老いや病気は一種のチャンス。書評:熱風2013年6月号 特集「しわ」

2013/12/06

neppu_201306

スタジオジブリは、毎月10日に「熱風」という無料の小冊子を発行しているのですが、今月の特集は、今月公開されたアニメーション映画「しわ」についてです。

原作は、スペインの漫画家パコ・ロカが描いた『皺』(第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門「優秀賞」受賞)。この原作をスペイン人の若き実力派アニメーターで、日本のアニメーションから多くを学んだと語る、イグナシオ・フェレーラスが監督した長編アニメーションです。

テーマは、高齢化時代を迎え社会問題としてもクローズアップされている「認知症」について。その時、どうやって「老い」や「認知症」と向き合えばよいのか。本当に必要なのは「家族」か「友達」か…。そんな重いテーマを、温かな手描きアニメーションの手法でコミカルにさりげなく描き出しています。

「しわ」特集のラインナップは、以下の通りです。

  • 「しわ」に寄せる自称・しわ世代応援団長の雑感 (アニメ批評・山口康男)
  • “ペコロスの母”のこと、そして「しわ」 (漫画家・岡野雄一)
  • 素敵な思い出にはリボンをかけて (エッセイスト・しまおまほ)
  • 卓越したストーリーテリングで認知症に寄り添う--スペインのアニメーション「しわ」を観て (映画監督・関口祐加)
  • 「老い」や「病気」は一種のチャンスだと思うから、私は嫌ではないんです。 (女優・樹木希林)
  • イグナシオ・フェレーラス監督 インタビュー:高畑作品に出会っていなければ、「しわ」の物語を紡ぐことはできませんでした。

年をとることは”衰え”ではなく”変化”

今回の特集記事を読んでいて最も印象に残ったのは、樹木希林さんのインタビューに書いてあった「年をとることは”衰え”ではなく、変化」という言葉です。年をとると、誰もが体力や気力が衰えてきます。しかし、今回の特集記事を読んでいると、体力や気力が衰えれば人は悟りを開くように煩悩から解き放たれるというわけではなさそうです。老人だって恋をするし、お金やモノへの欲望を持ち続けているものなのです。

僕は、現代社会では必要以上に「若い」ことが重要視されているように感じます。見た目や肉体が若々しいことは悪いことではありませんが、それによって内面の充実が妨げられてはいないか、などと思ったりします。樹木希林さんの「”衰え”ではなく、変化」という言葉を読んだ時、僕は「体力がなくなることで、出来ることもあるのではないか」と感じました。

「認知症」から考える家族の問題

僕の両親は60歳を過ぎ、父親は今年定年退職を迎えました。自分の父親が1年1年確実に年老いていくのを見ているにもかかわらず、僕自身は「認知症」というテーマを、自分に関係する問題だと捉えてはいませんでした。高畑監督の言葉を借りれば「できれば目をそらしていたかった」のかもしれません。少なくとも「しわ」に関する記事を読むまでは、そう考えていました。

監督のイグナシオ・フェラーレスさんのインタビューにこんな言葉が掲載されていました。

私が何度が耳にしたのは、
「しわ」を観終わってすぐに、
年老いた両親、祖父母に電話をしなくてはと思った。
というものでした。

私にとっては、それが「しわ」に対する最高の言葉だと思っています。

この文章を読んで、最近会っていない両親に急に会いたくなり、先日娘を連れて遊びに行きました。

予告編をみていると「老い」や「認知症」というテーマについてだけでなく、「家族」のあり方について考えさせる映画だなと思いました。映画の開演時間が自分の都合とあわないので、なかなか観に行けないのですが、もし観に行ける方がいたらぜひ観に行ってください。

映画「しわ」予告編

関連情報

映画「しわ」公式サイト

関連記事

関連商品