書評:熱風2013年5月号 特集「グローバル企業とタックスヘイヴン」-企業と税-

2013/06/29

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は「特集 グローバル企業とタックスヘイヴン」です。地方自治体といえども破綻する時代となった現代では、各国とも税収を増やして財源を確保することが緊急課題となっているなか、多くのグローバル企業の「租税回避」が国際的な問題になっています。その拠点となっているのが法人税や所得税などの税率がゼロか極めて低い、ケイマン諸島、バミューダ諸島、スイスなどの「タックスヘイブン(租税回避地)」です。

先日、ユニクロの柳井正会長がオランダにある自身の資産管理会社にファーストリテイリングの株を移したことによる、”合法的な節税対策”がニュースになりましたが、こうした事をグローバル企業は当たり前のように行なっているのです。

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「特集 グローバル企業とタックスヘイヴン」特集のラインナップは、以下のとおりです。

  • ボーダーレス化する時代に求められる新たな「税」の形 (大元隆志)
  • タックスヘイヴン、あるいはフリードマンの亡霊--グローバル時代の自由とは (中山智香子)
  • 国家を超えて帝国化する企業とともに 私たちは21世紀をどう生きるのか (松井 博)
  • 第三の産業革命が政治や社会のシステムを変えていく (佐々木俊尚)
  • 企業と税 (村瀬拓男)
  • 税をめぐる道徳と正義について (橘 玲)
  • 税の恨みはどこまでも追いかけてくる (岩崎夏海)

今月号の特集では、「タックスヘイブン」をキーワードに、国家とは何か、税金とは何か、といった社会のシステムのあり方まで考える特集になっています。熱風は毎月特集と連載の内容が充実しているので、今回から個々の記事に書かれた内容を取り上げていきたいと思います。本日村瀬拓男さんが書いた「企業と税」を取り上げます。

税金は「国単位」の制度

この記事を読んで改めて理解したことがあります。当たり前のことですが、税金は「国単位」の制度であるということです。現代国家においては、税を徴収することが出来るのは「国」です。国は取り立てた税を「国の運営」のために使っています。

その一方で、グローバル企業は「国」の枠を超えて事業を行なっています。企業は営利を追求する組織であって、税金は利益の中から納めなければならないものですから、少なければ少ないほどよいにこしたことはないわけです。しかし、税金は国の運営のために必要なものであり、会社がビジネスをしていく上で必要な社会的基盤(電気、水道、通信網、交通、治安、教育、医療など)を維持していくために使われます。そう考えると、企業は相応の税金を納めるべきだと考えるのが自然です。

「法人税」の矛盾点

企業に相応の税金を納めるべきと書きましたが、それは簡単ではありません。なぜなら、企業が払う税金の中心は「法人税」ですが、住居地によって「内国法人」と「外国法人」に分けられているそうです。内国法人とは、国内に本店または主たる事務所がある法人であり、外国法人とはその逆です。そして、内国法人にはその年度の「全世界」での所得に対する納税義務があります。外国法人は「国内源泉所得」がある場合は、それについての納税義務があります。

しかし、「法人税」には1つの問題があります。日本に本社があり、アメリカに支店がある企業は、日本にもアメリカにも税金を払う必要があり、アメリカ支店で発生した一つのもうけに対して、二重に課税される事になってしまいます。当然各国この状況を回避するために、各国は租税条約を結んで必要な方策を講じていますが、これによって税率の安い国、地域が出てきました。したがって、企業はこうした税率の安い国・地域と、様々な方法を組み合わせることで、合法的に税金を安くすることが可能になりました。これによって「タックス・ヘイヴン」が可能になったいうわけです。

以前は企業で取引されるものが「手で触れる物」だったので、国単位の税制度で対応が可能でした。ところが、ネットワークが発達により、ネットワークだけで完結する販売やサービスの提供が可能になりました。「第三の産業革命が政治や社会のシステムを変えていく」という記事の感想にも書きましたが、最近はサーバーを通じて商品を売買できるようになったので、デジタル製品にいたっては国境も関係なくなってしまいました。したがって、国単位の税制度は、現在のビジネスモデルにはあわなくなりつつあるのです。

税制は簡単には変わらない

これも「第三の産業革命が政治や社会のシステムを変えていく」記事で書きましたが、タックスヘイヴンの問題に関する記事を読んでいると、「権利と義務」「国家と税金」といった20世紀まで機能していた法律や考え方の見直しが急務だと思います。

しかし、現行の税制度を改革し、分相応の税負担を行うための法律を定めるのは簡単ではありません。なぜなら、グローバル企業は「国家を超えて帝国化する企業とともに 私たちは21世紀をどう生きるのか」に書かれていましたが、企業にとって都合の悪い法律はロビー活動を行なって潰してしまいます。したがって、国家が即座に法律を改定することは期待出来ませんし、改定できたとしても時間がかかることが予想されます。だからこそ、国家と企業の関係をきちんと把握した上で、個人個人が「国を企業をどう利用するのか」「どう生きるのか」という事が問われているのだと思います。

明日は、橘玲さんの記事「税をめぐる道徳と正義について」をご紹介します。

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