残ったことを書きたいと思います。僕が印象に残ったのは、鈴木敏夫さんが語った「小倉さんは終始自分の事しか考えていない」という言葉です。

想像だけど、やっぱり家庭が落ち着かないから仕事に逃げた、だから仕事が成功した、そういう関係にあったんじゃないかなって思うけど。だってびっくりするぐらい仕事で頑張るわけでしょ。運輸省との交渉、規制緩和の問題を平気で交渉していたわけですよ。それは家庭で抱えていた問題に対するいらつき、その解消の意味でもあったと、僕なんかは読んでいたけどね。

鈴木さんの言葉を聞いて、対談に同席していた週刊ポストの副編集長の山内さんは「小倉さんは仕事のほうが楽だったんじゃないかなと思う。仕事はロジックによって解決できる、だけど家庭はロジックでは解決できない」と語ります。森さんは、ヤマト運輸という会社を作り上げたのは、小倉昌男という経営者のロジックであり、社員の人たちや経営陣から恐れられたのは、彼の情の部分が薄かったからではないからではないかと語ります。情がないから気遣いも薄く、会社でも孤独で、家庭でも孤独だったのではないかというのです。

「父はとにかく気が弱かった」

では、小倉さんは家庭ではどんな人だったのか。小倉さんの息子さんによると、「父はとにかく気が弱かった」というのです。気が弱く、何も出来ない父親。運輸省と強気の交渉を続けた経営者の姿とは思えませんが、現在も世で取り上げられている経営者の家庭での姿は、気が弱く、何も出来ないというのが大半なのかもしれません。

この特集で語られている小倉さんは、神様のような人ではなく、1人の人間として、仕事と家庭で起こる問題に苦悩する1人の男としての等身大の姿です。僕のようなサラリーマンと悩みの根本は変わりません。ただ、小倉さんは問題を共有出来る人がおらず、共有できると思っていた「謎の女性」も最期には小倉さんの元を離れていきます。

僕はこの特集を読みながら、小倉さん程の経営者でも、仕事と家庭が両立出来ていなかったという事実について考えさせられました。「祈りと経営」をきちんと読んだ上で、改めてこの特集で語られている内容については、書きたいと思います。今回の熱風の特集は、とても読み応えがありました。ぜひ多くの方に読んでもらいたい特集です。

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